おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ここにも地球を守る男が (20世紀少年 第568回)

 先週末の総選挙は戦後最低の投票率だったらしいですね。しかも、無効票数も戦後最高で、新聞によるとそのうち半分くらいは白紙だったらしい。多くの有権者にとって投票する気力もわかない選挙であったようだ。

 私はこの白紙投票を制度化したらよいというアイデアを持っています。白紙投票は、関係ない人の名前を書いたような無効票とは切り離して、選挙管理委員会がその票数を公式に発表する。

 そして選挙区ごとに(比例代表も含め)、白紙投票数よりも得票が少なかった候補者は全て落選とする(この効果を上げるためには小選挙区を廃し、中選挙区に戻すほうがよい)。国会は定数不足となるがそのまま欠員とし、繰上・補選などは行わない。これで会期中に議事堂で昼寝するような議員も少しは減るのではないか。


 ちなみに、選挙区ごとの一票の格差憲法違反であるという事態が政治問題になっているが、今回の政党ごとの得票数と当選者数の比率の解離はもっとひどい。いわゆる「死に票」だが、まさに死屍累々の有様だ。ひどいはずなのに一部の野党を除き、誰も文句を言わないのは奇怪なことであると思います。

 新聞に一票の格差を指弾する大広告を出している人たちや弁護士グループは、結局みなさん大政党の仲間なのだろう。都合の良い正論は誇らしく主張するが、あとは黙っていて良いのです。まあ、私もそうだもんなあ。さすがは民主主義、なるべくして、こうなっているのか。



 第17集第9話「最果ての歌」。交代に訪れた星巡査は、蝶野巡査長にしばしの付き合いを求めて、持参したチョージャ様からの差し入れ弁当を一緒に食べようと誘っている。地方からは特産品がチョージャにたくさん届くらしい。確かに弁当にはタイの尾頭付きやエビの天ぷらまで入っていて豪勢だ。

 星さんは「自分たちが白い米を食べられるだけでありがたい」と言っているが、すでに私が幼稚園に通っていた1960年代中盤には、地方都市の一般家庭でも白米のご飯は普通に食べていたのに(実家はかなり大麦が混じっていたが)、ともだち暦3年は支配者層でさえ末端では銀シャリも贅沢品になっているらしい。

 星巡査情報によると、村の人はチョージャの土地を借りて農業を営んでいるらしい。みんな小作人なのだ。というりも後の芹沢の言動からして、農奴と呼んだ方が近いかもしれない。それでも脱税なんてとんでもない奴らだと星さんは言う。”ともだち”を信じている。


 蝶野巡査長が手にしていた袋は、彼が支給品から少しずつ蓄えた米なのだそうだ。配給制度まであるらしい。私の子供のころはまだ塩は配給だったし、米も自主流通は禁じられていた。日本に限らないが国家はこういうふうにして生活必需品の流通まで押さえて収奪するのです。

 酒は私の生活必需品だが、高額の酒税が課されている。いつだったか大雑把な計算をしてみたら、酒さえ飲まなければ小さな家が一軒立つほど納税してきた。返して。

 蝶野巡査長の母上といえば、伝説の刑事チョーさんの娘さんで裕美子さんとおっしゃるが、息子によると東京都足立区の病院にいるはずらしい(彼ははっきりと言っていないが、病院勤務ではなく入院中のような感じ)。しかし、ここ1年いろいろ送っても返事さえないらしい。途中で没収されているのか。そうだとしたら米など送ったら絶対に届くまい。


 続く星巡査の話も辛い。彼は3年前に両親を失ったのだという。こんな話題になって思わず「悪い」と謝る蝶野巡査長であった。あのとき星巡査は思ったのだという。二度とこんなことはさせないと。「いつなん時、北から宇宙人が攻めこんで来ようとも、自分が地球を守るっス」と星巡査の誓いは気高く堅固である。信じる相手が間違ってはいるが。

 彼は敵討ちと正義のために、この検問所の警備役を志願してきたのかもしれない。蝶野巡査長は宇宙人か...と覚めている。こういう無気力具合が、芹沢には気に入らないのだろうか。食事も終わっていないし、交代でこれから非番になるはずの蝶野巡査長は、芹沢司令官に「一緒に来い」という業務命令を受けてしまった。


 事案は村に病人が出たという事態である。貧しげな民家の寝床で咳こんでいる老婆がいる。芹沢は感染の疑いがあるため「チョジャ記念病院」(なんじゃ、そりゃ)に搬送するという。子供たちまで怪しいとまで言う。だたの風邪なんだと息子らしい男が老婆を庇い、泣き騒ぐ子供たちを妻らしき女が庇う。

 蝶野巡査長が「どくんだ」と語りかけた男は、「連れて行くなら俺を...」と言いかけたところで、「狼たちの午後」のサルのように、額のど真ん中を芹沢の拳銃に撃ち抜かれた。芹沢いわく「感染拡大幇助罪ならびに公務執行妨害」。三権分立は過去のもののようで、警察官が現行犯で射殺してよいらしい。


 芹沢はもう一発、銃を発射している。絵はないが、家族の「おばあちゃん」という悲鳴からして、老婆も撃たれてしまったらしい。こちらは、どちらの罪も該当しないのに、まるで昔の保健所の野良犬退治のごとし。蝶野巡査長は茫然自失の体。「二体とも処理しておけ」と芹沢。

 蝶野巡査長は後に気を取り直して、襲われた一家を再訪問することになるのだが、おそらくちょうど同じころ、夕暮れの見張り塔で北方を監視していた星巡査は、例の道の彼方から検問所に向かって「何かがやって来る」のを双眼鏡で発見した。彼にとって何かが北からくるとしたら、それは宇宙人であろう。彼の任務は地球を守るという気宇壮大、責任重大なもの。逃げる訳にはいかない。




(この項おわり)



近くの小学校より拝借 (2012年12月16日、投票所にて撮影)



























































.