前回の続きです。本年(2022年)は、前回のいわき市以外にも、福島と宮城の二か所に別件で出かけた際、震災関連の施設を見たり、お話しを伺ったりする機会がありましたので、本日はその二件についての記録です。せっかくの機会なので、上記の「別件」に関し補足すると、慰霊の旅でした。
先の大戦で、わが故郷の静岡市で編成された陸軍部隊のうち、歩兵第二三〇連隊は香港、ジャワでの戦勝ののち、ガダルカナル島に派遣され、戦史に殆ど残らぬほどの壊滅的な損害を受けました。今回の訪問先のうち、この郷土部隊とともにガダルカナルで戦った新潟新発田の第十六連隊と、会津若松の第二十九連隊の関連施設などを慰霊、見学しつつ、地元の方々にお話しも伺いました。
会津若松の次に、郡山の東にある福島県田村市に移動し、その地にある「田村市歴地民俗資料館」および資料館に併設されている別棟の「平和祈念資料展示室」に伺いました。なお、この今回の二件は、前回と異なり電車やバスでの一人旅ではなく、同行者たちとの車での移動でした。同日のうちに東京その他に帰る最後の日でした。
このため、残念ながら余り長時間お邪魔することができませんでした。もっとも二件とも、新型コロナの第七波が続いている秋でしたから、東京者があまり長時間、滞在し喋るのもはばかられます。早くこのパンデミックは終わらぬものか。
田村市の紹介サイトに載っているように、資料館はいかにも歴史のありそうな外見の古民家です。もちろん外見だけではなく、内装も展示資料も年季が入っています。頂戴したパンフレットによれば、家屋が建てられたのは「1800年代前半(推定)」とありますから、江戸時代のものです。
この二百年くらい経っている家が、東日本大震災のとき「ビクともしなかった」というのは驚きです。展示品の中には倒れたり落ちたりしたものもあったと聞いた覚えがありますが、建屋は揺れを吸収して、しなやかに残った。東京の拙宅マンションでは、壁にヒビが入って修理しましたのに。
もう一つ、資料館に展示されている家具調度品や農耕器具などの多くは(考古学的なものだけではなく、当時現役だったものも含む)、ご近所から寄贈されたものだそうです。これが多数あるのには事情がある。この資料館の所在地から、目と鼻の先にある行政区画までが、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、避難区域になった由。
避難指示にも種類があるようなので、そのどれかまでは知りませんが、該当してしまった家々から、このまま放置するのは惜しいということで、寄贈された品々であるとのことです。また、併設されている平和祈念の展示品にも、同様に避難された方々から保管のご依頼があったものであるそうです。こういう機会でもなければ伺えない、哀しいエピソードです。避難先から、お戻りになられたかどうか...。展示室の御庭にて。小雨が降っていました。
三つ目の訪問先に移ります。こちらは福島とは別の旅行の際に、宮城県石巻市にある「まねきショップ」さんにお邪魔しました。この時も最終日の最後の行き先で、暗くなってしまい、お土産を買って帰ることになりました。フェイスブックをやっていらっしゃるのでご案内です。
https://www.facebook.com/manakikadonowaki/
私は2018年秋に石巻を訪れた際、日和山の山頂から、この店がある辺りを眺望しております。ただし、そのころは店の存在を知らず、今回の同行者に教えられて初めて知りました。このあたりにあった町は5つのうち、統合で2つが残り、店長さんはその一つの町長さんでいらしたとか(記憶があいまいで申し訳ないです)。
2018年当時、このあたりは第1187回で記事にしたとおり、一帯が激しい津波に押し流され、訪問時はクレーンやダンプトラックが動き回っていて、復旧復興のための造成工事中でした。
正確には、このお店が開店したのが2016年ということでしたので、すでに在ったはずなのですが、正直申し上げて「余りに何もない」状況に急激に置かれてしまったという、東北のあちこちで見てきたこと、感じてきたことの繰り返しに圧倒されると、細かい観察などできるものではありません。写真はこの日、石巻で迎えた夕暮れ。
あのときは北上川の河口の護岸工事が始まっていましたが、どうやらそちらも竣工したような様子です。今後も着実に復興が進むよう願ってやみません。店長さんは、かつてニューカレドニアへ往復する貨物船に乗っていらしたそうで、ガダルカナルのあるソロモン諸島を眺めながら航海されていたそうです。
そういえば、前段の田村市の「平和祈念資料展示室」に展示されていた写真の幾つかに、戦時中、東京から疎開してきた子供たちの写真や説明書きがありました。この地で受けいれていただいた小学校は、いま私が住んでいる町にあったものです。縁は異なもの。では本年の行動記録を、これにて終了いたします。
(おわり)
石巻出身の彫刻家、高橋英吉の「潮音」。ガダルカナルの戦いで戦死。 (2022年11月3日撮影)
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