おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

平和のうた 【前半】  (第1051回)

 時は巡りまた夏が来て、広島と長崎では平和の式典が行われました。せめてこの季節だけでも、平和な時代に生まれ育ったことの幸運さについて、思いをはせると毎年書いている。それに、いつまでも平和かどうか、最近、怪しくなってきた。

 内憂外患という言葉がある。内憂が激化したとき、権力者は民衆の目をそらすべく、外患を誇張してしのごうとする。どうも最近の近所の国々は、この内憂が緊急事態になっていはしまいかと心配だ。特に食糧や水の問題。情報統制のお国柄なので、実態は把握すべくもないが、要らぬ喧嘩を売って他に何の利益があろうか。


 リオデジャネイロのオリンピック、日本勢、頑張ってますね。若いころは俺だってやればできると傲慢に観戦していたものだが、今ではすっかり心を改め、凄い凄いと感心しながら観ている。あれを平和の祭典と呼ぶのは、古代ギリシャでの開催期間中、停戦するからだと聞いて育った。

 ただし、諸説あるそうで、戦闘よりもオリンピックのほうが国威発揚に有効だった、全国から選手が集まるにあたり交通安全が必要だった、最前線から戦士が抜けてしまうので、それを奇禍としてたまには休みたかった等々。おそらく、どれも正解ではなかろうか。


 3年ほど前、現在、政府内で要職についておられるA君(仮名)が、「あの手口、学んだらどうかね」と、ナチスが政権を強奪したときの話題を出し、あまりに非常識との攻撃を受けて、発言を取り消さざるを得なくなった。

 私にとっての問題は、その箇所の前にA君が、今の五十代、六十代(つまり、私の世代)は、「足りない」「一番頼りない」という辛い評価をしている点だ。なお、このお喋りはさすがに国会の場ではなく、身内の勉強会みたいなものだったようで、この世代論もナチスのマネ論も、笑いをとっている。

 田中角栄が言ったそうだが、「戦争を知っているやつが世の中の中心である限り、日本は安全だ。戦争を知らないやつが出てきて、日本の中核になったとき、怖いなあ。」「しかし、勉強してもらえばいいやな。」ということだ。戦争を知らない子供たち、勉強、続けてます? 


 A君も「ここに一番多い」と言い添えているように、政治家もこの年代が多くて、最近発足した内閣の主要閣僚や党の幹部にも、五十代・六十代が多い。なにより、総理大臣がそのど真ん中のご年齢であり、それが一番頼りないとは困った事態ではないか。

 確かに私の子や甥姪の世代は、バブル景気のあとに生まれ、これは与党の責任も重大だと思うのだけれど、極論すれば経済の停滞と領土問題という、内憂外患の時代しか知らない。

 それに比べて私たちの年代は、高度経済成長期に生まれ育ち、二十代後半という青年期の最後にバブルで狂乱した。でも、順風満帆の時代がここまで見事に先行して、そのあとスランプ続きというのも辛いものがあります。


 漫画「20世紀少年」に関する古い書き込みなどを読んでいると、建前上は政教分離で、最大政党と連立しているという類似点から、”ともだち”と友民党は、何とか学会がモデルではないかというのが少なくない。こういう現実とゴッチャにされては、作者もモデルにされたほうも、たまったものではない。むしろ、それこそナチスに似ている。

 総統が独裁者になったのは、民主主義的手法だけではない。共産党員を片っ端から逮捕して、結果的に議会での比較優位を確保している。そして、今なお真相は不明であるが、また、漫画でも同じく下手人は明確ではないが、国会議事堂が放火されている。犯人は共産党員とされた。ユダヤ人や障害者への苛烈な迫害が始まる。A君のいう「あの手口」を詳しく聴きたいものである。


 先日、久しぶりに映画「20世紀少年」の第二章を見ていた時、勘違いしてきたかなあと思う場面があった。カンナが蝶野刑事に、ケンヂおじちゃんの歌を聴かせているシーンである。あの歌は、誰に向けて作られ、歌われたのか。表向きの歌詞は、「君」が相手だから、不特定多数の聴き手が想定されており、実際、誰もが自分に向けた歌だと受け止めている。”ともだち”さえ、最後のリクエストにしたのだ。

 ただし、歌手の本心が違うところにあるという可能性は、この手の歌には常にある。私の場合、最初はみんなに向けた歌だと単純に信じていたのだが、漫画で彼は、分かる奴だけに分かればよいとオッチョに語っており、時勢が時勢だけに屈折がある。さらに、形のうえではラブ・ソング的なのだ。

 気の長い話だが、50年後も君と一緒にいるだろうと歌っている。だから、二三回、通読したあとで、この「君」はユキジのことではないかと、これまた単純に考えた。でも、映画の制作者たちは、違う解釈を示している。長くなったので、前半はここで終わります。




(つづく)




夏と言えばセミ
(2016年8月3日撮影)








 Tearing my body all apart...

 Tearing my family apart...

  ”Machine Gun”  Jimi Hendrix, 1970








































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