おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

老夫婦にワクチンはひとつ (20世紀少年 第395回)

第13巻の180ページ目。ポップ夫人の回想によれば、去年の最初の雪が降ったころ、夫妻は森の中で行き倒れになっているキリコを見つけて救出したらしい。2014年の初冬か。ちょうどカンナが鳴浜町の病院で、母が残したメモを読んでいたのと同じ頃だろう。目覚め…

風が吹くとき (20世紀少年 第394回)

第13巻の176ページは、自動車運転中のポップ老人がカー・ラジオを聴いているシーンです。この報道内容に気になる点があるのだが、それは後日また触れるとして、ニュースの最後、「政府は冷静に対応するよう呼びかけています」と流れて、ポップさんは「冷静に…

ベルリンの壁 (20世紀少年 第393回)

もはや歴史の用語になってしまったが、冷戦という言葉が嫌いである。アメリカとソ連、加えて西欧諸国や中国が、西側の資本主義陣営と東側の共産主義陣営に分かれ、しかしながら戦火を交えることなく対立を続けたから「冷たい戦争」と呼ぶらしいが要するに白…

子供相手に人の道 人生などを説く男 (20世紀少年 第392回)

第13巻の第10話は「ドイツの静かな町」という題名。その舞台は「ハイマートリヒト、ドイツ、2015年」とある。地理が好きなので、この作品に限らず知らない地名が出てくると、地図などで調べずにはいられないという厄介な性分です。ハイマートリヒトも調べた…

地球を救うカエル (20世紀少年 第391回)

第13巻の163ページ目。ダニー少年の話は、まだ終わっていない。「父さんが死ぬ前に言ってた」と彼は続けた。父親は死に際に息子に向かって、町がこんなことになったのは、お前が悪魔の女に体を売ったからだという暴言を吐いたらしい。少年はそのことで今も苦…

Strange Woman  (20世紀少年 第390回)

ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」は変な人という意味ではなくて(私は最初、そう思っていた)、よそ者という意味です。アメリカでは、見ず知らずの人に道を教えてくれなどと声を掛けられても「断れ」と教わった。近付くや否や、強盗やひったくりに変身…

21世紀ほうき少年   (20世紀少年 第389回)

のちに出てくる回想シーンにおいて、父親は少年をダニーと呼んでいる。ダニエル君かな。ダニー少年が「払わないと、父さんみたいになっちゃう」と言いながら、ケロヨンにソバの代金を渡そうとしたのは、彼の父が何でもツケにするのに、結局、払わないからだ…

宇宙人? (20世紀少年 第388回)

第13巻の143ページ。トラックの屋根には拡声器が設置されていて、ケロヨン店長はさっそく宣伝用の放送を始めた。もっとボリュームを上げろと、やる気満々である。しかし、イントロが「ゲロゲーロ♬」では、腹が減っていても食べに来る気がしないのではなかろ…

カエル親子の会話より   (20世紀少年 第387回)

今日も余談から入ります。第7巻の86ページ目に出てくる「テロリスト集団”ケンヂ一派」の合成写真の下に、「国際法上禁じられた毒ガス」という、教科書の一節を読み取ることができる。第11巻の148ページ目に出てくる「モンちゃんメモ」には、「細菌兵器研究」…

蛙帝国の逆襲  (20世紀少年 第386回)

これまでは本ブログの各回の題名を考えるにあたり、漫画の各話のタイトルと同じ名をつけるのも芸がないと思い、何かと工夫をしては違う題にしてきた。だが、今回ばかりはそのような小細工など、不要でもあり邪魔ですらあろう。第13巻の第8話と第9話のタイト…

新巻鮭の男  (20世紀少年 第385回)

先日、東京湾岸にある葛西の水族館から、フンボルトペンギンの少年が脱走し、何十日後かに岸辺でのんびりしているところを捕まって戻された。ペンギンは飼育数が多いので、各個体は海ほたる刑務所と同じく番号で呼ばれているらしいのだが、水族館ではこの快…

防毒マスクの男  (20世紀少年 第384回)

今回も、どうでもよい話題から入ります。第7巻の最後で、トラックに乗り込んだケンヂとオッチョとマルオの3人は、「米軍払下げのボロボロ」の「対細菌用の防護服」を着込んでいる。ウェット・スーツのような全身装着型である。細菌兵器が、どこからどのよう…

石狩鍋の夜  (20世紀少年 第383回)

第13巻に出てくる北海道の室別という地名は、ネット地図で検索した限り出てこないので、架空のものであろうか。「室」は室蘭から取ったか、「別」は登別温泉か、紋別か。特に、「別」の字が入ると、いかにも北海道らしい地名になる。アイヌの言葉で川を意味…

暴力装置  (20世紀少年 第382回)

第13巻の後半で、「終わりの始まり」が日本とアメリカとドイツで始まる。日本では先ず世田谷と北海道の室別という地で発生した。最初の目撃者の一人になったコイズミの活躍の前半部分は、あまり具体的に描かれていないので、勝手に補足します。 彼女が世田谷…

修羅場どころか (20世紀少年 第381回)

トモコさんとコイズミが鉄道沿線を歩いている。メゾン・アナスタンが世田谷にあることは後にニュースで報じられているので、これは京王線か世田谷線か。東大久保から歩いてくるのは、ちょっときつい。写メールに水着の女(どう見てもポスターだよ、トモコさ…

粛清か? (20世紀少年 第380回)

このブログでは、せっかくの機会なので難しい言葉とか、歴史に残るような出来事が話題になるときは、辞書やネットで念のため調べてみることが多いです。何十年も勉強や仕事や読書をしてきたのに、案外、言葉の意味、出来事の内容をいい加減に解釈しているこ…

一刻館   (20世紀少年 第379回)

第13巻の第7話は「終わりの始まり」という、いかにも「20世紀少年」らしい題名がついている。この作品が嚆矢なのかどうか知らないが、最近、良く見かけるようになったレトリックである(昔は無かったと思う)。ここでは何の「終わり」かというと、まず、「西…

ここでは演歌禁止なんです (20世紀少年 第378回)

第13巻の108ページ目。春さんはマルオを伴い、ヨシツネとカンナを自宅地下のスタジオに案内した。そこは、先ほどまで複雑な表情を浮かべていたカンナも目を丸くして驚くほどの広い部屋。音響装置にドラムのセット。 春さんは「ここでレコーディングもできま…

警鐘のはじまり (20世紀少年 第377回)

少し先に戻って第13巻第5話の終わり。オッチョがカンナに、山根から聴いた話を伝え終わったところ。カンナは今にも泣き出しそうな顔をしている。ついさっき、「母さんは人殺しなの」と叫んだばかり。しかし、オッチョおじさんの話は、それを完全に否定するも…

あのバカバンド   (20世紀少年 第376回)

ブルース・スプリングスティーンの「No Surrender」という如何にも彼らしい曲の歌詞は、大意こんな感じで始まる。「俺達は学校から飛び出した さっさとあの間抜けどもから逃げなくちゃいけない 教室での授業より勉強になったのは 3分間のレコードだった」。 …

富士山に月見草は似合わない  (20世紀少年 第375回)

第13巻には、せっかく最初で最後の富士山が出てくる場面があるので、もう1回、富士山関係で脱線します。太宰治が好きな人は読まないでください。私はこの男が嫌いなのだ。 小学校のときに読んだ「走れメロス」は良いと思った。しかし周知のとおり、これは彼…

選ばれた1%  (20世紀少年 第374回)

前回に続く。キリコと山根の会話の後半が、どうも私には分かりづらい。第13巻の89ページ、山根にワクチンを作れと督促されたキリコは、そっぽを向いたまま「もし、つくれなかったら...」とつぶやいて、「なんだい弱気だな、君らしくもない」と山根の苦笑いを…

人類を滅亡させる気  (20世紀少年 第373回)

キリコのマフラーが素敵である。私が子供のころの田舎なら格子縞の襟巻と呼んだだろうが、今ではタートル・ネックのマフラーと言わなければ通じまい。若い人はぜひとも長生きして、こういう不便を分かち合ってほしい。2003年の寒い季節、キリコは富士山麓に…

貞観  (20世紀少年 第372回)

第13巻の第5話は「2003年の告白」。開幕のページに富士山が描かれている。その裾野に大福堂製薬の大きな建物がある。どの方角から見たものだろうか。私が生まれた静岡市からは、間に山があるので、こんなに大きく見えない。 東海道線でいうと新富士駅あたり…

君論 (20世紀少年 第371回)

きみ論。「君」という日本語について考えてみようと思い立ったが吉日、どうせ何でもありの感想文だ。きっかけは、第13巻の76ページで、カンナに「おまえ」はここにいるんだと命じたオッチョが、95ページ目で別れるときには、「君」はここで母さんを待てと語…

カンナ8号線 (20世紀少年 第370回)

今回のタイトルは、本文と全く関係ありません。遠藤カンナの名は、かつて、神無月生まれ(旧暦十月)だからではないかとの奇説を立てたこともあったが、普通に考えれば、花のカンナに由来するものだろう。「カンナ8号線」は、キリコやフクベエや私が若かった…

シンクロニシティ (20世紀少年 第369回)

第13巻第4話のタイトル「再会の時」とは、漫画家角田氏とウジコウジオ両氏の再会場面です。第4話の冒頭では、例の市原弁護士が公園のベンチで、新聞を読みながら文句を垂れている。報道内容自体は、海ほたる刑務所を含む重刑務所に収容されていた思想家、作…

会議は踊る (20世紀少年 第368回)

円卓の中央に巨大な”ともだち”マークが描かれている。「で、どうする、万丈目さん」と会議の口火を切ったのは、小向幹事長であった。続いて参加者による現状確認。万博と法王来日。他方で、世界に広がる追悼モード。開催延期論も出ている。ヤマさんが、「万…

円卓 (20世紀少年 第367回)

第13巻の第3話は「円卓の会議」というタイトル。友民党の本部会議室らしき場所で同党の幹部が集まって緊急会合を開催する場面である。 冒頭で久々に登場の二人、長髪の人殺しと敷島教授の娘が、きつい皮肉や当てこすりの応酬をしている。どうやら、もはや男…

聖霊とともに (20世紀少年 第366回)

6月に入りました。今日は理屈っぽい脱線です。キリスト教を誹謗中傷するつもりは全くないけれど、念のため信者のかたは、ご不快な思いをされるかもしれないので、お読みにならないでください。第13巻の43ページ目から、”ともだち”の死を悼んで、国連が半旗を…