おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

壁 (21世紀少年 第518回)

カツオ達の好きなテレビの深夜番組「イレブンいい気分」の大先輩、「11PM」でも大活躍された藤本義一氏がお亡くなりになりました。謹んで哀悼の意を表します。白髪の洒落たおじさんという印象でした。サバダバ。 さて。第16集の第9話は「近代史」。かつて、…

ゲンジ一派と氷の女王 (20世紀少年 第517回)

第16集の149ページで、半端にデモなんか行くな、痛い目にあうぞとオッチョに言われたサナエは、自分が中途半端な動機でデモに行ったのではないことを伝えようとしている。彼女は「政治犯を救うために必死に活動している組織」に入りたくて、その情報を得よう…

新しきこの世界 (20世紀少年 第516回)

第16集の146ページ。オッチョはサナエに見つかった。一目見て彼女は、このヒゲと長髪の男が、うわさのハルク・ホーガンではないかと思ったらしい。誰ですかと訊いても答えない相手に、「壁の向こうに行って帰って来たハルク・ホーガンですか?」と訊きなおし…

ともだち暦 (20世紀少年 第515回)

ともだち暦について考えます。一体、いつ始まったのか。一般に、現代の日本では元号(年号)と西暦を併用している。ただし、政府のみは元号だけ。法律も判決文も行政文書も原則として西暦は使わない。公的には、元号優先なのである。さすがにパスポートは西…

サナエの悩み (20世紀少年 第514回)

テレビの映画放映はご覧になりましたか。3作、終わりました。先述のとおり映画の感想文は、詳しくはマンガを終えてからまとめて書くつもりですが、とりあえずの印象から。未公開シーンを追加編集したうえに、コマーシャルも加えて2時間枠に押し込んだため、…

カツオの秘密 (20世紀少年 第513回)

第1集の冒頭でケンヂとお母ちゃん、キリコとカンナが出て来たときにも同じようなことを書いたのだが、この第16集の125ページ目から始まるカツオの家庭の描写も、3ページぐらいの間に家族の構成とそれぞれの性格がだいたい分かるように、ごく普通の会話でうま…

プロレスの思い出 (20世紀少年 第512回)

さあ、前回は理屈をこねたので、今回は気分一新、プロレス論に取り組みます。ともだち暦3年、街頭テレビの英雄は、どうみても力道山がモデルの「雷神山」(ライジングサン)である。雷神というのは我が国でも古い神様なので、雷神神社や雷神山は全国に散在し…

疑問点の整理 (20世紀少年 第511回)

今日はちょっとストーリーから外れます。最初に、「20世紀少年」とは全く関係のない話題から。先日テレビで、多くの中学生たちは、メールの最初の行に、一文字だけ残らないように気を付けて文章を書いているというような報道をみた。今どきの中学生も大変だ…

下宿館 (20世紀少年 510回)

第16集の123ページは、「ヤッくん、ごはんよー」という声から始まる。こういうふうに誰かの家族が呼びに来るまで、私たちは原っぱや田んぼで遊んでいたのだ。前に引用したブルース・スプリングスティーンの「No Surrender」にも、うちに帰っておいでと呼ぶ姉…

大学ノートの裏表紙に (20世紀少年 第509回)

第16集の122ページ目に、ともだち府の巨大なタワービルが登場する。すでに「ともだち暦」は3年目を迎えている。このビルの外観も、例によって趣味の悪いデザインである。彼らが過去、使用した可能性がある「VX」という毒ガスを彷彿させる。 その下に民家が軒…

誰の「記憶」か (20世紀少年 第508回)

前回の続きです。これらが誰の記憶なのかという問いに対し、答えを三つ考えてみた。(1)世界大統領になった”ともだち”の記憶。この場合、記憶情報は”ともだち”がアウトプット側であり、装置のほうがインプット側である。次の二つは出力と入力が逆で、(2…

どんな「記憶」か (20世紀少年 第507回)

映画の第一部は細部をかなり変更していると書きましたが、第二部は大筋もずいぶん変えていますね。映画は映画でどういう構成になっているのか、改めて確かめましょう。それにしても、ただで観せてもらって文句いうのも何ですが、日ごろ余り民放を見ないせい…

本当の真実 (20世紀少年 第506回)

第16集の前半部分も終わりに近づいている。ドンキーが理科室の窓から飛び降り、山根が「馬鹿な奴だね、奇跡を信じないなんて」と言っている。私はこの夜の山根の心境が今一つ分からない。当人は2015年の理科室での秘密会議において、彼はフクベエに対し、自…

もっとすごいこと (20世紀少年 第505回)

第16集の104ページで、給食スプーン曲げ事件を山根に絶賛されたフクベエは、「あんなことより、もっとすごいことができるよ」と言った。会話はそこで、サダキヨらしき少年が理科室に入ってきたため中断している。しかし、次のページから同じ話題で再開。桜の…

海猿 (20世紀少年 第504回)

いったん3作目でシリーズ終了になった人気映画「海猿」の第4作が作られた背景には、東日本大震災における海上保安庁の活動に感銘を覚えたファンからのリクエストに応じたのも一因であるとどこかで読んだ。近ごろ嬉しい話題である。しかも、海上保安庁は近年…

あっと驚くタメゴローだよな、オッチョ (20世紀少年 第503回)

第16集の92ページは、笑顔の関口先生が教壇で、「えー、今日から二学期です。」と挨拶をするシーンから始まる。今では大学と同様、二学期制(前後期制)の小中学校も少なくないようだが、私らのころは2学期といえば残暑から初冬にかけての一番長い学期であり…

君は誰? (20世紀少年 第502回)

金曜日に録画した映画を週末に観ました。これだけ漫画を読んでいると、なんだか実際に身近で起きたことが映画になったような感じまでして楽しい。 ただ一つ、冒頭の放送室の場面だけは省かないでほしかったな...。すべては原っぱの秘密基地で始まったと、ど…

階段にて (20世紀少年 第501回)

前回(昨日のブログ)を書いてから、この私にしては珍しく何日か考えました。せっかくの500回記念の最後に、何が何やら分からんと言ったまま、先に進むのも不本意である。例によって好き放題の推測混じりであるが、自分なりの解釈を試みた結果を書き残します…

1970年の嘘 再考      (20世紀少年 祝・第500回)

みなさま、昨夜の映画はご覧になりましたか。私はひどい風邪を引いていて最後のほうはぐったり。録画したので、体調が回復したら改めて観ます。映画の感想は別途書くつもりなので、今回は映画化されたこと自体の感想みたいなものだけ並べます。 ・ 細部がか…

ナショナルキッド (20世紀少年 第499回)

私はナショナルキッドを知らない。初めて「20世紀少年」を読んだとき、忍者ハットリくんは知っていたのだが、ナショナルキッドのお面には心当たりがなく、ウィキペディアからYouTubeに至るまで、全面的にウェブ情報のお世話になった。ネットがなかったら、い…

居場所 (20世紀少年 第498回)

近ごろ気になるのが「居場所がない」という言葉である。特に、悩みを抱え込んだ若い世代がテレビでもネットでも、しきりにこの言葉を使っている様子である。そして、かなり深刻な感じがする。 広辞苑の「居場所」は、本来の意味の「いるところ。いばしょ。」…

福音 (20世紀少年 第497回)

第16集の第3話は、「本当の首吊り坂」というタイトルである。これは第8集から第9集にかけて描かれているヴァーチャル・アトラクション内の首吊り坂の事件が、実際は「1970年の嘘」であることに由来している。どんな嘘があったのか見ていこう。「すごいよ、み…

あの人達が見たもの (20世紀少年 第496回)

フクベエとサダキヨは、どうやらいったん懐中電灯を取りに帰り、夜になって犠牲者を見物するため、首吊り坂の屋敷に戻ったらしい。サダキヨも何とか必死に付き合っているのだ。そこへ早速、若い男女の二人連れが入ってきた。 女のほうは幽霊が出るといって怖…

血の大みそか 再考 (20世紀少年 第495回)

気まぐれブログもここに極まれり。今回はずっと昔の話題に戻って、時は2000年12月31日、後に「血の大みそか」と呼ばれることになった世界同時多発テロについて、気になっていたことをもう一度、考えてみる。ケンヂは、あれほどの大爆発の中で、どうして生き…

1970年 (20世紀少年 第494回)

今日は一休みして雑談。古本で買った大阪万博関連の本に、1970年の年表が付録でついている。一部をご紹介します。1月7日、エノケン死去。2月3日、核拡散防止条約の参加を閣議決定。2月11日、国産初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げに成功。大隅半島から打ち…

屋敷の構造 (20世紀少年 第493回)

首吊り坂の屋敷が再登場する。首吊り坂の事件の話題そのものは、すでにちょっと第1集に出てきたが、詳しい話は第8集に登場する。少し復習します。今回はこの屋敷がどういう建物なのかについて、貴重な時間とブログ面を費やす。 第8集の第10話は、その名も「…

坂の上のおばけ屋敷 (20世紀少年 第492回)

第16集の47ページ目。玄関から「ハットリくーん」という呼び声を聞いたフクベエ少年は、「まさか...ケンヂ...?!」と驚いて駆け出している。しかし、勘違いだった。 後日、実際にケンヂが訪れたときに「フクベエ」と呼んでいるところをみると、これまでケンヂ…

鏡よ鏡 (20世紀少年 第491回)

先日、ネット上に面白い意見があった。ろくでもない内容のブログを書くならば、せめてスクロールせずに読める分量にとどめよというものです。一理あります。小欄の拙文などは、長いときなど数回スクロールしないと最後の写真までたどり着かない。 だが、この…

のっぺらぼう  (20世紀少年 第490回)

かって、怪談といえば夏の風物詩であった。テレビでもマンガでも、「怖い話で震え上がれば、少しは涼しくなるはずだ」という根拠の薄い信仰のようなものがあって、扇風機が一台とウチワが数枚しかないような我が家ほか一般家庭において、広く冷房器具として…

中性子爆弾 (20世紀少年 第489回)

前回の話題があまりに暗かったので、今回は気晴らしの雑談です。しばらく前に、映画「12 モンキーズ」と「20世紀少年」を比べてみたのだが、すでに触れたように小松左京の「復活の日」も類似のテーマを扱っている。生物化学兵器として開発されたウィルスが、…