おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

バンコクに死す     (20世紀少年 第109回)

 第4巻は、子供のころのオッチョとそっくりで、目がもっと可愛い少年が「お父さん、今度いつ帰ってくるの?」と尋ねる夢からショーグンが目覚めるところから始まる。枕元に3人の悪人面が立っていて、「ボスの命令」で殺しに来たと言う。こんな解説などしている暇があったら襲わなければ駄目。

 ショーグンはさっさと逃げ出して、8バーツでマンゴーを買う余裕。熱帯アジアで食うマンゴーほど美味しいものは、ちょっとない。彼が訪れたのは「安心と信頼の旅行代理店」と壁に日本語で書いてあるフジヤマ・トラベルという店で、どうやら日本人相手の現地エージェントらしい。


 というのは表向きの看板で、ショーグンの「女がらみの仕事」という本業は、この代理店の裏稼業の下請けであるらしい。店長は丸メガネにちょび髭という、かつての加藤茶の変装姿に似ているが、髪型は磯野波平に酷似している。実際、お名前もイソノさんというらしい。

 イソノさんによると、ショーグンを襲ったのは「チャイポンの手下だろう」ということで、その理由は、ショーグンがチャイポンの下で働く女を逃がす際に、白い粉を焼いたためらしい。

 粉の名前は「七色キッド」というそうだ。七色仮面とナショナル・キッドの合成語か?ともあれ、「七色キッド」は新種の麻薬であり、日本では大流行していて、ショーグンは「また、日本か」と呆れている。


 ショーグンのタイ国滞在用のビザは、イソノさんが偽造しているようで、仕事を断れるような立場ではないらしい。次に請け負わされた仕事は、ホテルで麻薬をやり過ぎて死にかけている日本人観光客を、病院に連れていくというものだった。この「お客さん」が警察官であった。

 この警察官のことは6月20日の第12回のブログ記事ですでに触れた。チョーさんの若き相棒で間違いあるまい。薬漬けにされた彼はすでに虫の息だが、誰とも知れぬ相手に(まさか、ケンヂの同級生とは思うまいな)最後の伝言を託けようとする。

 彼は休暇を利用してバンコクに捜査に来たらしい。小説や映画と違って、どの国でも警察官は原則2人以上で行動するという話を聞いたことがあるが、それが正しいならば、一人で、しかも休みをとって来たということは、警察組織に知られたくない行動ということである。


 瀕死の男とショーグンとの間には会話が成り立たないが、ともあれ、この警察官によると、警察にも自衛隊にも内閣にも、すでに”ともだち”が入りこんでいて、日本はすでに”ともだち”のものらしい。彼は死ぬ直前に「計画。もう一つの計画。世界の破滅」と語り残した。

 この二つの計画とは何だろうか。最初の「計画」とは、「よげんの書」に基く血の大みそかの計画、「もう一つの計画」とは「しんよげん書」に拠る「世界の破滅」であろうか。チョーさんと彼の捜査は、そこまで進んでいたのだ。進み過ぎて、この男も先輩同様、殺されてしまった。


 持ち物を片付けようとして、ショーグンが彼のスーツを手に取ったとき、警察官が「バッヂ盗んだ。証拠。あの男、ともだち」と言っていた証拠品だろう、バッヂが一つ、床に転がり落ちた。それは30年あまり前に、ショーグンが考案した正義の味方であるはずの仲間のマークだった。オッチョは覚えている。さぞかし驚いたに違いない。


(この稿おわり)


ちょっとピンぼけ。ノシメトンボかなー。(2011年8月27日撮影)