おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2016-01-01から1年間の記事一覧

パティ・スミスのインタビュー記事  ”HOW DOES IT FEEL”  (第1076回)

1946年12月30日、渦巻くような激しい吹雪の中、シカゴの町で私は生まれました。陣痛の母を連れてタクシーを呼んだ父は、車の窓を開け放したまま、運転手に湖畔通りの道案内をする羽目になりました。私は弱々しい赤ん坊で、父は生まれたばかり子の呼吸が止ま…

風と雨の詩  (第1075回)

これは漫画と映画の感想文サイトなのだが、最近、妙なところに力が入っている。ボブ・ディランの「風に吹かれて」や「激しい雨が降る」の歌詞を読んでいて、生物や気象や地理で使う言葉が本当によく出てくるなあと思った。 ブルースやカントリーの本場だけあ…

歌い出す前から よく知っていた歌  (第1074回)

前回からの続きです。のちにパティ・スミスが「ニューヨーカー誌」の取材に応えたところでは、最初にノーベル・アカデミーから来た打診は、誰か言えないが文学賞受賞者の代りに歌ってくれというものだったらしい。そこで彼女は自分の曲を歌うつもりでいたと…

パンクの女王  (第1073回)

パティ・スミスの顔と名前だけなら、四十年以上も前から知っている。デビュー・アルバム「ホーセス」のジャケット写真。白いブラウスの肩に上着を掛けた立ち姿。確かラジオで彼女の歌を聴き、「これは、ついていけない」とあっさり諦めた私。1970年代の半ば…

転石苔むさず  (第1072回)

中学校の英語の授業では、そう教わった。英語の諺、「A rolling stone gathers no moss」の訳である。いま以て、意味不明。でも今は、多くの辞書やネットで「転石苔を生ぜず」のような表現になっている。「君が代」と似ていると不敬なのだろうか。 マディ・…

ポークの成分表示  (第1071回)

しばらく前、少しでもイスラム教が分かるようにコーランを読むぞと、ここで誓った。さっそく買ったのだが、たいへん厚い本で通読する気力がわかず、やむなく所々を拾い読みしている。なぜ彼の宗教は豚肉を食べてはいけないのだろう。それもヒンドゥー教の牛…

白鳥の歌  (第1070回)

ボブ・ディランは、彼の伝記映画「No Direction Home」の中で、こう語っている。「ジョニー・キャッシュは、神様のような人だった」。 この神様のようなお方は、酒と薬と女に溺れ、何度か逮捕されて拘置所(ブタ箱)のお世話になっており、でもその才覚や行…

天国の扉  (第1069回)

天国にドアがあったとは驚きだ。しかも、ノックをしないと入れないらしい。返事が無かったら、どうしたらよいのだろうか。ボブ・ディランの「Knockin' on Heaven's Door」は、彼の作品にしてはシンプルな歌詞なのだが、なぜかカバーも多いし、様々な娯楽芸術…

赤いバンダナ  (第1068回)

前回の続きです。レンタル・ビデオ屋という稼業も、すでに古くなりつつあるが、それが発生する前、日本の都市には「名画座」という共通ブランドの映画館があり、金はなくても時間ならあるという映画ファンのために、ときどきフィルムが切れるような古い映画…

太陽の口づけ   (第1067回)

私が知り合った或るアメリカ人は、高校生の息子が運転免許を取ったら、夏休みに交代でキャンピングカーを運転し、大陸を横断するのが楽しみだと語っていた。何日かかるのだろう。同僚が鉄道で横断した時は丸三日を要したと言っていた。ともあれ、羨ましい話…

船乗りの唄  (第1066回)

ジャニス・ジョプリンが27歳でこの世を去った翌月、三島由紀夫が自決した。46年前の1970年11月。この年に実家がようやくカラーTVを買い、当時5年生で11歳だった私は、あの出来事をテレビのニュースで観たのだと思う。拳を振り上げている三島の姿を何となく覚…

遣米使  (第1065回)

いつの日か慰霊のため、伯父が戦死したテニアン島に行くのだと書いたが、ようやく時間とお金の工面もできて、来年の1月に参ることになりました。このテニアンほか、近くのサイパンやロタといった島々からなる北マリアナ連邦は、アメリカ合衆国の「自治領」と…

トランプ遊びでジョーカーを引いた人たち  (第1064回)

勝っちゃったのね、トラさん。世界一大統領の選挙。私はいまアメリカの政治経済に全く利害関係がないし、もともと政治好きな人間でもないし、でもMLBよりは面白そうだから、この半年、レース展開を眺めてきた。ヒラリー・クリントンが順当に選ばれるだろうと…

ハロウィンは死者と子供のための儀式である  (第1063回)

渋谷に集まって仮装行列をする日ではない。かくいう私も、幼少のころよりクリスマスは、年に一度ケーキを食べられる日という認識しかなかったので、他人のことはどうこう言えない。 それにしても、1980年代にアメリカに滞在していたころ、ハロウィンは在留外…

Let me forget about today until tomorrow (第1062回)

多忙と多病でブログが停滞した。しばらくは、この調子が続きそうです。うかうかしているうちに、ボブ・ディランがノーベル文学賞の受賞の意向を伝えたというニュースが入って来た。何か面白いことを言ってくれるかと楽しみにしていたのに、日本語の報道によ…

時代は変わるはず  (第1061回)

前回の続き。西暦2000年に外国の駐在から還って来て、いろんな仕事仲間と食事したりお茶を飲んだりしていた或る日、隣に知的な顔立ちの娘さんが座った。かなり学術的なプロジェクトの事務局をしていなさっており、多少こちらも緊張したようで、「趣味は何で…

激しい雨が降っていても  (第1060回)

私は雨男だ。肝心なとき、狙いすましたように雨か雪が降る。今年の春、2016年4月21日の夜、渋谷にボブ・ディランのコンサートを観に行った日も、オッチョがハチ公前のスクランブル交差点を渡っていた時は晴れていたのに、私の場合は春雨に濡れて参ることにな…

悪魔を憐れむ映画鑑賞  (第1059回)

アメリカ映画”Fallen”のタイトルは、たぶん堕天使のことではないかと思うのだが、邦題は「悪魔を憐れむ歌」になっている。1998年の作品。私はけっこう好きで何回か観ているのだが、当時のアメリカのサイトを見ると、興行的には失敗し、評論家からも酷評され…

拾ったバイクで走り出す  (第1058回)

今回は雑談。映画のケンヂは、北海道で山の男と出会って立ち直り、東京に戻る決意を固めたようである。まず、交通手段であるが、世が世なので電車も飛行機もないらしく、やむなく後になって「千キロだぜ、千キロ」と嘆くことになる道のりを、小さめのバイク…

イシ  (第1057回)

イシは弓矢づくりの名人で、また狩猟の達人だが、私たちが思い描くような職業としての猟師ではない。彼と彼が属する村の衣食住を支える日々の仕事として、熊や鮭を狩る。 今回は本の読書感想文で、書籍名は岩波現代文庫の「イシ」、副題に「北米最後の野生イ…

孤高の猟師  (第1056回)

ひさしぶりに、映画の感想文に戻る。最終章(第三作)「僕らの旗」に、遠藤健児が遠藤賢司に出会う短い場面がある。前者は主人公ケンヂの本名であり、後者は本物のハード・フォーク・シンガーで不滅の男、冬の雪山でケンヂの命の恩人となる。 かつて、アイヌ…

リオデジャネイロ・オリンピック  (第1055回)

リオの夏季オリンピックが終わりました。季節も時差も正反対の開催地とあって、調整もさぞや大変だったと思うが、選手や関係者のみなさま、ご健闘お疲れさまでした。前回大会ほどテレビを観る機会は作れなかったけれど楽しかった。 中学で卓球部、高校で水泳…

原子力政策  (第1054回)

あまり時事ネタをここで取り上げないようにしているのだが(娯楽目的ですから)、以下に関することは、すでにここでも何度か話題にしているし、その続きを書かずにはおけない感じになってまいりました。 ことの発端は、ネットで評判になりつつある先週金曜日…

地球の平和を守るために  (第1053回)

前々回・前回と、私のごときノンポリの鏡のような人間が、平和を語る世の中になってしまいました。持病の腰痛がひどくて、しばらく外出もままならぬまま、8月15日を迎えました。まだ、千鳥ヶ淵にお参りしていないが、そのうち時間ができたら今年も行こう。本…

平和のうた 【後半】  (第1052回)

映画で、蝶野刑事が「ボブ・レノン」を聴いているときに挟み込まれている短いカットは、○龍でケンヂとカンナがチャーシューおまけ付きのラーメンを食べているシーンや、暗くなった一番街商店街でギターケースをはさんでケンヂとカンナが話をしている場面だ。…

平和のうた 【前半】  (第1051回)

時は巡りまた夏が来て、広島と長崎では平和の式典が行われました。せめてこの季節だけでも、平和な時代に生まれ育ったことの幸運さについて、思いをはせると毎年書いている。それに、いつまでも平和かどうか、最近、怪しくなってきた。 内憂外患という言葉が…

Joe  (第1050回)

もうすぐリオデジャネイロのオリンピックだ。せっかくの大会なのに、イワンのバカどもがドーピングなどやりおって、しかも大統領がオリンピックに政治を持ち込むななどと文句を言っている。ロサンゼルス・オリンピックの不始末を忘れたか。せめて始まったら…

Buffalo '66  (第1049回)

さあ、久しぶりに、のどかな話題で感想文が書ける。1998年のアメリカ映画、「バッファーロー'66」は、公開当時、首都にさえ映画館がない国にいたため、21世紀になってからレンタルで観たはずだ。最近また観た。ご覧になっていらっしゃならい方は、拙文を読む…

お詫びとお知らせ  (第1048回)

先日お伝えしたとおり、憲法関係の記事は別のサイトに移しましたが、わたしのブログを一本化する目的で、再びこの「おじさんの雑記帳」に再掲します。今回は第1313回に続きます。 (おわり) .

摂政と委任  (第1047回)

革命で誕生した政権は、直前の権力者を悪者にせざるを得ず、ときには彼らが使っていた政治の用語さえ厭う。このため、前の前とか、もっと昔の制度名を持ち出すことがある。明治政府の場合、武家政治を建前上は捨て、皇室王族を担ぎ上げた。 このため、ずっと…