おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

ガッツボウル (20世紀少年 第526回)

 オバマ大統領が再選されました。私のアメリカ滞在は5年近く続いたので、その間に1回だけ大統領選があった。1988年、予想どおり共和党が勝って、レーガンからブッシュ父に穏やかに大統領が代わった選挙だったが、昨日は得票ベースでは大接戦だった様子。

 一時期、オバマ大統領の支持率が下がった。経済政策が弱いからだという報道が多かった。アメリカは日本と大きく異なり、解雇に対する法的な制限はほとんどなく、実際、日常茶飯のことである。したがって今回に限らず、アメリカの選挙における街頭インタビューでは、「job」という言葉が頻出する。世界経済よりも自分の職のほうがはるかに深刻な問題なのだ。

 アメリカの失業率は2008年のいわゆる「リーマン・ショック」以降、少し持ち直し気味だがまだまだ高い。だから今回はオバマさんも苦しいと思っていたのだが、共和党の金持ち優先政策に対する反感のほうが大きかったのではないか。ウォール・ストリートの投機屋は全く懲りていない。幾らでも金を儲けたいらしく、実際そうしている。今回選挙のショックで当面、株は世界的に下がるだろうな。買い時である。だけど僕にはお金がない。



 さて、何気なく「ガッツボール」と入力してネットで検索してみたら、たくさんのサイトが出て来たので驚いた。ただし、ほとんどは同じ内容をコピーしただけの私には無用な情報で、それでもなお面白いものはあった。「神奈川県立の図書館」というサイトによると、「週刊ガッツボウル 第1巻第1号 S47年11月 学習研究社 72 11 隔週刊」という蔵書がある。

 別のウェブ情報によれば、「週刊ガッツボウル」の創刊号は昭和47年11月16日発行で、矢島純一ボウリング教室、中山律子「人物写真館」モノクロ3ページというところまでは分かるが、次の「アンルイス カラー2ページ」とはなんだろうか。出てきたばかりのアン・ルイスは実にいい女であった。桑名さん、亡くなったな。ご冥福を祈ります。グッドバイ・マイ・ラブ。

 
 この雑誌の創刊が1972年(昭和47年)というと、モンちゃんがヴァーチャル・アトラクションの「ガッツボウル」の中でピンボールに興じていたのが1971年8月だから、神永社長の「ガッツボウル」のほうが歴史がある。当時も今も新宿が拠点のボウリング場であった。

 1971年、悪の大魔王こと神永社長の髪型は、オールバックだった。1997年にホームレスの神様として初登場したときは蓬髪で、「HAWAII」の帽子をかぶっていた。2014年にコイズミと仲良くなったころの大金持ちの神様は後ろ髪をちょこっと結っており、帽子の刺繍は「MARS」に変わっていた。そして、ともだち暦3年、オッチョたちの前に姿を現したとき、帽子にはしっかりと「GUTS BOWL」の社名が入り、髪型はポニーテールになっている。


 地下街のホームレス時代にはピンストライプのスーツなど着ていたが、ここではチェックのベストにループ・タイ。「20世紀少年」の登場人物で、神様が一番ファッショナブルかもしれない。ただし、片手に杖を握っている。秘密基地がボウリング場になったころ神様は中年であり、オッチョと30歳くらい違うとしたら、もう八十代の後半である。

 だが老いたりといえども、神様はまだ死ぬわけにはいかない。オッチョにはろくに挨拶もせず、あんたが来るのは何となく分かっていたよといつもの調子、そして、「あいかわらずボウリングブームは来ない」と不満そうである。長生きしていればボウリングブームは来るとケンヂに言われて幾星霜。

 ガッツボウルの内部も廃墟同様となっている。それに、神様は一人ぼっちのようだ。1997年から2000年にかけて、ケンヂやカンナたちをかくまってくれた、あの心優しいホームレスのおじさんたちは、どこへ行ってしまったのだろうか。


 ここでも、カツオはおっちょこちょいで元気だ。そもそも追われる身でありながら、入館早々、「誰かいる」と叫んで気配を悟られてしまった。神様は動じることなく、「一度やってみるかい? ボウリング、おもしろいぞお。」と不敵に笑っているが、カツオが気になるのは相手が食っている妙な缶詰であった。

 「何食べてんだ」とカツオは問う。「コンビーフだ」と神様は答える。カツオはコンビーフも知らない。神様によると牛肉も満足に食べさせてもらえない世の中、ムショーにこれが食べたくなるときがあり、夢のお告げもあって缶詰を買い占めておいたらしい。個人的には牛肉の大和煮のほうが好きです。


 「それがじいちゃんの言ってたビフテキか」とカツオは問う。「ビフテキとコンビーフを一緒にするな」と神様は答える。カツオが缶詰を開けようと頑張っている姿が可愛い。あれはネジ式で、確かに開け辛かった。コンビーフも牛の絵は描いてあったが、いま思い起こしてもビフテキと一緒の肉とは言い難い。

 ともあれ、お久しぶり、神様。オッチョも「無事だったんですか」と安堵している。神様の登場は、第14集のヴァーチャル・アトラクションを除くと、第12集の22ページ以来のことで、そのとき神様は悪い夢を見て、カンナと同様、夜中に飛び起きている。その夢について、神様はオッチョに語り始めた。この二人が二人だけで言葉を交わすシーンは、この日が初めてのことだろう。




(この稿おわり)







メンコの話題をもう一つ。
右はサダキヨ館長が持っていたメンコにも出て来た忍者の赤影。
左はコイズミやトモコさんの前の英語教師だったガッパ。
これで遊んだのも遠い遠い昔のこと。


























































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