おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ともだち仮説1 「ともだちは2人いる」     (20世紀少年 第89回)

 前回の問1「ともだちは何人いるのか」に対して、私は2人という説を選びました。それ以外の選択肢よりも、こちらのほうが妥当であると考える理由を以下述べます。


 ともだちは1人しかいないと信じている登場人物は大勢いるはずで、すなわち、大半のともだち支持者や、危機から救ってもらったと信じている一般人は、2014年の大晦日に射殺された”ともだち”は、万博の開幕式の当日に会場で息を吹き返し、身を挺して法王を暗殺から救って復活を遂げたと信じている。

 そうでなければ、2014年まで、ともだちが実質的に日本を支配し、その後、世界大統領になるほどの安定政権を築くのは極めて困難であろう。引き合いに出すと怒られるかもしれないが、真のキリスト教信者は、イエス・キリストが刑死して3日後に復活したのだと心底、信じて疑わない。それと同様である。


 だが、ともだち一派の筆頭幹部たちの多くは、さすがに、そう単純ではない。個々の反応はこれから順次、見ていくとして、彼らのうち何人かは、ともだちが入れ替わったと述べており、あるいは、その種の疑念を呈している。

 そして、多くの読者も私と同様、死んだ人間が復活するという神秘主義を、そう簡単には信じない近代人であるから、最初の”ともだち”は理科室で山根に射殺されたのであり、二人目はそれから万博開幕までの、いつかどこかで遺体と入れ替わったのだ。何時どうやったのかは、第13巻以降で追々考えよう。


 では、ともだちは3人以上いるという想定は、ありえるだろうか。カンナは、きっと同じような顔をした影武者が大勢いるんでしょうねと啖呵をきっている。

 しかし、昔の侍大将やら独裁者やら有名人やらが、わが身の安全を図るがために、「死んでも構わないそっくりさん」を雇う(あるいは強制的に作り上げる)という意味での影武者は、何人いようと物語の本質には関係がない。

 ここでの問題は、ケンヂの少年時代と何らかの関わりがあり、その関わりを原動力の一部としてサークル活動を始め、世界同時多発テロまで実行するほどの悪行に走った”ともだち”が何人いたかである。


 少なくとも、2人はいるはずだ。詳細は次回に譲るが、2人目は前任者とは異なる計画を持ち、前任者とは異なる「こだわり」があり、前任者とは異なるケンヂとの関わりがある様子である。この2人が、「二人一役」で演じたのが”ともだち”の実態であろう。

 ここでの「二人一役」という意味は、「21世紀少年」に出てくるチョーさんの捜査資料にあるとおり、当初の段階から”ともだち”は複数の演者がいて、他方、限られた当事者以外は、そのことを全く知らなかったということである。ただし、そのうち一人が死んだために、ほころびが生じたらしい。次回はその話題が主になる。



(この稿おわり)


サルスベリには薄桃色もありましたか。(2011年8月16日撮影)