おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

殺意のありか   (20世紀少年 第303回)

第11巻の73ページ目、物語は2002年の夏に舞台を移す。学校の屋上で出会ったモンちゃんとサダキヨは、日が暮れてから居酒屋風のお店に入った。店の名は「魚心亭」という。本来、魚は、「うお」と読むときは或る種の動物の名であり、「さかな」と読むときは料…

同級生   (20世紀少年 第302回)

モンちゃんは小学生のころ、ケンヂたちと同級生だったのだろうか。ケンヂとオッチョとマルオとヨシツネとユキジは、小学校の5年生と6年生のとき、同じクラスである。 これは、1997年にユキジとケンヂが開催したクラス会、第11巻に出てくる5年生のときの遠足…

私のサッカー史 【日本史編】   (20世紀少年 第301回)

今年(2012年)は日韓大会から10年になる。来年はJリーグ発足から20年になる。寡聞にして知らないが、日本のサッカー関係者は、何かセレモニーを企画しているのだろうか。これまでの貢献者を集めて試合を組んでほしいな。監督はオフトとオシムに任せる。ピク…

私のサッカー史 【世界史編】   (20世紀少年 第300回)

モンちゃんが屋上でサッカーのワールドカップを話題にしてくれたので、せっかくだから今回と次回は、更新300回を記念して連続脱線します。サッカー史といっても、別に私は元サッカー選手ではない。小学校から大学まで、何百回も何千回も草サッカーを楽しんだ…

旧交   (20世紀少年 第299回)

第11巻第4話の「旧交」は、サダキヨとモンちゃんが小学校5年生以来の再会を果たす場面です。不治の病に侵されているモンちゃんは、ユキジが見舞う病院を抜け出してから、しばらく杳として行方が知れなかったが、2002年の夏、当時サダキヨが勤めていた学校に…

人工授精   (20世紀少年 第298回)

万丈目の説得に成功して立ち去ろうとする高須を呼び止めて、万丈目は人工授精の件、すなわち高須が”ともだち”の子を産む計画を進めていいんだなと念を押している。高須の返事は、「ルールを作るのは、あなたでしょ」であり、万丈目の反応は「聖母さま」であ…

1970年の嘘   (20世紀少年 第297回)

第11巻の49ページ目、「許可」を求める高須に対し、万丈目は「お前は気が短い。あれは昔のやり方だ。」とか、今は時代が違う、話のダイナミズムが違うなどと偉そうにしている。だが、高須は粘り腰。「彼ら不穏分子を根絶やしにしておかなくては」と言ってい…

小指   (20世紀少年 第296回)

第10巻の第3話「1970年の嘘」の冒頭数ページは、万丈目と高須という不愉快極まりない人物が登場してきて、しかも陰湿な会話を交わすので読み飛ばしたい箇所なのだが、後へと続く話題が多いので、そうも簡単に無視できないのだ。舞台は永田町にある衆議院第一…

血の大みそか外伝   (20世紀少年 第295回)

ちょっと昔に戻って第5巻の92ページ目、2000年の大みそかの夜に、一番街商店街で二人の若者と別れの挨拶をしたケンヂが、山形にいるはずのカンナを見て驚く場面が出てくる。 そのページの下段左のシーンを反対側から描いた絵が、第11巻の14ページに登場する…

マッチ・ポンプ  (20世紀少年 第294回)

第11巻第1話のタイトルどおり、「絶望の淵」に立たされたカンナは、なぜかゲーム・センターに立ち寄った。3Dのファイティング・ゲームを2台ぶち壊して、対戦相手まで痛めつけている。ただし、ストレスを発散しすぎたようで、彼女はその後、虚脱状態に陥り、…

泣きながら歩く一人ぼっちの夜 (20世紀少年 第293回)

今日から第11巻に入ります。原発事故後、今は亡き忌野清志郎の「ラブ・ミー・テンダー」が話題になった。この曲には、核は要らねえ、放射能は要らねえという歌詞が出てくるため、反原発ソングと評価されたようだ。調べてみると、同曲は発売を拒否されたらし…

覚醒   (20世紀少年 第292回)

私のような日本の中高年の男たちには、古い話題であろうと若い連中も付き合うべきであり、昔のことを知らないのは若い連中の責任であり、その場合、こちらは好きなだけ薀蓄を垂れても良いと信じて疑わない者が無数にいて、全国で多大なるご迷惑をお掛けして…

ゆりげらあ   (20世紀少年 第291回)

第10巻第11話の「雷鳴」は、冒頭に2000年のケンヂとカンナのエピソードが挟み込まれている。サダキヨとコイズミの騒動から、カンナと校長の話に切り替わるつなぎの部分なのだが、この構成が抜群に上手い。 お尋ね者のケンヂは、3歳のカンナを連れて、大胆に…

顔のある少年   (20世紀少年 第290回)

第10巻の第10話は「顔のある少年」。再び車中の人となったサダキヨとコイズミだが、どこに行くつもりだったのだろう。サダキヨの罪は器物損壊程度では済まず、もはや政治犯であろう。地下に潜伏するほかあるまい。でもコイズミはどうする? 自宅と学校がある…

いじめ   (20世紀少年 第289回)

第10巻第10話の「顔のある少年」は、関口先生がサダキヨに出した心のこもった年賀状の絵から始まる。昭和四十八年とあるから、サダキヨは中学生だ。ところが、コイズミ相手のサダキヨのおしゃべりは、「中学の時、僕は死んだ」という冴えない表現から始まっ…

そんなの友達じゃないと思うんだけど...  (20世紀少年 第288回)

前回、話題にしたサダキヨの思い出話は、サダキヨがコイズミと共に、”ともだち”の部屋の中で、また、そのあとで廊下を歩きながら交わされたものだ。そんなにのんびりしている場合ではないと思うのだが、こういうタイプの人は、一旦、話し出したら止まらない…

顔のない少年   (20世紀少年 第287回)

第10巻の終盤は、コイズミという聴き手を得たサダキヨの思い出話が延々と続く。孤独な少年時代の回想なので、話がどうしても暗くなるのは仕方がないのだが、まずまずのハッピーエンドで終わるので付き合おう。第9話「顔のない少年」に、関口先生が久々の登場…

アーメン ソーメン ヒヤソーメン (20世紀少年 第286回)

「20世紀少年」を読んで驚いたことに、「アーメン ソーメン ヒヤソーメン」という呪文(?)は、1960年代に私や私のご学友どもが勝手に作って使っていたものではなく、サダキヨも知っていたのだ。ネットで調べてみたら、少なからずの人が使っていたらしい。…

写真   (20世紀少年 第285回)

第10巻の141ページ目で「奴ら」、つまりドリームナビゲーターの襲来を察知したサダキヨは、迅速な行動に出る。ただし、適切な行動かどうかは疑問で、連中がどんな薬をまくかわからないという理由により、雨戸を閉め始めた。へっぴり腰で役に立っていないコイ…

サダキヨの離反    (20世紀少年 第284回)

サダキヨの人生最大の疑問は、自分が「いい者」なのか「悪者」なのかという難題であった。このハムレット的な自問自答は、遅くとも2002年にモンちゃんを撲殺したときには始まっており、ともだち暦3年まで延々と続く。山根はキリコにより蒙を開かれたのだが、…

巨大地震から一年 

東日本大震災が発生してから1年が経ちました。昨年は南三陸町に行った。これからも年に一度ぐらいは、被災した地域を訪れようと考えている。 私は「がんばろう東北」というスローガンは、東北にいるときだけ言ってほしいと思っている。被災したのは東北だけ…

コレクション  (20世紀少年 第283回)

第10巻第6話のタイトルは「コレクター」。”ともだち”には、収集癖があるのだ。今でいうオタクの走りと呼んでよかろう。コイズミが見て回るコレクションは、膨大な点数を誇る。これがある程度の誇張を含んでいたとしても、やはり第16巻に出てくるマンガの数は…

ともだちの家  (20世紀少年 第282回)

数年前に心理学の基礎を独学していたころ、認知行動療法の専門家から、一対一で若干の手ほどきを受けたことがある。そのとき教えていただいた療法の一つに、今でもよく使っている気分転換の方法がある。実に簡単です。自分の記憶の中から、その場面を思い出…

雨を見たかい   (20世紀少年 第281回)

記憶では、グアムに3回、旅行したことがある。南の島で泳いだり、釣りをしたりして過ごすのが何より好きなのです。いずれも多忙な勤め人時代のことで、まとまった休みが取れるのは暮れ正月と夏季休暇だけ。ほとんどは年末年始に帰省し、夏休みに旅行していた…

ハーフ・タイム    (20世紀少年 第280回 余談)

映画「グラン・トリノ」は私の好きな作品の一つです。元フォード社の機械工で、頑固にして勇敢な老人をクリント・イーストウッドが演じているのだが、先月(2012年2月)、彼は商売敵のクライスラー社のテレビCMに出た。それはスーパー・ボウルのハーフ・タイ…

車     (20世紀少年 第279回)

私事ばかりだか、私は車に興味がない。われわれの世代の男の若いころといえば、車を持つというのは大人になったということと同義に近く、また、女を口説くのに不可欠の持ち物であると、広く固く信じられていた。しかし、私は同じ理系でも「機械派」ではなく…

氷の人形   (20世紀少年 第278回)  

第9巻の巻末に載っているビッグ・コミック・スピリッツの宣伝文句に、「カンナ戦闘開始 二人の少女の運命は?」とあって、カジノでまだまだ乗り切っていないカンナの不満げな顔と、「この世のものとは思えない、恐ろしい何かを」見た直後の、憔悴したコイズ…

新しい先生  (20世紀少年 第277回)

第10巻の第4話「新しい先生」に、サダキヨ先生が出てくる。素敵な後任を期待していたトモコさんには「ダメだ、全っ然、さえないわ」と言われるし、恐喝されて(ここまでくると強盗か)倒れている少年を見て涙を流しては「見てたのに止めてくれなかったの?先…

ただいまと誰もいない部屋に言ってみる (20世紀少年 第276回)

ほとんどの人間は、泥棒や人殺しをしない。それは何故かと議論したら、いろいろな意見が出そうだが、私見では多くの場合、凶悪な犯罪をしてしまったら最後、後悔や自己嫌悪に生涯のたうち回ることが分かっているので、怖くて出来ないからだと思う。 物覚えが…

すごく悪い子   (20世紀少年 第275回)

第10巻の第3話「監視」は、カンナを観察し始めたコイズミが、高須に監視されていたというお話。相変わらず、グルグルうずまきのお面や高須が出てくる悪夢にうなされるコイズミ、飛び起きて時計を見て「やばっ、遅刻」と叫んでいるが、これはカンナも言ってい…