おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

映画「20世紀少年」を観る

Boys Don't Cry  (第1000回)

今回タイトルの映画の感想文は、映画「20世紀少年」にマライアさんとブリトニーさんが出てくるときまで待とうと考えていたのだが、せっかく編年体にはこだわらないことにしたのだから、映画の印象が新鮮であるうちに書いておくことにする。千回記念。「ボー…

暁の寺  (第997回)

自他ともにショーグンと呼ぶバンコクの男の登場場面は、漫画の場合いきなり乱暴狼藉が始まるのだが、映画は少し洒落ている。大きな川をモーターボートが進む。前方に仏教建築が見える。バンコクで大河といえばチャオプラヤ。 私が子供のころは、メナム川と世…

昔の名前で出ています  (第993回)

この原稿を書いているのは3月3日の夜。本日は、先週末が仕事で休めず久々の代休にした。そして、前から楽しみにしていた世田谷文学館で開催されている浦沢直樹さんの個展を観て来た。天気も好く気分も良かったから、近くの芦花公園の周辺も歩いてきた。蘆花…

Get back to where you once belonged.   (第992回)

主人公ケンヂが、近所迷惑にも真夜中のギターを奏でるシーンは、漫画にも映画にも出てくるが、両者やや設定が異なる。とはいえ、いずれも大筋では景気づけというか、進軍ラッパの征露丸というか法螺貝というか、勇を鼓すための音楽である。 映画では、焼け跡…

冒険者たち  (第991回)

前回は、もう一つボクシングの話題を出そうと思っていたのですが、長くなったので今回に持ち越しです。映画「ミリオンダラー・ベイビー」において、ミリオンダラーは、たくさん金を稼ごうという程度の意味合いで出てくるのだが、原作の小説はもう少し詳しい…

忍者ハットリ君  (第990回)

映画のコンサート会場の外壁に、「BLITZ」という表示がある。このライブ・ハウスがあった横浜みなとみらいの映画館で、何回かロード・ショウを観たものだが、諸施設も今はもうほどんど営業していないらしい。ライブ会場も映画館も、信じがたいことだが私より…

壁  (第989回)

今回はひたすら雑談です。おそらく初めて日本語に翻訳されたドナルド・トランプの半生記を1980年代に読んだ。当時まだ四十代の若さで不動産王になったという、アメリカン金持ちドリーム達成記念の本で、表紙が金色だったのを覚えている。ニューヨークに行っ…

バック・ビート  (第988回)

ロックに定義はない。漫画のケンヂはそう言った。でも、そういう名の音楽のジャンルは確かに、少なくとも昔はあった。定義がないのにジャンルがあるということは、それなりの法則性や傾向というものがあるのだろう。それに沿って、最後は主観で決めてよいら…

燃え上がるキングマートの午後  (第987回)

事実は漫画より奇なり。去年の出来事なのでご記憶の方も多いと思いますが、コンビニ店が放火された。ガソリンを撒いて火をつけたらしい。お客さんはおらず、店員二人にも幸いケガはなく、ただし犯人は逃走。 でも捕まった。当然、防犯カメラに映っており、し…

Dog Day Afternoon  (第986回)

よげんの書には書いていないはずなのだが、映画のケンヂは、飛行場の爆破は大阪の三日後であると、常にない記憶力を見せて喫茶店を飛び出している。二三年前に漫画の感想文では、成田空港に付いたケンヂがタクシーの運転手さんに早く逃げろと叫んでいるが、…

女と男のいる舗道  (第985回)

1997年は遠藤家の人々にとって、災厄の年であった。惣領息子のケンヂは、大学教授がビールの飲み逃げ、旧友が急死、万引き被害、それらすべてに付いて回る秘密基地のマーク復活の謎。しかし、当人は知らず、その試練はまだ始まったばかり。姉のキリコは夫の…

一休み  (第984回)

長い文章が続いたので今回は軽く流します。先日、九段を歩いていた時に気づいたのだが、作者ご生誕の地である府中と、コミックス発行元の小学館は、ほとんど一本の線路でつながっていると言ってよい。 小学館から歩いてすぐの距離に神保町の交差点がある。巨…

モロボシダンの名を借りて  (第983回)

最初に一言、また文句。一般相対性理論は、よげんの書か? 新聞もテレビも重力波をアインシュタインの予言と呼んでいるが、自然科学の世界なのだから仮説だろう。このたび実験で検証されたらしいということだ。 また、ノーベル賞間違いなしと報じているけれ…

神様の万引き  (第981回)

前回は書きたい放題で書きつくしたので、娯楽に戻る。政府刊行物の中に、法務省が取りまとめている「犯罪白書」という物騒な名前の資料がございます。最新の統計結果によれば、まず法律別でみると親玉の刑法が、二位以下(道交法など)の全部をひっくるめた…

Oh! Darling  (第979回)

満を持してのユキジ初登場場面のセリフであったが、やはり原作の壁は高く、監督は更に厳しかったようでトキワのユキジも、「いきなり、あたしの股間に首、突っ込んで舐めんのよ」と吠えている。 しかも、漫画では賑やかそうな焼き鳥屋で酒が入っているから情…

映画「地球防衛軍」  (第978回)

少年ケンヂがちょろまかしたバッヂは、漫画では宇宙特捜隊のものだが、映画によると地球防衛軍の「バッチ」になっている(当時の語尾の発音は濁音でなく、映画も忠実に再現している)。この「地球防衛軍」で検索すると山ほど用例が出てくる。そういう名前の…

海賊の歌  (第977回)

手前ども生国と発しますは、氷雪と白夜、間欠泉の噴き出づる大地にてござんす。レッド・ツェッペリンの軽快なロックンロール・ナンバー「移民の歌」は、大意、かくのごとく始まる。初めて聴いたのはレコードを貸し借りしていた中高生のころか、それとも下宿…

愛蘭土  (第976回)

いつごろからか多くの診療所では、患者さんの不安や苦痛を和らげようとしてのことなのか、待合室や診療室に音楽を流すようになった。たいていは私が聴くようなジャンルのものではないが、その目的で効果があるのならば文句はない。しかし先日はさすがに驚い…

New Kid in Heaven  (第975回)

映画にも20世紀的な商店街の喫茶店が何度か出てくる。現代の狭いチェーン店のコーヒー・ショップでは、ひそひそ話ができない。チョーさんがヤマさんに最期の引継ぎを終えた場面に続き、大阪の通天閣近くでの死亡事故報道があり、ケンヂはますます近辺で続出…

ハンド・イン・ハンド  (第970回)

今回このタイトルを付けるにあたり、念のためネットで検索してみたら、何とまあ沢山のハンド・イン・ハンドの団体その他があることよ。震災被害の支援基金だそうだが、ユニセフまで名が出てくる。今日はそのハンド・イン・ハンドについて、あまり好意的では…

痛風  (第969回)

今日は番外編。あまり楽しい読み物ではないことを、あらかじめお伝えしておきます。心身の変調で仕事に集中できないので、こうしてブログで気を紛らわすことになった。こんな書き込み癖にも、意外なご利益があったものである。新年早々、痛風の発作が出まし…

月はどっちに出ている  (第967回)

玄関先にいる喪服姿のケンヂの背中に向けた「塩、忘れるな」という母ちゃんの声が聞こえる。お清めの塩や砂は、もともと神道のものだったらしいが、これと仏教をゴッチャにしてきた我が民族は、何式の葬儀だろうと粒々で清める習性がある。最近のお葬式では…

駄菓子屋  (第966回)

お母ちゃんがサンフランシスコでのパンデミックを報じる新聞に「怖いねえ」と感想を漏らす。また売り物に手を出したかとケンヂ店長は叱りに来るのだが、まだ彼にとって全身の血液を失う感染症は他人事のようであり、それよりも隣の記事にある高校教師が投身…

ススキの原っぱ  (第965回)

前回から一か月も経ってしまった。理由は珍しく仕事が忙しかったからだが、時間や体力が限界を迎えるほど余裕を失くしていたわけでもない。気力の問題。こんな駄文でも、それなりに考えて気合を入れないと書けないことが良く分かった。つくづく作家とか漫画…

同窓会  (第964回)

いちいちお断りするのも大変なので書いていないが、感想文なので漫画にしても小説にしても、時にはストーリーの根幹や細部に至るまで触れることがある。特に映画の場合、ここは漫画と違うという場面があり、本作においては映画をミステリー仕立てしたことも…

コンビニ考  (第963回)

映画でも大人のケンヂはコンビニ店長として初登場する。主演は唐沢寿明。初めて彼を観たのはいつだったか...。「利家とまつ」は会社が忙しいころで、土日は出勤か睡眠だったから観ていない。おそらく、「ラヂオの時間」をレンタルで観たときが初めてだろう。…

18歳になったら  (第962回)

今日はちょっと真面目である。映画の話題の続きは、少年時代のケンヂの立ち姿が1997年の大人のケンヂに切り替わるところからだ。背中にカンナをおぶっている。この赤子役が、また無性に可愛い。漫画では赤ん坊時代のカンナは、むしろマルオに似ている。 ケン…

俺の友達  (第961回)

寄り道を終えて、映画に戻ります。謎の男が角田氏に「そいつは俺の友達だった」と語り、そこで時間が過去に跳ぶ。どうやら季節は夏、場所は神社の境内のようだ。ケンヂ少年は、トレードマークの白い野球帽をかぶっている。高校野球部の練習用みたいな無地の…

海ほたるプリズン  (第959回)

むかし、母音+「サ行」「ザ行」で始まる地名は、火山あるいは火山に縁があるものが少なくないため、古い日本語で火の山という意味であったかもしれないという説を聞いたことがある。でも富士山を筆頭に無数の例外があるし、母音もサ行もよく使われる音だか…

EXPO'70  (第958回)

中学校の放送室のシーンが終わり、かけた曲はそのまま流れつつ、映画はオープニング・クレジットに移る。クレジットと言っても、ここでは登場人物のあだ名が並んでいるだけだが。オッチョから始まりケンヂで終わる(映画の作りもそうなっている)。あの秘密…