おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2014-01-01から1年間の記事一覧

交渉人 (20世紀少年 第861回)

ここしばらく、あーだこーだと私見ばかり述べてきたので、今回はしっかりストーリーを追おう。少し前のページに戻り、カンナたちを乗せてマルオが運転する車が、連合軍に包囲された場面、第3話の冒頭である。 国連軍の誰かが、君達は包囲されたのだと車の中…

スプーン曲げ (20世紀少年 第860回)

先日のセミナーで年配の講師から言われた。今の親は自分の子に甘く、子と同世代の自分の部下に厳しい。感心している場合ではないが、感心してしまった。昨今の労使関係を見るにつけ、家庭のツケが職場に回っているようなものらしい。我らの世代は国中がのた…

本当の幽霊 (20世紀少年 第859回)

この春は寒暖の差が大きい。ともあれ今日は好い天気。下巻も中盤に差し掛かったので、これまで棚上げにしてきた無数の諸課題をそろそろ整理整頓しながら進めたい。とはいえ全て解決できるとは思わないが、されど後で考えると書いておきながら放置しては末代…

埋めたり掘ったり、掘ったり埋めたり (20世紀少年 第858回)

例によって無駄話かつ昔話から始まります。しばらく前にフィギュア・スケートのジャンプは跳ぶだけでも大変なのだと力説したのだが、そういうのは当事者にとって気休めにもならないらしい。 ソチ・オリンピックの前の国際大会において初めて羽生が目標だった…

カンカラ (20世紀少年 第857回)

いまどきの子供はカンカラという言葉を使うのだろうか。空き缶のことだが、私の勝手なイメージでは、中にフルーツポンチやミカンや桃が入っていた缶こそがカンカラの代表者である。カンカラは「缶空」のことだと書いてあるものもあるが却下。 カンカラは缶蹴…

ホームレスの神様はボウリング・ブームの夢を見るか (20世紀少年 第856回)

少し古い話題になりますが、ソチ・オリンピックで新たに覚えたのがカーリングのルールである。それまで拭き掃除みたいだと小馬鹿にしていたのだが(だってケンヂがギターに使いそうな小道具が出てくるし)、基本的なルールを新聞で読み、対スイス戦を観てい…

レナちゃん (20世紀少年 第855回)

早く高須の話題、終わらせたいな。ユキジも同様らしく、犯人は”ともだち”の残党なのかと本題に素早く鋭く切り込んでいる。高須の返事は「まだ”ともだち”の教えを信じて、守っている連中がいるのよ」というものだった。「守っている?」と訊き返すユキジ。 こ…

本当の子だし (20世紀少年 第854回)

全体に浦沢漫画は女の登場人物に甘く優しい。「20世紀少年」でも男は次々といろんな理由で死んでいくが(もともと男がたくさん出てくるというのもあるが)、女はたくましく生きていく。それなりの役柄と名前が付いている登場人物のうち、亡くなった女はメイ…

天使の誘惑 (20世紀少年 第853回)

本日も余談から始めます。私が万能細胞という言葉を知ったのは多分、10年くらい前で当時は東京の東側に住んでいた。近所に難病の子を抱えたご家庭があり、その時点の医学技術では不知の病であるため一生苦しまざるを得ず、頼みの綱は万能細胞だけだと親御さ…

思春期の青少年 (20世紀少年 第852回)

下巻の25ページ。息を切らせて「なんなんだここは」とぼやきながらニセの故郷の道を歩いてきたケンヂは、とうとう神社の前で立ち止まってしまい、石壁にもたれかかって「くそ〜」と言った。まだノッペラボウの衝撃から立ち直っていないご様子。 彼は「現実の…

蝶野隊長は銃を取った (20世紀少年 第851回)

確かもう二三十年も前に読んだ文章について。ドキュメンタリーなのかフィクションなのかすら覚えていないし著者の名前も記憶にないが、内容はアカデミー脚本賞を獲った映画「ローマの休日」の脚本がどうやら名義貸しであったという噂が流れ、本当に書いた人…

ひとりぼっちのあいつ (20世紀少年 第850回)

「奴は俺達の魂の友だ」。「俺達は泥棒団みたいに結束が固いんだ」。先日、恋人を失くしたミック・ジャガーに寄せて、キース・リチャーズの公式声明文より。ステージが待っている。お客も待っている。 さて。多分もう40年ぐらい前に一回観たっきりの映画「00…

ここのルール  (20世紀少年 第849回)

下巻の19ページ目でケンヂの質問攻めにあったお面の少年は、まず「ここのルールがわかってない」ので時期尚早であると話を逸らし、続いて「えらそうに言っちゃってさ。国連軍の手先になってるだけじゃん」と憎まれ口をたたいた。「おまえ...」とつぶやくケン…

カオナシ (20世紀少年 第848回)

お面という言葉を何気なく何度も使ってきたが、面という字には顔という意味もある。いずれも単なる顔面の意にとどまらず、顔役、面子、面目、面々、面汚し、したり顔、顔パス、顔が広い、あの人の一面、どの面下げて、ケンヂに顔向けできない等々、人格やプ…

3月11日 火曜日 天気〇     (号外)  

2011年の夏、東日本大震災の発生から数か月経った或る日、仙台で診療所を営んでみえる医師の講演を聴く機会があった。彼はその当時に自らのクリニックで働いていた看護師を津波で失った。 その看護師さんは当日、非番だったそうだ。このため地震が起きたとき…

三億円事件 (20世紀少年 第847回)

明日は確定申告で忙しくなりそうなので、今日のうちに書いておこう。3月10日は東京大空襲(1945年)の日です。この日付は私にとって8月15日よりも重い。理由は単純明快。ご近所で大勢の人が亡くなったからだ。死者は約10万人と言われている。早めの春休みで…

Satisfaction

前回の続き。キース・リチャーズは途中からジャケットを脱いで、ピンク色のカーディガン姿になっている。ロン・ウッドも革ジャンを脱ぎ捨てて黄色のTシャツ姿になった。いつまでたっても原色の似合う人たちなのだ。キースはバンダナも巻いていた。 二十代の…

It's Only Rock 'N' Roll

ストーンズのライブに行ってきた。3月4日の東京ドームである。実によかった。今年は春から縁起が良い。昨年ポール・マッカートニーが来日したときは全く関心が湧かなかったのに、ローリング・ストーンズが来ると聞いては話が別だ。 連中はまだ70歳前後だが、…

ひと夏の経験 (20世紀少年 第846回)

ケンヂが軽音の前でジャンピング・ジャック・フラッシュを弾き、私が大学に進んだ1979年、ソビエト連邦がアフガニスタンに軍事侵攻し、戦争は十年に及んだ。これを受けて日本政府は、1980年のモスクワ・オリンピックをボイコットした。 体育の授業中に「この…

エスパー (20世紀少年 第845回)

エスパーや超能力者という言葉も今はもう殆ど聞かない。昔話が花盛りの小欄は自称「死語ブログ」でもある。「日本人と『日本人病』について」という岸田秀さんとの対談集の中で、さすがは碩学、今は亡き山本七平さんが「言語の意味が本当に固定するのは死語…

悪い奴 (20世紀少年 第844回)

嬉しいことに下巻も巻頭カラーだ。第1話は「ゲームのルール」。始まりの5ページ目上段に私の好きな青い空と白い雲。そのうち何とかなるだろうの歌詞にも出てくる。最初の吹き出しに「万引き?」とあるのは、多分オッチョ少年の声。おお、びっくりしたよと自…

表紙絵 (20世紀少年 第843回)

ここしばらく体調不良が続いたせいか文章が乱雑というか攻撃的になっている。今日も腹の立つニュースを読んだのですが、事実関係だけ触れるにとどめよう。1998年だったと思う。ちょうどケンヂやカンナが地下での生活を強いられていたころだ。 長い休みをもら…

スポーツ論 (脱線)

スポーツを観ての感動は、勝者が得たものの大きさではなく、敗者が失ったものの大きさに左右される。というような意味のことを、何年か前に名前を失念したが誰かが新聞か雑誌の記事に書いてみえた。まことにその通りであると思う。その筆者が例として挙げて…

この道はいつか来た道 (20世紀少年 第842回)

敵兵に勇ましいセリフを吐いて一人ICUに入ったカンナだが顔つきは冴えない。上巻の191ページ目、サダキヨは口に人工呼吸器を入れられている。機械なしでは生きていけない重篤な状態である。人工呼吸器の管が途中から二又に分かれているのは、呼気と吸気を別…

自由に空も飛べるはず (20世紀少年 第841回)

ペルシャ戦役の際、アケメネス朝ペルシャの陸軍を迎え撃つべく、テルモピュライに布陣したスパルタ王レオニダスに伝令が凶報をもたらした。「ペルシャ王クセルクセスの大軍が放つ矢は、天を覆い陽も翳るほどでございます」。レオニダスは命が危なかったら一…

本当の娘じゃないし (20世紀少年 第840回)

ソチでは若い選手が頑張っていますね。実は正直言って今ひとつ冬季オリンピックが苦手なのだが、その理由はフィギュアスケートなどわずかの例外を除き、寒いから仕方がないけれど選手がみんな南極越冬隊のような格好をしているため、お顔が見えなくて区別が…

肩 (20世紀少年 第839回)

二回続けて緊迫した場面を取り扱ったので、今日は肩の力を抜いて雑文風に書きます。というより駄文そのもの。風邪で不調なのです。大学時代は京の都で過ごしたのだが、私の学生時代は蔦の絡まるチャペルで祈りを捧げることもなく、京都にいるときゃバイクで…

路上  (20世紀少年 第838回)

上巻の177ページ。それまで少年の背後にいたババは正面に回り込んで、彼の胸倉をひっつかみ「じゃあ、これは何だね」と本人に盗品がバッヂであったことを示し、次の瞬間にはご老人とは思えぬ素早い身のこなしでバッヂを胸のポケットから取り上げている。 少…

飛んで火に入る夏の少年  (20世紀少年 第837回)

余談から。1980年代の終わりごろといえばバブル景気のど真ん中。私自身はロサンゼルスに住みロックを聴きながら仕事もしていたころのことである。 西ドイツ出身のグループ「Milli Vanilli」のシングル「Girl I'm Gonna Miss You」が全米ヒット・チャートのト…

A Long Vacation  (20世紀少年 第836回)

雑談。何年か前、昨年末に亡くなった大瀧詠一が「細野さんは裏切ったんだよ」と雑誌のインタビューに答えているのを読んだ記憶がある。大瀧さんの訃報を伝える新聞やテレビは、盛んに「はっぴーえんど」を話題にしていたが、記事を書いている世代でこのバン…