おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2012-01-01から1年間の記事一覧

大晦日 (20世紀少年 第580 回)

大晦日である。のんびり雑談で過ごそう。「大晦日」と書いて、ずっと昔は「おおつごもり」とも読んだらしい。樋口一葉の短編小説にも「大つごもり」という題のものがある。当時の彼女は今の台東区から文京区に引っ越した頃で、どちらの家の跡も拙宅から歩い…

田辺のばあさんとこ (20世紀少年 第579回)

第18集の第2話から第7話までは、東京にいるオッチョとカンナの話と、北方にいるケンヂと蝶野巡査長の話が交互に描かれる。ページ順に感想文を書くと、あっちに行ったりこっちに来たりで若干あわただしくなりそうなので、最初にケンヂと蝶野巡査長のストーリ…

違うヴァージョン現る (20世紀少年 第578回)

オッチョはサナエにカンナの消息を聞いた後、同行の男たちにサナエを教会に連れて行くよう頼んでいる。第18集の16ページ目。一旦こうと決めたら、オッチョの行動は迅速なのだ。オッチョはサナエに幾つか説教をしている。「昨日から起きたことは忘れるんだ」…

みんなのうた (20世紀少年 第577回)

私は野球観戦が好きだけれど殆どテレビで、球場に足を運ぶのは年に一二回程度です。昔はなかなかチケットがとれなかった巨人戦は、2試合しか観たことがない。 その1回目で王貞治のホームランを見て、2回目に松井秀喜のホームランを観た。どちらも文字どおり…

思い込んだら試練の道を (20世紀少年 第576回)

ダミアンたちが「悪魔くん」の話をしていたころ、北方検問所の見張り塔では星巡査がのっぴきならない事態に直面している。彼はバイクに乗ってやってきた「宇宙人」に向かって、止まれとか、それ以上近づいたら発砲するなどと警告しているのだが、よほど宇宙…

悪魔くん (20世紀少年 第575回)

かつて私は、カツマタ君がケンヂたちより上の学年ではないかという根拠薄弱な仮説を立てたことがある。なぜなら私が小学生だったころ、近所や親戚に同年代の男の子の遊び友達が十数人くらいいたのだが、同年齢か年下は呼び捨てか呼び名・あだ名で呼びかけて…

西日暮里の十字路 (20世紀少年 第574回)

第17集の第11話には珍しく、というより唯一、わが地元が場面が登場する。ダミアンが思い出している十字路は、西日暮里駅前にある尾久橋通と道灌山通の交差点であり、拙宅から歩いて10分程度の距離にある。千代田線もときどき利用するので、私の生活圏にケン…

あたしのハートに火をつけてよ (20世紀少年 第573回)

日本人の「宗教観」の無さを自嘲するときの月並みな表現としてクリスマスを祝い、神社に初詣に出かけ、お盆にお寺で墓参りをするなどなど我々は無節操であるといったことがよく言われる。私はこれが気に入りません。 例えば、仏教には多くのヒンドゥーの神々…

なぜか知っている歌 (20世紀少年 第572回)

第17集の181ページ目。シャワーで洗髪中のカンナに、サナエは繰り返し作戦中止をお願いしている。理由は「あんないい人達を犠牲にしないで」ほしいからだ。捨てられた地下街だから、シャワーは温水など出ないだろう。今は夏だから良いけれど、冬はつらかった…

8月20日になれば彼女は (20世紀少年 第571回)

第17集も終盤になると、ようやく物語が再び活気づいてくる。第10話「夏休みの宿題」は、東京のどこかにある繁華街の地下名店街の一画から始まる。かつては東京土産やお弁当を売っていたらしいが、今は氷の女王一派のアジトとなっている。今のところは。 ここ…

歌詞の意味 (20世紀少年 第570回)

いつの世も世界が終わるという予言は流行るらしい。噂によれば本日をもって世界は終わるとマヤ文明が言い遺したのだそうだ。そのマヤの世界がとっくに終わっているのだから、こういうのを本気で信じる人というのは、どういうお方なのだろうか...。 私が中学…

銃口 (20世紀少年 第569回)

第17集の163ページ。この場面での蝶野刑事は、一部の行動を除き、荒れ果てた世界の中で人間味を見せている。彼は昼間、芹沢が二人の市民を射殺した民家を夜になって再び訪問している。格子戸をガラリと開ける。「大丈夫、怖がらないで」と声をかけているが無…

ここにも地球を守る男が (20世紀少年 第568回)

先週末の総選挙は戦後最低の投票率だったらしいですね。しかも、無効票数も戦後最高で、新聞によるとそのうち半分くらいは白紙だったらしい。多くの有権者にとって投票する気力もわかない選挙であったようだ。 私はこの白紙投票を制度化したらよいというアイ…

鎮魂のことば (20世紀少年 第567回)

もう500回以上の感想文を書きながら、今ごろになって気付くというのも迂闊な話だけれど、「20世紀少年」はウィルスのみならず、多種多様な手段で大勢の人が殺されているのだが、死ぬ間際の絵は少ない。血の大みそかのときの何人か、ドンキーやモンちゃんやチ…

こんな日々が続くぐらいなら (20世紀少年 第565回)

蝶野巡査長はチョージャと芹沢を残し、一人帰途についた。どこかで自転車に乗り、見張り塔に向かいながら、彼の表情は沈んでいる。心理描写によると、世界中がウィルスで死滅したらしいが、今の自分はこんな暮らしをしていると、やや自嘲気味だ。元気がない…

農作業の歌 (20世紀少年 第564回)

芹沢と蝶野巡査長は農作業の歌が流れる道を歩き、「チョージャ様」の御屋敷に向かった。第17集の148ページ。チョージャ屋敷は農地の向こう側、木立に囲まれた丘の中腹に立っている。わが国の郊外において、かくのごとき妙な西洋風のお城みたいな建物がある場…

長者 (20世紀少年 第563回)

第17集の146ページ目、脱走者を撃ち殺した芹沢司令官は、西部劇の悪徳保安官みたいな恰好で、テンガロン・ハットのようなものをかぶっている。星巡査に遺体の片づけを命じ、続いて蝶野巡査長に「その腰につけてんのか飾りもんか? 持ってるもんは使わねえと…

見張り塔からずっと (20世紀少年 第562回)

第17集第8話の「最果ての警察官」とは、万博の開幕日以来の登場となる蝶野刑事である。いや、彼はかつてのような私服の刑事ではなく制服姿であり、職場の警察官たちから蝶野巡査長と呼ばれている。どうやら荒野の一本道を封鎖している検問所に勤務しているら…

ヒーロー (20世紀少年 第561回)

ここのところ重苦しい場面の連続だったので、新章に移る前に一休み。週刊文春の読者のみなさんはご存じのとおり、柳家喬太郎師匠の「川柳のらりくらり」という連載がある。何週間か前のお題が「ヒーロー」で、懐かしくもあり、「20世紀少年」的でもあったの…

命のお礼、命の代償 (20世紀少年 第560回)

第17週の123ページ目。オッチョから逃げようとした男は、文字どおり崖っぷちに追い込まれた。これ以上近づくとばら撒くぞ、あんたにも分け前をやると、男は切羽詰って商取引に出た。まだ息の荒いままのオッチョは、「金のために人を殺すのか」と声を絞り出す…

オッチョと少年の会話 (20世紀少年 第559回)

睡眠薬から目覚めたオッチョは、部屋の暗がりに草刈り鎌を持った誰かが立っているのに気付いて驚愕している。第17集の第7話、「旅の重さ」が始まり、読者の気も重くなる。鋭利な鎌を振り上げていたのは先ほどの少年だったから、読者も驚愕する。男の子は目が…

手錠 (20世紀少年 第558回)

第17集の105ページ目。オッチョが救った男は、「このワクチン、あのコのものなんです」と言った。左手にカプセルを持って、オッチョに見せている。ちょっと、おかしい。ワクチンはこれ以前も、これ以降も、カプセルと注射器のセットで箱詰めになっており、透…

アリンコの旅 (20世紀少年 第557回)

第16集第6話の「旅の途中」は、その旅人であるオッチョの「教えてください...」という心の中での問いから始まる。ワクチン争奪戦を繰り広げた旅の仲間の生死は不明で、オッチョが彼らをどうしたのかも描かれていないが、少なくとも生き残った倉田さんとは袂…

死に至る病 (20世紀少年 第556回)

ここしばらく私にも有権者らしいところがあることを披露した感じなので、そろそろ漫画に戻ろう。第16集。物語に原発事故はないが、あいにく別の問題が発生している最中である。荒野の七人のうち、ただ一人にワクチンが届いてしまったのだ。 受け取った山内さ…

原発 【後半】 (20世紀少年 第555回)

つづき。原発の問題を考えるときに、科学的知識(特に物理学)の素養が不可欠だが、文系の私は元々、これに弱い。さらに、東日本大震災以降の学界の様子をながめていると、どうやら放射能分野の物理学も地震学も諸説紛々で、誰が正しいのかさっぱり見当がつ…

原発 【前半】 (20世紀少年 第554回)

去年の夏、震災が発生して数か月後、私は原発をテーマにしたシンポジウムに参加しました。当日の論者は岡本行夫、中沢新一、田原総一朗の各氏。それぞれの主張には詳しく触れないが、この会場でスクリーンに映し出された資料の一つが、なかなか興味深いもの…

エスタブリッシュメント (20世紀少年 第553回)

昨日のブログを読み返してみて、重要な政策を並べた部分において、沖縄の基地問題が抜けているのに気が付いて驚きました。恥ずかしながら、うっかり忘れたのではなく、思い出さなかったのだ。沖縄には十回近く旅行に行っていて、釣りやビーチや料理で散々楽…

選挙 (20世紀少年 第552回)

今回から4日間は「20世紀少年」と関係がありません。いま考えあぐねていることが二つどほあるので、この場を借りて少しでも頭の中を整理したい。人に読まれるかもしれない場を使えば、その緊張感で多少はこの頭も働くかもしれないと儚い望みをいだきつつ。 …

何か来る (20世紀少年 第551回)

一行は「ライフショップ マルヤマ」という万屋の子孫のような店を見つけた。この場面はポップさんとペーターが 登場する2014年のシーンと良く似ている。店は荒らされていたが、幸い食べ物や飲み物もそれなりに残っており、一行の一人がお金を払った。普通の…

再び脱走中 (20世紀少年 第550回)

第17集第5話、「絶望の始まり」は、ともだち暦元年まで時をさかのぼる。「これは人道的措置です」というアナウンスが駅構内に流れていて、物々しい格好をした治安部隊が人々を列車に詰め込んでいる。まだ地球防衛軍は整備されていないようで、これは自衛隊な…