おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

クラス会、始まる    (20世紀少年 第92回)

 第3巻のクラス会については、6月14日の第3回と第4回で一部、触れました。今回以降は、それ以外の話題を選びます。

 クラス会の案内状の宛先を調べたのは、第2巻に出て来るようにユキジである。ユキジはフクベエの住所を調べ得たのだろうか。彼の実家は、第2巻に出て来るチョーさんの捜査結果によれば、今や倉庫となっており、隣の弁当屋のおばちゃんによると、15年くらい前に転居した様子である。

 幹事には最初に住所が分からなかった同級生が、クラス会に来るのは珍しいことではない。他の誰かが知っていれば情報は広がる。では、このクラス会に来た顔ぶれの中に、フクベエの現在の知人がいるのだろうか。のちの友民党の首脳の顔付きなどと比べてみると、似た感じの人もいるが何とも言えない。


 はっきり言えるのは、すでにこのころ、ともだち一派はケンヂやユキジの動向を、しっかりと把握しているはずだということです。このクラス会の夜、ユキジとケンジは成田空港で万丈目と初めて会うのだが(もっとも、小学生のころ道端で会っていたかもしれない)、万丈目は二人の顔と下の名前を知っていて、ユキジを驚かせている。

 ユキジの場合、情報源は彼女の直属の上司かもしれない。ケンヂはすでに、第169回ともだちコンサートに乱入して、ともだちと会話を交わし、あらかた知っていることを喋っているので、当然その後、監視下に置かれているはずである。フクベエたちが、この二人がクラス会を企画していることを嗅ぎつけたとしてもおかしくはない。


 それどころか、この日に至るまでの彼ら、ともだち一党の忙しさは、半端ではなかったであろう。万丈目は海外にいて、おそらく何か怪しげなビジネスをしていたに違いない。フクベエは偽装自宅の準備をしている。若い連中は同夜、ケンヂの店からカンナを奪う計画だったし、羽田空港の爆破テロもこの夜に起したのだ。

 いわば暴力的活動の旗揚げの日である。そんな日に、頭領の”ともだち”が割烹のクラス会に出て、酒を呑んでいて良いのかと思うのだが、それほどケンヂとの接触が重要だったのだろう。宴席でケンヂの肩をたたき、ともだちや秘密基地やカミさんの話をし、酔い潰れたふりをして、自宅と称する家にまで連れて行った。すべて行動計画どおりであろう。


 今の私には、分からないことがたくさんある。例えば、「よげんの書」は、2000年のおおみそかの出来事に触れているが、それ以前の幾つかの事件に西暦は記されていない。そのうち前半は1997年に起き、後半が2000年に起きているのだが、この間の空白期間は何を意味するのだろう。

 このクラス会でフクベエがケンヂに対して取った一連の行動は、2000年に正義の味方の9人が立ちあがるときに、自分も呼ばせるためと考えるのが、もっとも適当だと思う。なぜ呼ばせる必要があったかは、後に2000年のところで考える。それにしても1997年という、3年も前のクラス会での下ごしらえは、ちょっと早すぎるような気もする。


 むしろ、こう考えた方が良いか。コンサートでの騒動により、ともだち側はケンヂが逃亡者から真相を聞かされ、ドンキーの死因も含めて、知り過ぎた、早すぎる、と思ったか。2000年まで待ってもらわなくては困るのだ。

 そのためには、彼の行動の自由を奪うため自宅を焼き、ともだちの正体はサダキヨと思わせておいて、自分たちはその間、巨大ロボットとウィルスの開発や政界進出に集中する、かな? 悪人の考えることは、よう分からん。

 ともあれ、第3巻の94ページ、幸いケンヂは自分の肩をたたいた男を、フクベエと認識してくれた。うれしくてビールの一杯も注ぎたくもなろう。しかし用件を切り出すのは迅速であった。フクベエは「おまえか、オッチョ、どっちかに話をしたかったんだ」と語り始める。ケンヂはクラス会どころではなくなってしまった。


(この稿おわり)



千鳥ヶ淵。これまでは花見に行ったことがあっただけですが、この夏はお参りに行きました。
今年は、そういう気にさせる何かがある。(2011年8月16日撮影)