おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

遣米使  (第1065回)

 いつの日か慰霊のため、伯父が戦死したテニアン島に行くのだと書いたが、ようやく時間とお金の工面もできて、来年の1月に参ることになりました。このテニアンほか、近くのサイパンやロタといった島々からなる北マリアナ連邦は、アメリカ合衆国の「自治領」と訳されている。

 隣のグアムはアメリカの領土(準州というらしい)であり、島民はアメリカ人で、郵便番号にあたるグアムのZIPコードは、カリフォルニア州の系統に組み込まれている。だが、北マリアナ連邦は、米国領ではない。自治は認められているが、軍事・外交の権限は米国に取り上げられている。植民地にもいろいろあるな。伯父が死んでから、ずっとこうだ。


 それと比べれば日本は、まだしも外交権はあり、軍事は訳が分からないが、ともあれ独立国と認められてきた。他方で、アメリカの属国だといった趣旨の主張は、私が若いころからあった。背景には安保の影響が大きかったと思うが、バブル景気のころ「腐ってもアメリカ」などとほざく日本人が増殖して、その後、衰退した。それでも属国は言い過ぎだと思っておりました。

 今年、2016年10月27日、国連の委員会で「核兵器禁止条約」の賛否を問われ、日本は反対票を投じた。あの中国ですら棄権したのだが。わたしはここで、ずっと日本は唯一の戦略核被爆国であり、さらに人類史に残る原発事故を招いたまま収拾がついていない以上、ひたすら核兵器は廃絶すべきだと主張する権利はもちろん、義務もあると何度も書いてきた。


 それをあっさり、両方とも放棄した。せっかく私が別のサイトで、日本の外交はけっこう頑張っていると書いたのに、現職の外務大臣は広島の選出である。終わりましたね。地に堕ちました。やっぱり、私の遠吠えなんて、どこにも届かない。テニアン島には、原爆を載せたB29が離陸した飛行場や、その史跡があるそうだ。何て報告すればよいのだ。

 広島には、オバマ大統領が来てくれたばかりだった。そのオバマさんは、まだ現役のアメリカ大統領なのだが、その敵対政党が選んだ大統領予定者のご自宅に、臨時の参勤交代で伺わせてもらったのが、うちのアビー首相である。現職の大統領に対し、すさまじい非礼であろう。逆の立場になったらどう感じるかと、だれも考えなかったのか。


 きっと世界中から嘲笑を買っていると思う。私が外国人なら嗤う。特に核の傘の外で、雨にうたれているならば。これでは米国民主党も、共和党の反トランプ側も、みんな敵に回したようなものではないか。いやもう、相手にもしてもらえないかもしれない。

 でも、属国なら仕方がないと、ようやくこれで納得したよ。現憲法は「GHQに押し付けられた」と毎日のように言っているが、良く知られているように、まだGHQの陣容が整わないうちに立憲は進んだ。つまり、ほとんどアメリカ産だから、このたび運よく改正される暁には、またアメリカ好みのものにしないと、叱られるから注意しないといけない。


 思えば、トランプんところのドナルドが、大統領さ選ばれてから、政官財や大手報道機関の慌てぶりと大騒ぎは、大変なものだった。ほとんどの日本国民は、4年に一度の祭典が終わり、日常生活に戻ったというのに、TPPやら駆け付け警護やら東証株価やら、これが祖国か。認識が甘かった。本当に、こんなに弱い国だったんだ。

 すでに沖縄では、実質的な治外法権がまかり通っている。TPPで関税自主権も放り出す。あとは、小政奉還して、古き良き時代に戻るのだな。このサイトで、ロックだフォークだ、アニメだマンガだ、映画だネットだと書いてきたが、みんなアメリカからの舶来品だもんね。今回は文明開化も円滑にいくだろう。前回はそのあと軍事国家になり、日清戦争だった。


 世界で一番早く、はせ参じた甲斐あってか、友達になったと報道されている。近ごろ麗しいニュースであり、いと目出度し。私がアメリカに駐在していた約5年間は、上記のバブル景気とぴったり重なる。インターネットも衛星放送もなく、毎日、現地のTVや新聞でニュースを眺めていたが、記憶の限り、日本国が話題になったのは昭和天皇崩御だけだ。

 当時から、すでにそんな調子だったのだから、今は惨憺たるものだろう。でも、この国、好きなのだ。支持率が上がっているようだが、いずれ天はバベルの塔を滅ぼすだろう。よげん。






(おわり)






スパイダーさん





 God say, “You can do what you want Abe, but
 The next time you see me comin’ you better run”

   ”Highway 61 Revisited”  Bob Dylan



 主はおっしゃられた
 好きにせよ、Abe、ただし
 次に私の姿を見かけたら
 逃げた方が身のためである

    「追憶のハイウェイ61」 ボブ・ディラン








近ごろ楽しみといえば日の出ぐらいだ
(2016年11月4日撮影)