第12巻で山根に銃殺された”ともだち”と、「21世紀少年」の上巻で落ちてきた円盤に潰された”ともだち”は、お互い、そっくりの顔をしている。前者はオッチョが、後者はマルオがその顔を確認しているが、前者が死んだことを知っているマルオが驚くほどに似ている。
2人の人間が瓜二つのごとく似ている場合、その理由として考え得るのは、(1)マルオが疑ったように、整形手術、(2)双子か、年齢がごく近い兄弟、(3)究極の他人の空似。
第20巻のキリコの証言では声までそっくりだそうだ。謎解きモノに、双子とか、他人の空似を出すのは禁じ手だと思うが、どうだろうか(でも、刑事コロンボには双子の犯人がいたなあ)。
二人目の”ともだち”は、終盤で描かれているように、ケンヂの嘘で悪者にされてしまった過去を持つ。現場に居合わせたフクベエによれば(嘘つきなので、証言としては弱いが)、同じ学年の5年4組らしい。いつもナショナル・キッドのお面をかぶっているので顔が分からないが、この少年とフクベエの会話は、双子のものとは思えない。
ということで、声まで似ているというのが若干、気になるが、当面、整形手術をしたと考えておきます。では、何時、何故したのか。ともだちサークルの初期、キリコによればフクベエは同い年くらいの相手と、よく電話で話していたらしい。サダキヨか二人目だろう。
第19巻の160ページで、長髪の優男が、ともだちに諸星さんの殺害を命じられているが、ともだちマスクをかぶっている”ともだち”に対して、「あなた、こないだの人と同じ人?」と尋ねている。ともだちが「どういうこと?」と問い返すと、「誰でもいいや。どっちにしろ、”ともだち”だもん。」という、なかなか印象的な会話である。
諸星さんの死は1994年のことだから、すでにその頃には、ともだちは何らかの理由で「二人一役」を始めていたのではないか。「お面をかぶっていたなら、誰だか変わらない」というのが、この漫画の一つの仕掛けなのだが、お面をかぶっていると、似ているかどうかも分からないのは困ったな。
ともあれ、1997年の6年3組のクラス会において、出席したフクベエは自分でそう名乗っているだけで(正確に言えば、名乗ってすらいない。ケンヂにそう呼ばれて否定していないだけ)、かつての服部少年かどうかまで明確ではない。
1980年に万丈目を訪れたハットリと確かに似ているが、整形手術をすでにしているのであれば(双子でも空似でも、この点は同じだが)、二人目であってもおかしくない。
この両者の区別がつくのは、フクベエの肉親たるキリコとカンナなのだが、クラス会からキリコは血のおおみそかまでのフクベエと接触していない。カンナはまだ幼児で、ようやく2000年に3歳になり、地下でこのフクベエと会っていると思うのだが、そのシーンは描かれてはいない。
だから、推測して楽しむほかない。では、クラス会の場面に戻ろう。クラス会の話題の間、本物のフクベエかどうか分からないのだが、出席した男の名はフクベエのままで通します。
(この稿おわり)
やっぱり酒屋さんは、こうじゃなくちゃね。納戸町にて。(2011年8月17日撮影)