中学校の放送室のシーンが終わり、かけた曲はそのまま流れつつ、映画はオープニング・クレジットに移る。クレジットと言っても、ここでは登場人物のあだ名が並んでいるだけだが。オッチョから始まりケンヂで終わる(映画の作りもそうなっている)。あの秘密基地の仲間たちと、”ともだち”の仲間たち、そして二股膏薬の双子の名が飛んできて貼り付く。
格別、斬新な画像ではないと思うが、もう何年も漫画と付き合ってきたので、ここに並んでいる名はみんな同級生みたいなものであるから嬉しい。そして背景は、自分だけが行けなくてコリンズになってしまった”ともだち”の儚い夢、1970年の大阪万博などの写真集である。これも殆どがカラーだ。
このテクニカラー、若い世代には、ちょっとケバケバしく映るかもしれない。しかし、昔のカラーは写真では化学反応を使ったアナログだったし、経年変化で変色する。テレビはブラウン管に目を近づけて見ると、いくつかの色素をのせた丸い粒子がブラウン管上に肉眼で見えた。これを知らない世代に書き言葉で説明するのは至難の業だ。
画素と言えばいいのか? 今のピクセルの数は巨大だが、昔々のテレビや写真のカラーは一言でいうと、どぎつい原色を散りばめたコラージュのようなものだった。大昔のシーンだけセピア・カラーになる。最後に路上で遊んでいる子供たちの白黒写真が出てくるのは、きっと口直しだろう。
大阪万博のエンブレムは、漫画だと仕方なく黒色なのだが、ホンモノは紺色である。映画もケンヂ少年がジジババの店先で見つけた「EXPO'70」のポスターは、サクラの花弁が黒になっているが、当時の本などを見ると映画の冒頭と同様、真っ青である。せっかくだから拙宅の資料より。
2020年までに地球が終わっていなければ東京で再びオリンピックが開催されるのだが、そのエンブレムで早くも揉め事が起きている。まあ、似てるっちゃ似てるんだが、世界的に恥をかかないよう専門家に善処してもらうほかない。
私はかつて招致の際に使った右のデザインのほうがずっと好きなんだが、何でも今週発売のある雑誌によれば、スポンサーの関係で使えないらしい(と言い張っている人がいる)。変な国。
ちなみに、「EXPO'70」という英語(?)は、要するに「70年万博」という、この上なく簡潔な省略形であり、味も素っ気もなくて実に良い。小さな子供だった私にとって、永遠に続くかに思えた60年代が終わり、日本も私もさらに騒動が増えることになる70年代開幕のファンファーレが「まんはく」であった。前回、お祭り騒ぎと書いたが、関係者に叱られるかな。
でも、映画では早速、外国人さんたちが民族衣装で踊っているし、今でも覚えているがあの開幕式の風船、太陽の塔の顔フルコース。ケロヨン人形とアコースティック・ギター。米国空軍中佐マイケル・コリンズが一人で操縦し続けたマザー・シップ、打ち上げ時に地球の重力を振り切ったサターン5型ロケット。ブルー・インパルスの勇姿、当時の携帯電話にミニ・スカート。
これらの写真や動画が壁絵のように幾つもの岩塊に描かれ、それらが寄せ集まって映画のタイトルが出来上がる。制作のデザイナーさんたち、頑張ったね。出来上がった「20世紀少年」は文字が黄色で、縁取りが濃いオレンジと、すっかり歌舞伎町スタイルの色調になっている。そして画面はいきなり暗転するのだが、それは次回にとっておきます。
たまには記事の下に書く歌詞の概説。うちのカレンダーはドイツ製で、見事に我が国の祝日が載っていない。日曜日は独語で”Sonntag”、なぜか男性名詞。どんたくの名はこれに由来するとのことだ。まんはくと似ている。ジェスロ・タルはイギリスのロック・バンド。1970年の作品、「マイケル・コリンズ、そしてジェフリーと俺のために」より。
11号計画の月着陸船イーグルは、コリンズ中佐がデザインしたエンブレムにあしらわれた白頭鷲と同じ意味合いか。アメリカの国鳥です。空軍基地のあるサンディエゴの動物園で本物を見たことがある。鷲といえばハプスブルグの紋章で名高い。イーグル号は舞い降りた。そしてコリンズのもとに戻って来たのだ。
(この稿おわり)
桜もさすがに今は咲いていないので昔の写真(2010年3月27日撮影)
それがどんたく お祭り騒ぎ
それがどんたく お祭り騒ぎ
それがどんたく お祭り騒ぎ
七日に一日は 仕事もお休みさ
「どんたく」 サディスティック・ミカ・バンド
I'm left behind when I should have been there, walking with you.
”For Michael Collins, Jeffrey And Me” Jethro Tull
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