おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ボウリング・ブームが来るまでは  (20世紀少年 第334回)

第11巻第1話の「それぞれの大みそか」、残るは神様とホームレス、春波夫と彼のマネージャーの年の瀬の過ごし方。神様は酔っ払って寝ている。いずれまた第15巻の最後で話題にするが、「帰ってきたヨッパライ」によると、天国では神様が酒を用意して待ってくれ…

歌ってよ  (20世紀少年 第332回)

第15巻の15ページ、ユキジとヨシツネがカンナの噂をしていたころ、当のカンナは街角の電気屋がショーウィンドウに置いたテレビに、紅白で歌う春さんが映っているのを冷めた目で見ながら歩いている。しばらく前なら怒りがわいてきただろうが、今の彼女は父を…

献杯  (20世紀少年 第331回)

羽田の秘密基地でヨシツネが、ゆく年くる年のスピーチを始めたのは、白組の大トリの春さんが歌っている時間帯だから夜の11時半ごろか。冒頭、隊長はカンナのカセットで聴いたというケンヂの歌の一節を引用している。「みんな家に帰ろう」、「誰にも止める権…

それぞれの大みそか   (20世紀少年 第330回)

第12巻に入ります。この巻は、2014年12月31日の夜から2015年元日の夜までを描いている。血の大みそかから14年。あのときは、みんなしてひどい目に遭ったのだが、この年の大みそかはヨシツネとユキジが一緒に居る以外は、第1話のタイトルどおり「それぞれの大…

クマノミの名 (20世紀少年 第329回)

第11巻の222ページ目は構成が上手くて、戸倉とオッチョの会話が理科室の話題で終わり、続いてユキジの回想が、その理科室の中で始まる。彼女によれば、山根の記憶は「あの時だけだ」そうだが、その日は理科の時間にフナの解剖があったという。何年生のときか…

卒業写真のあの人は  (20世紀少年 第328回)

第11巻第11話の「ヤマネ君」は、羽田の秘密基地で隊員たちのために、おせち料理を作っている心優しいユキジと、タケノコをつまみ食いして叱られているヨシツネ隊長の会話から始まる。隊員たちはみんな血の大みそかの孤児、帰る家もない。第12巻で少年時代の…

アルコール・ランプ   (20世紀少年 第327回)

第11巻の第12話は「理科室の思い出」。年末の夜だが遠慮も何もなく、オッチョは大福堂製薬の戸倉氏の自宅まで押しかけた。妻女に「落合と申します」と自己紹介している。敬語を覚えていたか。それにしても、彼は脱獄逃亡犯であるにもかかわらず、本名を名乗…

怪鳥   (20世紀少年 第326回)

アルフレッド・ヒッチコック監督の映画に「鳥」という作品がある。なぜか殺意満々の無数の鳥さんが人間を次々と襲うという怖い怖い映画なのだ。小学生のころ二回ほどテレビのゴールデン洋画劇場か何かで観たのだが、中でも特別に恐ろしい場面がある。観たこ…

大福堂製薬  (20世紀少年 第325回)

第11巻に戻ります。第11巻の後半から第12巻の最後にかけては、「20世紀少年」屈指のクライマックスである。2014年、地下活動中のユキジ、秘密基地のヨシツネたち、法王暗殺の阻止を図るカンナは、それぞれバラバラに行動していたが、サダキヨという妙な触媒…

新宿  (20世紀少年 第324回)

昨日の続き。確かに作品中に、千代田区関連の地名も少なからず出てくるけれど、お茶の水工科大学は、お茶の水博士のモジリかもしれないし、そもそも地名の本来の表記は御茶ノ水なのだ。 一ツ橋も頻出するが、これは小学館があるからである。では、新宿区はど…

鈴蘭灯 (20世紀少年 第323回)

今回も本筋とは関係ないです。先日、新聞を読んでいたら「鈴蘭灯」と書いて、「すずらんとう」と読ませる言葉があることをこの歳になって初めて知りました。そうだったのかと感心したことが二点あって、一つはスズランはランのような花が鈴なりに咲くから鈴…

2015年に西暦が終わる (20世紀少年 第322回)

最初に読んだときに不思議に思い、未だに何故なのか分からないのは、なぜフクベエたちが2015年を西暦の終わる年に選んだのかという点です。「よげんの書」のクライマックスが2000年に来るのは、世紀末だから単純明快で宜しい。「はたして21せいきはくるので…

培養成功  (20世紀少年 第321回)

鳴浜病院はオデオン座以上に荒れ果てた廃墟だった。窓ガラスの大半が割れている。第11巻の161ページ、南病棟に踏み込んだカンナは、研究室の一つに「Dr.YAMANE」という表札を見つけている。初めて山根の名前が出て来た。そして近くの部屋に「Dr.ENDO」の表札…

探し物は何ですか (20世紀少年 第320回)

第11巻の151ページ、日本で最初の「全身から血を吹き出す」病気がこの町で出たと聞いて、カンナはそれがいつだったかと問うた。老人の答えは、「1994年...95年ごろぐらいじゃなかったかな」というものだった。カンナが生まれる前だ。そして、病死したのは三…

オデオン座 (20世紀少年 第319回)

第11巻第8話の「廃墟」は、「浦の苫屋の秋の夕暮れ」という感じの侘しさが漂う漁村風景と、「いやあ、あぶないとこだったねえ。あんた、運がいいよ」というセリフで始まる。カンナは強運の持ち主であった。母をたずねて三千里、辿りついた鳴浜町の元映画館オ…

ニュー・シネマ・パラダイスへようこそ (20世紀少年 第318 回)

第11巻でカンナが鳴浜町のオデオン座を訪ね行く場面は、私のお気に入りのシーンの一つだ。その理由は、読むたびにこの場面が、大好きな映画「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い起こさせてくれるからです。カンナはこの地で深い心の傷を負うのだが、後にオ…

モンちゃんメモを読んでみる   (20世紀少年 第317回)

第11巻の148ページ目上段に、モンちゃんメモの一番上の紙が描かれている。多くの先輩読者が目を皿のようにして読み取ろうとしたに違いない。このメモはどうやらノートに書かれたものではないようで、一枚一枚の紙に書いては重ねという作業をしたようにみえる…

羽田の基地   (20世紀少年 第316回)

第11巻の139ページ目に、羽田の秘密基地が出てくる。ヨシツネの5つある基地の一つ。先日、コイズミが電話ボックスから連絡を取ったのは、この基地だろう。羽田はなぜ廃墟が立ち並ぶ再開発地区になってしまったのだろう。1997年の羽田空港爆破の際か、2000年…

大きなニュース   (20世紀少年 第315回)

第11巻第7話は「サダキヨの決意」というタイトル。私もコイズミのヴァーチャル・アトラクション以来、長いことサダキヨに付き合ってきたのだが、ここで彼はしばし物語から姿を消すことになる。後半には、少年時代の彼が何度も出てくるだろうからお楽しみ。 …

再会そして別離   (20世紀少年 第314回)

ケンヂたちが小学校高学年だった1970年前後の週刊少年マガジンは、その連載漫画に「巨人の星」、「あしたのジョー」、「ゲゲゲの鬼太郎」、「天才バカボン」など、今となっては信じがたいほど充実した作品群を抱えていました。 その中で私の一番のお気に入り…

ウッドストック 【後半】   (20世紀少年 第313回)

ショーグンの記憶によれば、中村の兄ちゃんはCSN&Yを聴いていると「祭りのあとみたいなせつない気持ち」になると語っていたが、その話をオッチョから聞いたときのケンヂは万博に行けなくなった直後だったから、まさに祭りのあとの切なさをかみしめていただろ…

ウッドストック 【前半】   (20世紀少年 第312回)

ここのところ小欄では、サダキヨによる人殺しだの、高須の”絶交”未遂だのと、ろくな話題が続かなかったので、ここらで一休み。話題はちょっと前に戻って、第9巻に出てくるウッドストックのフェスティバル。 なぜ今ごろになってかというと、ようやくウッドス…

暴走   (20世紀少年 第311回)

単行本第11巻の表紙には、ギターを熱演中のケンヂが描かれている。類似の絵は同巻の41ページ目にも出て来て、その直後にカンナはケンヂが「俺は無敵だ」と語っていたのを思い起こしている。さて、この表紙絵の背景は例によって不気味なものだ。 どうやら地球…

関口先生さようなら   (20世紀少年 第310回)

カンナの戦闘能力は高い。路上で包囲陣を敷くドリーム・ナビゲーターたちに車を突っ込ませた。下車しながら不良少年たちに作戦指示を三つ。捕虜の救出、カーステレオとクラクションを鳴らして周辺住民を叩き起こして相手の動きを止め、そして脱出。 少年たち…

雨上がりの夜空に   (20世紀少年 第309回)

2014年の屋上に戻る。第11巻の77ページ目、老人ホームの周囲を追っ手に包囲され、頼みの綱の宇宙人も来ないとあっては万事休す。サダキヨは肌身離さず持っていたらしいモンちゃんメモを取り出して、「君、これ持っていてくれないか。これにすべてが書かれて…

さらばモンちゃん   (20世紀少年 第308回)

前にも書いたのだが、私は連載中の「20世紀少年」を一回も読んでいない。理由は二つあって、一つは連載開始時にカンボジアという、当時、日本の情報がほとんど届かない所に住んでいたこと。もう一つは、ビッグ・コミックとビッグ・コミック・オリジナルは、…

津波てんでんこ (20世紀少年 第307回)

大震災と漫画を関連付けてブログを書くなどけしからんと思われる方々は、どうぞお読みにならないでください。そういう考えがあっても否定しません。されど、私は恥ずかしいとも不謹慎だとも思わない。東日本大震災も、「20世紀少年」の読書も、私にとっては…

ラグビーといえば   (20世紀少年 第306回)

第11巻第5話の「全身全霊」は、左ウィングの子門が激走し、逆転トライを決めるシーンで幕を開ける。日本の大学のラガーシャツは、モンちゃんが来ているような横縞模様が多い。スポーツウェアの中で、この種のラガーシャツほどカッコいいものは他にないと思う…

宿題   (20世紀少年 第305回)

夕涼みがてら歩き出したモンちゃんは、サダキヨ相手に「ガキの頃なら、今日あたりから夏休みの宿題でヒーヒー言っているな。早く宿題なんかない大人になりたいと思ったもんさ。」と語りかけている。同感。私の小学校は、登校日ごとに宿題の期限が割り振られ…

地球の平和を守るために   (20世紀少年 第304回)

第11巻の74ページは、サダキヨが白状した内容を、モンちゃんが書き終えるところから始まっている。モンちゃんは「ありがとう、全部しゃべってくれて感謝するよ。この証言が全ての突破口になる」と言っているから、ともだちの正体を含む重要な情報の数々をつ…