これまでは本ブログの各回の題名を考えるにあたり、漫画の各話のタイトルと同じ名をつけるのも芸がないと思い、何かと工夫をしては違う題にしてきた。だが、今回ばかりはそのような小細工など、不要でもあり邪魔ですらあろう。第13巻の第8話と第9話のタイトルは、「蛙帝国の逆襲」。また一人、秘密基地の仲間が戻ってくる。
蛙帝国の初出は実に古い。第1巻の第2話、1968年だから、まだ小学3年生。忍者隊長のケンヂが、蛙帝国を率いるケロヨン少年に、銀玉鉄砲で射殺される場面が登場する。もっとも、「蛙帝国の逆襲」というセリフはこのシーンにはなく、第17巻の135ページ目に出てくる。ケンヂの「正義は死なないのだ」に対する、ケロヨンの宣戦布告であった。
かつて書いたような気もするが(小欄も、もう長いので記憶が定かでない)、学生時代に映画好きの友人と、よく映画を一緒に観に行ったり、かつて観た映画の感想を語り合ったものだが、その彼が言うには、「スター・ウォーズ」のシリーズの優れた点は、ロボットやロケットが中古品だったり未完成品だったりで、その点これまでのSF映画にはないリアリティーがあるのだという。
確かに、デス・スターは工事中だったし、R2D2もC3POも設定上、当然だが古いロボットだったし、ハン・ソロ船長の恒星間連絡船ファルコン号もセコハンであった(死語かな。英語で「中古」は、セカンド・ハンドという洒落た言い方をする。それをセコハンと訳した先人も負けていない)。ファルコンは隼の意。小惑星探査機「はやぶさ」の大先輩にあたる。
ただし、その類の「リアリティー」は最初に作られたエピソード4から6までのシリーズにおいて顕著だったが、後年のエピソード1から3までは、昔の「2001年宇宙の旅」や「宇宙家族ロビンソン」のような、全てが新品というキンキラキンの世界に戻ってしまった観がある。
さて、第2作にあたるエピソード5は、今一つの内容だったと思うが(失礼)、タイトルには「The Empire Strikes Back」という実に歯切れの良い副題がついている。本邦公開にあたり、配給会社は「帝国の逆襲」と訳した。素直な直訳で問題ないが平凡な感じになったな。浦沢さんや私が大学生のころで、無論、前作に引き続き大ヒットした。「蛙帝国の逆襲」は、これを借用したのだと思う。
物語の舞台は米国のニューメキシコ州。同州へは、サンフランシスコに住んでいた頃に小旅行に出かけたことがある。宮沢りえちゃんの薄着の写真集ですっかり有名になった州都サンタフェや、アルバカーキの古い街並みを見て回った。印象としてはロッキーの山々に囲まれた穏やかな砂漠がちの広大な土地。原子爆弾を開発したロスアラモスの研究所があることで名高い。
この施設において実行された「マンハッタン計画」により製造された原爆が広島と長崎に落ちた。同計画に参加したノーベル物理学賞受賞者のR.P.ファインマンは、著書の「ご冗談でしょう、ファインマンさん」に、このときの様子を書き残しているが、ほとんど我が敷島教授と同じで、反省とか後悔というものが全く見受けられないのはどうしたことか。
また話がそれた。第8話は灼熱の太陽と、置き捨てられた大きなスコップの絵、そして、「もう動けないよ。おなかすいたよ。あれから何日、何も食べてないかな」という独白で始まる。口元が乾ききった少年が地面に倒れている。「僕、死んじゃうのかな」と彼は心の中でつぶやいている。
このまま誰も通りかからなければ、彼の懸念どおりになってしまったかもしれない。だが、タイミングのよいことに、奇怪な外装のトラックが砂漠の道を走り抜けて、少年の町に辿りつかんとしていた。
車体に書き込まれた商品名は(店名かな?)、「FROG'S JAPANESE SOBA」。田舎のアメリカ人が「SOBA」を知っているかなあ...? ジャパニーズ以外にソバがあるかなー。ケロッグなら有名だが、フロッグで食欲が湧くだろうか。心配の種は尽きないがともあれ、おかえり、ケロヨン。ストライク・バックの好機到来である。
(この稿おわり)
シュレーゲルアオガエル(2012年5月4日、岐阜県、美束にて撮影)