2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧
かつて先輩の同業者から、英語には「職業」を意味する言葉が二つあるという説を聞いたことがある。彼が英単語の意味を適切に解釈しているかはともかく、それをきっかけに話した内容はなかなか面白かったので記憶に残っている。そして、その二つの職業とは「o…
第19集の162ページ目、駅のプラット・フォームで諸星さんは腕時計で時間を確かめ、走ってくる電車に目を向けたあとで、力を落とした感じでうつむいている。今日のところは彼の思いは伝わらなかったのだ。その直後、長髪の左手が彼の背中を強く突き飛ばした。…
今日は脱線の日。長髪の人殺し男が余りに「悪」にこだわるので、私も最近、まじめに悪について考えたり調べたりしたのだがよく分からぬ。いま私の手許に、闘う哲学者・中島義道著「悪について」という岩波新書がある。読んだが、読めなかった。主にカントの…
第19集の154ページ目で、西岡が録音したらしいカセット・テープを手にした長髪が「何これ?」と質問している。彼はアロハ・シャツ姿で、リノリュームらしき床に胡坐を組んで座っており、質問相手は椅子に座った”ともだち”。例の目玉覆面をしている。これはフ…
第19集の153ページ。共に医療の道を歩もうと説得を試みる諸星さんに対するキリコの断り口上は、「店はどうするんです」であった。「父が死んで、母一人。店をほおっておけない」と彼女は力なく語る。母の心配だけではない。キリコは父の霊前でケンヂに向かっ…
第19集の第9話には、「後ろの正面」という題名が付けられている。遊び歌「かごめかごめ」の歌詞の一節である。幼いころ幼稚園や小学校で、ずいぶんやらされた。前章「見ぃーつけた」の由来であるかくれんぼや、だるまさんがころんだや、ハンカチ落としには、…
この下書きを書いている今日は、茨城県の大洗町にいる。昨夕、海岸沿いを散歩していたら、復旧工事の看板が立っていて、警備の人に危ないから立ち入らないで下さいと止められた。別の市か町で似たような場所において、事故があったと言ってみえた。東電の原…
今回の下書きは栃木県の益子を訪ねた帰りの電車内で書いている。間もなく二年目を迎える東日本大震災のあと、私は一つの計画を立てた。年に一回、被災地に行くことにした。初年度は以前ここでも書いた南三陸町に滞在し、津波の被害の凄まじさに圧倒されて帰…
重松清さんは三歳年下ですが、お互いこれくらいの歳になれば同年代とお呼びしても差し支えあるまい。重松作品は短編や中編が好きで、映画化されて永作が熱演した「その日のまえに」が記憶に新しい。オムニバス形式になっており、「ヒア・カムズ・ザ・サン」…
ケンジが奪い返したギターは、かつて姉ちゃんにもらったエレキ・ギターではなく、何度か描かれているステージで使っていた黒っぽいギターだ。幸い大切な商売道具を失わずに済んだものの、仕事は失った。目当てのバイトにも他の仕事にも有りつけなかったよう…
第19集の139ページ目で失業したケンヂは「アルバイト・ニュース」という昔懐かしい雑誌を福沢書房で立ち読みしている。今のアルバイト募集情報はネットやタウン誌で無料で手に入るのだろうが、アルバイト・ニュースは表紙に書いてあるように150円。かつてこ…
第19集の後半は、ある意味で長髪の殺し屋が主人公ともいえる。スペードの市たちが、ありったけの武器を集めろと慌てているころ、一人抜け出したケンヂは関東軍の城に向かい、サーチライトを避けながら潜入に成功した。そこへ「よくここまで来たね」というお…
ケンヂとオッチョの人物評として最も的確と思われるのは、さすが付き合いの長いモンちゃんが血の大みそかの日にユキジに伝えた怒りの発言であろう。「ケンヂはいつだって何も考えないで動き出す」。「オッチョはオッチョで、何でも自分ひとりでできると思っ…
城のゲートが開いて反対側に出た200人は口々に、わあ、街だと声を挙げてから涙を浮かべ、これで故郷に帰れると言いながら走り出した。大災害の被災者などを除くと現代の多くの日本人は移動の自由を奪われた経験はないはずで、それだけでも幸せである。 スペ…
第19集の102ページ、ケンヂに作業の進捗状況を訊かれた氏木氏は「あと二枚」と答えている。もう手の感覚がないらしい。正義のためとはいえ公文書偽造の闇稼業。氏木氏の心境を推し量ってか、ケンヂはよくがんばった、すげえよと声をかけている。 氏木氏の畳…
第4集でケンヂがオッチョに言ったように、ジジイになってもロックやってるすごい奴は山ほどいるんだが、でもやっぱり私としてはロックは演るほうも聴くほうも若い奴らのほうが活気があっていいと思うな。 今でもロックを聴いているけれど、昔と比べて再生機…
第19集第6話は「大脱走」というタイトルがついている。あの映画を話題にしたのも、遠い昔のような気がする。そのころショーグンが漫画家を連れて脱走中であったが、今はケンヂが漫画家を連れて敵地に乗り込もうとしている。この章の最初の3ページは妙な絵が…
第19集の巻名が「帰ってきた男」になっているのは、この巻の最後のほうで彼がようやく本名を名乗るからであり、行方不明だった主人公が物語に正式に(?)戻るからだが、その前に彼は意外な戻り方も見せている。 91ページ目。氏木氏の目はとても小さくて、黒…
阿佐田哲也の記念碑的名作「麻雀放浪記」は、意外なことに最初に出てくる賭け事が麻雀ではなく、チンチロリンである。終戦直後の東京が舞台で、著者の分身と思われる語り手の坊や哲が中心となって展開する物語だけれども、真の主人公は愛読者なら誰も異存が…
最初にちょっと余話。昨日、パワー・ハラスメント対策の勉強会に出た。私の年代の男は、体育会系に暴力のシゴキは当然という時代に育ち、職場で怒鳴られ叩かれという体験をしてきたこともあり、現代の職場で問題になっているパワー・ハラスメントの大半につ…
最初にちょっと雑談。以前、引用したダン・シモンズのSF「ハイぺリオン」シリーズに過去の出来事として「第三次中日戦争」という言葉が出てくる。これ自体はもちろんフィクションなのだが、第一次と第二次は虚構ではない。 国際的には日清戦争を第一次日中戦…
第19週第4話「漫画家氏木氏の憂鬱」は、出てこい偽造屋と怒鳴りながら玄関の硝子戸を叩くスペードの市と、その傍らに控えるケンヂと将平君の立ち姿から始まる。ガラスの一枚が割れてセロテープでとめてある。これはとても懐かしい景色だ。市は「俺だ、スペー…
将平君の鉄郎姿の絵に続いて、スペードの市とケンヂの会話が始まる。市は偽造手形でヤバい橋を渡るよりも、もっと安全に関東に脱出する方法を知っているとケンヂたちを勧誘しようと試みた。ケンヂの反応は「脱関東斡旋屋か」というそっけないものだったが、…
第19集の56ページ目、スペードの市に「これでもひっかけてろ」と渡されたものを着用した将平君が立っている。その顔いろからして気に入らないらしい。ケンヂは「999(スリーナイン)だな」と実に的確な感想を述べているのだが、将平君はこの漫画も知らないよ…
第19集の第3話は「スペードの市」というタイトルがついている。この回はほとんどがケンヂと市の会話で終始しており、その合い間に将平君が、本人は不本意だろうが笑いを誘っている。第3話の冒頭では市が歩いていると、人相の悪い連中が見失った誰かを探して…
昨日の続き。すなわち「神は一週間でこの世界をつくられた。だから僕は一週間でこの世界を終わりにします。」という”ともだち”の発言批判である。キーワード検索などでいきなりこのページに跳んでみえたかたがいるかもしれないので、前回の注意書きを再掲し…
基本的に小欄はページ順に感想を書き続けているのだが、たまには先走りたくなることもある。書きたいと思ったことを、その発想とやる気が残っているうちに書いておかないと、忘れてしまうことがある。今回触れるのはストーリーではなくて、台詞ひとつを取り…
第19巻第39ページ。通行手形の店から出てきた男が、小型トラックで去っていく。女は関所に向かったようだという。将平君は急ぐ旅だから(そうも見えないが)、早く作ってもらおうと乗り気だが、ケンヂは「やめといたほうがいいよ」と言う女の様子に何か気に…