おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

4月16日 どさくさ  (第1254回)

ここでは政治活動をしないと前に書きましたが、4月16日に関しては政府・与党に批判的です。2020年4月16日、政府は緊急事態宣言を全国に拡大した。これが今日の話題です。続いて同4月16日、「減収者支援30万円」を、「一律10万円」に急きょ切り替えた。アメとムチ、これは次回の話題にします。

そして同じく16日、後に検察庁法改正案反対の運動が、国会議事堂とインターネットを揺るがすことになる、正式名「国家公務員法等の一部を改正する法律案」が衆議院で審議入りした。同じ日なのに、ネットでは別々に報道されているのは、時差があったためかもしれないが、通常「なぜこの時期に」と批判される行為を、「どさくさに紛れて」と形容します。



f:id:TeramotoM:20200515111626p:plain


先回も参照した4月ごろの全国感染者数をまとめたNHKのデータです。4月7日に7都道府県を対象に出した緊急事態宣言ですが、その後も感染者の報告は増加傾向を示しました。非常に重苦しい雰囲気に沈んだ時期でした。いや、過去形で語るのはまだ早い。

最近(5月中旬)になって、新型コロナウイルスは感染後の初期には高い感染性を持つものの、日を追って感染力は弱まるというような説が出てきています。まだ真偽を問うのは早いかもしれませんが、もしかしたら地域別、国別に発生率や拡大速度がずいぶんと異なる様子なのは、このあたりに関連するのかもしれないですね。


この説が正しいと仮定してみます。上図のように、4月中旬に第一波のピークを迎えたらしいということは、ちょうど緊急事態宣言が出た4月第1週のころに広がったという仮説を立てることができると考えます。

東京オリンピックパラリンピックへの未練で遅れたという点は、ほとんど誰も(責任者以外は)否定しないと思いますが、それでも、せめてこの時期に非常事態を宣言しなければ、さらにひどくなったあろうというタイミングでもありました。4月16日に全国に拡大してから、数日後には減り始めています。どうやら急ぐに越したことはないような感じです。


仮の話はこれくらいにして、4月16日には、宣言を単に全国に拡大したわけではなく、都道府県によって、色分けがなされました。まず、4月7日から5月6日まで緊急事態宣言の対象となっていたのは、当初「埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府兵庫県、及び福岡県の7都府県」(官邸サイト)でした。

これに加えて、「上記7都府県と同程度にまん延が進んでいる道府県として北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府」の6道府県を加え、重点的に措置を進める計13都道府県を、「特定警戒都道府県」と定めました。詳細は改訂「基本的対処方針」にあります。


そして、全国的な広がりを見せていることから、「全ての都道府県について緊急事態措置を実施すべき区域とすることとするという拡大方針となりました。この時点での期限は、全国5月6日のままです。

この新たな基礎対処方針をみると、「特定警戒道府県」の説明の中に、「感染経路の不明な症例」の割合が増加しているという質的な要素も含まれています。家族でも船でも病院でもなさそうな、どこで感染したのか本人も分からない(あるいは、言えない)患者さんの割合が増えた。クラスター対策のような集中的措置が、取りづらくなります。


この全国拡大により、特措法の規定で陣頭指揮の重責が全国の都道府県知事に更に重くのしかかりました。ニュースに知事の出番が増え、中には失敗もあったのかもしれないが、補償金やマスク等を、遅れている国に先立って地域住民に配る自治体も出てきました。動きがよくなったなあと思ったものです。

しかし、前向きなニュースばかりではありませんでした。「他県民お断り」の動きが広まりました。ひどいのは他県ナンバーの自動車を傷つけるという陰険な犯罪まで出ている。そういう所には、食糧等を届ける長距離トラック等を走らせなければよいと、勝手に憤ったわたくし。これは犯人以外の多数が困ります。

これに影響を及ぼした一つのきっかけは、上記の改訂基本的対処方針の後半に出てくる(3)まん延防止の⑩であろうと推測します。時期的に、間もなく大型連休を迎えるころ合いでしたから、本来は観光や帰省で動き回らないでほしいというものだったはずです。


⑩ 特定都道府県は、不要不急の帰省や旅行など、都道府県をまたいで人が移動することは、まん延防止の観点から極力避けるよう住民に促す。特に、大型連休期間においては、法第45 条第1項の規定に基づき、都道府県をまたいだ不要不急の移動を自粛するよう、住民に協力を要請する。

また、域内の観光施設等に人が集中するおそれがあるときは、当該施設に対して入場者の制限等、適切な対応を求める。政府は、必要に応じ、当該不要不急の移動の自粛に関し、法第20 条の規定による総合調整を行う。


やむを得ない趣旨の措置とはいえ、繰り返して「都道府県をまたいだ」を強調するのは、不可欠で適切な表現なのか。これにより特に観光業(宿泊、飲食、小売、輸送などの業態の方々)は、たいへんなダメージを受けたものと思います。

ですから今年は一歩も都内から出ておりませんが、文句は言えません。それに個人的には、すでに二月下旬に「ウイルス扱い」による都道府県境での「分断」を経験しておりましたので、この時点でのショックはなかったです。


一つは3月に北陸で予定していた打ち合わせが延期になった際、「東京は感染者の集まりだ」と全員宛にメールを送った者がおり、参加予定者の中で唯一の都民であった私は、二度とこの男には心を開かないであろうと腹を立てました。例えば相手が妊婦さんなら分かりますが、同い年のおっさんだ。

もう一つの出来事もすごくて、葬式への参列を断られました。故郷の静岡で子供のころ世話になった叔父さんが2月末に病没しましたが、うちの親に「いまは東京から来ないほうがよい」と言われ、弔電と香典に替えました。四十九日も初盆も同様です。


もっともこのときは、前もって私もできれば辞退したいと思っていました。この状況下で田舎ならではの狭苦しい、親戚づきあい近所づきあいの中に踏み込んでいくのはまずいということは知っていましたし、もしも私が帰省したことにより、別の葬式を出したら更にまずい。

こんなことが全国で起きたことと思います。また、逆にここ東京への観光客・出張者が激減したのも、住んでいてすぐ分かります。うちの近くには上野や浅草があるし、成田空港から直通で来る電車が停まる駅もあります。人が減ったのなんの。ホテルもガラガラ。いつまで続く、ぬかるみぞ。



(おわり)



f:id:TeramotoM:20200416070905j:plain

当日の空   (2020年4月16日撮影)










































.