おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

オッチョの武芸    (20世紀少年 第106回)

 オッチョの戦闘方法は大別して2種類あるようで、一つは格闘、今ひとつは棒術である。いずれも前回の最後で触れたように、相手が即死することを前提としていない戦い方です。

 彼は基本的に、銃刀を所持も使用もしない。これからの、ともだち一派との戦いにおいて、彼は何度か銃器を携帯しているが、威嚇射撃以上のことはしていない。同じワン・マン・アーミーであっても、ゴルゴ13ランボーと決定的に異なるのは、「敵だと感じた相手は皆殺しで構わない」というようなやり方はしない。


 彼の格闘方法に関しては、柔道や空手や拳闘のように、スポーツに取り入れられた格闘技とは異なり、ルールやマナーなどあったものではない。ひたすら、殴り倒し蹴り飛ばす喧嘩殺法である。

 それから、ムエタイ(昔はタイ式ボクシングと言いました)の使い手は、頭付きで仕留めた。プロレス並みの節操のなさ。さすがは後世、ハルク・ホーガンに比されるだけのことはある。

 さて、次は棒術について。どうやら、「師」直伝の武術らしいが、これもまた殴りたい放題の乱暴技で、しかし、当たりどころが悪くて結果的に死ぬ相手はいるかもしれないが、当初から殺す目的で振りまわしているのでもなさそうだ。


 私の中学生時代の愛読書は、吉川英治の「新・水滸伝」と「三国志」であった。いずれも史実を脚色した中国の長編小説「忠義水滸伝」と「三国志演義」が元になっている。何回、読み直したことだろうか。こういう男の物語に触発された弱々しい少年は、現実の世界において要らぬ苦労と挫折をするものだが、それはどうでも宜しい。

 「20世紀少年」に出て来る「夜の街にガオー」という歌詞は、アニメ「鉄人28号」のものだが、その原作者の横山光輝も、ロングセラーの「三国志」に加えて、初期には「水滸伝」も描いている。いずれも吉川英治版をベースにしているのは、どちらも同じセリフが一再ならず出て来るので、間違いあるまい。

 次回は脱線します。水滸伝に話が飛ぶ。林冲が待っている。



(この稿おわり)


明治初年の朝顔は、こんな感じだったらしい。 (2011年9月7日撮影)