おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

5月29日 専門家会議  (第1272回)

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議 (以下、「専門家会議」といいます)については、いろいろ議論がありました。厳しく言うと、外野席から文句を言う者(主に他の医学者)が、少なくありませんでした。学者というのは、そういうものです。原発事故のときも、そうでしたね。素人は誰の言う事を信じればよいのが分からず、混乱します。

なにしろ先輩同業者と同じことを言っていたのでは、研究者として出世もしないし、本も売れずテレビにも呼ばれません。特に原発事故やCOVID-19のような、過去に例のない難解な出来事においては、議論百出、百家争鳴となって当然です。ただし、SNSやブログを読んでいると、口汚いのが多い印象です。ストレスで大変だと思いますが、喧嘩は学会内でやってほしい。


もう一つ、会議と政府との責任分担や、議事録が無いとかいう政治的な話題も多く、特筆すべきは専門家会議の「廃止」の記者会見を担当大臣が、専門家委員会の会見と同時刻にやるという無礼千万の事態もございました。なお、議事録は上記のように、人によって意見が違うことを前提にしているはずですから、むしろ作ってほしいというメンバーの声が出たのも当然のことです。

最近になるまで、こんな内輪の沙汰があるとは思いもよりませんでした。一つ例外を挙げれば、学校閉鎖のとき専門家会議に諮らず、政府だけで決定・発表した出来事がありました。私は愚かにも教育分野の行政だし、子供は発症する確率が低いという報道でしたから、仕方がないかと看過しました。

しかし、最近になって教師の感染も増えているというような話を聞くと、やはり学校という特殊な環境下における疫学的な検討も不可欠だっただろうと思います。さて、今回はその専門家会議が本年(2020年)5月29日付で状況分析・提言をした資料です。


改めて読みなおすと、「次なる波」(再度の感染拡大)という言葉が、繰り返し登場するのが目を引きます。次なる波というのは、通常われわれや報道機関が「第二波」と呼んでいるものでありましょう。医学者によっては、最初の「中国株」と、次の「欧州株」は別物で、後者を第二波と呼ぶ人もいます。この資料もそうなのです。流行の規模、被害の度合いが、けた違いですからね。

もっとも別物なら、COVIC-20でしょうね。まだ決め付ける段階ではないでしょうけれども。ここでは、次に来るかもしれない感染拡大を第二波と呼んでいます。なぜ専門家会議の提言が、これの対策を強調しているのか。タイミングの問題があります。


この資料の文中にもあるように、「5月14 日には39県を、21日には京都府大阪府兵庫県の指定の解除を行った。さらに、5月25日には、残る北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川の1都1道3県についても緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められ、同日、法第32条第5項に基づき、緊急事態解除宣言が行われた」すぐ後だったからです。しかも当初期限の5月31日を繰り上げての解除でした。

この5月29日の専門家会議は、全面解除後の初めて会議でした。このころは、みな解放感で外出も増えたし、すぐに終息しそうな気配もなく、幾つかの外国は悲惨だし、全業種が元の経営状態に戻ったわけでもなく、こちらも10万円が届いていなくて、お金も足りないという微妙な時期でした。これからどうしようというときに出たメッセージです。


そんな中で「経済を回せ」という気色悪い表現で叫ぶ者が増え、もちろん収入がほとんど無かった私も、一刻も早く元の景況に戻ってほしいと今でも祈念しておりますが、なにせ欧州株とは何なのか、なぜ日本は後手後手と言われながらも、感染者・病死者の数が欧州や新大陸と比べて少ないのか、全貌は掴めていないはずです。それに新新型が出たらどうする。

そういう段階ですから、医学の専門家会議が慎重論を唱え、警告を発するのは当然というより、責務だと思います。もちろん大不況になると別の恐怖に襲われますから、政治家の好きな言葉で言えば「総合的判断」が不可欠の事態ですが、医学を横に措いて語るわけにはいきません。しかし現政権と東京都は、明らかに経済と政局が優先です。これは別途、話題にします。


今回は批判ばかりで恐縮ですが、この提言に今後の対策として含まれているモニタリングについて、先日、わが東京都は患者数などの「数」をモニタリング指標にしながら、数値基準を設けないという離れ業をやってのけました。人を見かけで判断するなと言われて育ちましたが、「見た感じで決める」そのものです。そして、発生報告は不気味に増えている。

また、政府が先般、導入した感染者との濃厚接触の可能性を知らせる接触確認アプリ「COCOA」は、使うつもりがありません。今の政府が急造するシステムに、性能や情報管理能力を求める勇気はありません。

早速、修正していましたね。マスクの衛生状態についての「前科」もあります。もっとも「接触したぞ」と警告されたら、自動的にPCRほか検査が受けられるなら話は別ですが。それにこのココアという、ゆるキャラのような緊張感に欠ける名前は何だ。


それでは、5月25日の緊急事態全面解除を宣言した際に行われた、総理の記者会見の議事録を拝読します。ちなみに、私はここで引用している記事や資料が、いずれリンク切れになるのを見越して、全部ではないですが重要と思うものはPDFやスクリーン・ショットで保存しています。

この会見記録に、一世を風靡した「日本モデル」が出て参ります。モデルはいろんな使い方がある言葉です。プラモデルとか。文脈からすると、その前段の「我が国では、緊急事態を宣言しても、罰則を伴う強制的な外出規制などを実施することはできません。それでも、そうした日本ならではのやり方」云々を示すものと考えます。


事実関係はそのとおりですが、同じような方法論をとった国や地域はほかにもたくさんあるはずで、また、もっと早く少なく収束させた例もたくさんあります。これまでいろいろ見てきた経緯からして、現時点で成績良好のほうだとは思いますが、「正に、日本モデル」と自慢しつつ、世界に模範として売り出すようなものだとは感じません。

以下は全くの推測ですが、もともと現代の日本人は、やれ滅菌だ抗菌だと極端に衛生意識が強く、手洗いや清掃の習慣になじんでいたこと、毎年繰り返す季節性インフルエンザや花粉症で、マスクをする習慣も一般化していたことといった素地ができていたのは大きいと思います。それに家庭内の感染が怖い病ですが、少なからずの日本人は家庭で孤独です。


そして何より、医療水準が高く、医療従事者の職業意識も極めて高い。証拠を出せと言われても困りますが、まあ、平均寿命でも見てください。あとは山中博士がいうところの「ファクターX」という未知の要素(例えば遺伝子レベルの違いとか)、そして、おそらく多大なる幸運に恵まれたはずです。今後の検証を待ちます。

いま経済指標が急激に悪化しているため、いくら解放感が出てきたとはいえ、今年の夏休みは大人しくしている人が多いと期待します。その結果、例えば秋口にぐっと流行が落ち着き、疲れも出て何となく手を抜き始めたころ、晩秋のインフルエンザの季節到来とともに、何かがやってくるということにはなりませんように。



(おわり)



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上野東照宮  (2020年5月29日撮影)

















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