2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧
メイはなぜ殺されなければならなかったのか。そもそも、なぜ私がこんなにメイについて延々と書いているのか、自分でもよく分からないままなのだが、一つには、この場面を最後に、彼女は物語からすっかり姿を消してしまうので、今ここで見取ってやりたいよう…
第4巻の第3話「つながり」は、私が特に好きな場面の一つです。万丈目の偶然の登場で、チャイポンの追っ手に狙われていた命が助かったショーグンと夜の女メイは、万丈目の車でバンコク郊外のバス停まで送ってもらう。始発のバスが来るまでのおよそ10分、ショ…
司馬遼太郎は、「空海の風景」のあとがきにおいて、「左道密教がチベットに入り、土地の土俗密教と習合してラマ教となり、さらに北アジアの草原を東漸してモンゴルに入った」と書いている。「左道」というのは、正しくない道、邪道という意味だから、かなり…
今回は取りとめのないことを書く。これまでも何回か、”ともだち”とオウム真理教が、どことなく似ているということを書いたが、それについては、いつかしっかりまとめて書いてみたい。まだ準備不足。だが、オッチョがチベットに行くと言っていたので、この時…
オッチョの師匠は、第4巻第2話「逃走」の冒頭、25ページ目に初出場する。といっても、わずか3ページで、「待ってください」とオッチョ、「なぜついてくる」、「何を苦しんでおる」という言葉を交わしたのみ。師は高齢の男で、僧形である。場所ははっきり分か…
翔太君が危篤との連絡を受けて、オッチョは日本に急遽、帰国したのであろうか。しかし、メイを救出したときに語った彼の言葉によれば、「俺は子供の死に目に会えなかった」のだ。もしかしたら、帰国せずに(つまり、帰国すら間に合わなかったまま)、タイ国…
メイを救出した後のショーグンと彼女の会話を語るためには、それまでのオッチョの人生を振り返らなければならない。彼はどうやら受験校に進学し、バスケットボールを楽しんだりした様子であるが、とりあえず第4巻の段階では彼が商社に就職したことが分かる。…
第4巻の13ページで、七色キッドの話題が出た際、ショーグンは「また、日本か、どうなってんだ、あの国は」と小馬鹿にしているのだが、それに対してイソノさんは、「長い不況から抜け出して、すいぶん景気がよくなったみたいよ」と応えている。 この場面設定…
何とか警察官の亡きがらを処理したショーグンは、チャイポンの手下がうろつく自宅から抜け出して、夜の女の家に転がり込んだ風情です。そこからイソノさんに架けている電話の様子では、ともだちマークに出くわした彼は、警察官の体を調べたらしい。はたして…
第4巻は、子供のころのオッチョとそっくりで、目がもっと可愛い少年が「お父さん、今度いつ帰ってくるの?」と尋ねる夢からショーグンが目覚めるところから始まる。枕元に3人の悪人面が立っていて、「ボスの命令」で殺しに来たと言う。こんな解説などしてい…
今日で第108回。水滸伝の魔星の数と同じ。われらの煩悩の数と同じ。さて、長編の途中で、主役以外の人物を主人公にした中編、短編を挿入するという構成、いわゆる劇中劇が効果を挙げるかどうかは、作家の力量が試されるところだと思う。 例えば、水滸伝では…
オッチョ得意の棒術の利点は、棒なら比較的簡単に準備できることであろう。例えば第4巻の34ページからのシーンで、オッチョは娼婦メイを救出するために、チャイポン率いるマフィアの巣窟に単身乗り込むのだが、その際に、さすが素手では不利とみたか、女の部…
オッチョの戦闘方法は大別して2種類あるようで、一つは格闘、今ひとつは棒術である。いずれも前回の最後で触れたように、相手が即死することを前提としていない戦い方です。 彼は基本的に、銃刀を所持も使用もしない。これからの、ともだち一派との戦いにお…
第3巻の最終話「バンコクの男」から第4巻にかけて、オッチョは畏敬を込めて「ショーグン」と呼ばれる国籍不明の男として登場する。登場した途端に、外国人さんたちを殴るわ蹴るわの大騒ぎを起こしています。 彼がショーグンと名乗るか、そう呼ばれる場面は少…
第3回第11話「バンコクの男」の188ページ目に、「バンコクの男」の顔が初お目見えする。最初の読書でも、これはオッチョだなと思った。そろそろ出番だろうという予測もあったのだけれど、なにせ眉毛が可愛い。彼の少年時代の面影を色濃く、そして唯一かもし…
今や娯楽小説や映画のジャンルにおいて、ハードボイルドという分類はほとんどお目にかからなくなった。その大半はミステリ、アクション、サスペンスといったあたりに分散、吸収されてしまったのであろう。 同様に、かつて使われていた推理小説、探偵小説とい…
ジミ・ヘンドリクスが急死してから、ちょうど20年後の命日に、サンフランシスコ最大の新聞「サンフランシスコ・クロニクル」の第一面にちょっとしたインタビュー記事が載ったのを当地で読んだ。語り手は、カナダ生まれの不撓不屈のロックンローラー、二ール…
サンフランシスコの南方に、かろうじて日帰りできるくらいの距離があるが、海岸沿いにモンタレーやカーメルという小さな美しい都市がある。2,3回、ドライブで訪れた覚えがある。その直前まで、カーメルの市長はクリント・イーストウッドだったのだが、当…
このブログの第100回記念日。ようやく「よげんの書」がケンヂの手元に戻るときが来た。第3巻の175ページ、自宅から焼け出されたケンヂ一家が当座の住まいとしているのは、かつてユキジが祖父と暮らした接骨院である。 その天井から信じがたい家電製品がぶら…
第3巻第9話「運命の子」は、ともだち一派の若者集団がケンヂのコンビニを襲って、カンナを連れ去ろうとする場面です。赤ん坊の略奪は失敗し、誘拐団は店に火を付けて逃走、コンビニと遠藤さん宅は全焼してしまう。 前回も触れたように、この集団はいかにも頼…
第3巻第8話のタイトルは「空港爆破」。ホームレスの神様が悪夢から目覚めて飛び起き、「こりゃあ、いよいよドカンと来るぞ。」とつぶやいたころ、成田の新東京国際空港到着ロビーでは、ベンチに腰かけたユキジが、麻薬犬ブルー・スリー号と顔を見合わせて、…
クラス会で酔いつぶれたヨシツネを送って行ったマルオは、ようやく自宅に戻り寝付いたところで、「サダキヨ探し」に来たケンヂに急襲されて起こされてしまう。ケンヂの昔のアルバムは、お母ちゃんに捨てられてしまったのだ。 卒業写真には、5年生で転校した…
第3巻の109ページ、クラス会が終わったときフクベエは酩酊状態になっていて、隣席のケンヂが彼を自宅に送ることになったらしい。 タクシーの車内で、フクベエの携帯電話が鳴る。1997年の日本は、まだあまり携帯が普及していなかったと思うが、さすが悪党は情…
この作品に何回も出てくる「スプーン曲げ」に関する総論的な話は、7月25日付の第51回ですでに触れた。そのときに出した結論、すなわち、「この物語は科学空想小説であり、その世界ではスプーンは超能力で曲がる」という前提は、今も変えるつもりがない。 今…
この「20世紀少年」という作品は、説明的、解説的なセリフが少ないため、登場人物がなぜそのような言動をとったのかという理由について、よく言えば、しばしば読者の自由な解釈に任されており、悪く言えば、分からずじまいとなってしまうことも多い。 クラス…
刑事コロンボ役で名をはせた俳優、ピーター・フォークが先日、亡くなった。ここに改めて、お悔やみ申し上げます。あのシリーズは何十作も観た。母方の祖母もファンで、理由は「犯人が最初から分かっているから、分かりやすい」とのことだった。ミステリの手…
第3巻のクラス会については、6月14日の第3回と第4回で一部、触れました。今回以降は、それ以外の話題を選びます。 クラス会の案内状の宛先を調べたのは、第2巻に出て来るようにユキジである。ユキジはフクベエの住所を調べ得たのだろうか。彼の実家は、第2巻…
第12巻で山根に銃殺された”ともだち”と、「21世紀少年」の上巻で落ちてきた円盤に潰された”ともだち”は、お互い、そっくりの顔をしている。前者はオッチョが、後者はマルオがその顔を確認しているが、前者が死んだことを知っているマルオが驚くほどに似てい…
このブログの第88回において、一人目のともだちはフクベエ、二人目はカツマタ君という仮説を立てたのであるが、正確には、前回において、ともだちは当初から「二人一役」だったと想定した以上は、「二人とは、誰と誰か」という問いにすべきであろう。 もっと…
前回の問1「ともだちは何人いるのか」に対して、私は2人という説を選びました。それ以外の選択肢よりも、こちらのほうが妥当であると考える理由を以下述べます。 ともだちは1人しかいないと信じている登場人物は大勢いるはずで、すなわち、大半のともだち支…