おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

4月16日 一律10万円  (第1255回)

医療か経済か、感染防止か生活保障か等の表現で、かじ取りが難しい二つの課題が表面に出始めたのは、もっぱら医療の話題でもちきりだった3月中旬ごろを過ぎて、下旬になり検査結果の陽性報告が増え始めた3月の下旬あたりではないかと思います。流行が長引く事態を避けられそうもなくなってきて、経済的な心配が膨らんできました。

特に3月最後の週末からは、「不要不急」という言葉が政府や地方自治体の長から、盛んに出るようになり、すなわち外出の自粛要請時代に入りました。これでは、土日の来客を頼みに商売している小売や観光や娯楽などの産業の売上や、時給・日給単位で週末も働くパートタイマーほかの労働者の収入などが減ります。


感染者数増加の傾向は収まらず、不要不急の外出は土日のみならず平日もご法度となり、最初の内はオリンピック対策のため、続いて企業の経費節減のため、政界・財界が推し進めていたテレワーク、在宅勤務が、今度はウイルス対策として出番を得た。

経済が停滞すると、ますます業界や職務を問わず、収入減が深刻な問題となって参ります。もちろん日本だけではなく、各国で重要課題になった。特に海外でロックダウンの措置を採った国や地域では、企業や働き手に対する補助金の手配が本格的に始まりました。


これが、わが国では遅々として進まないという批判も、これまた今日に至るまで続いている。ケチだという人もあれば、財政が破綻しているので、無い袖は振れないのだという人もいる。私に言わせれば、財政破綻の危機は確かにあるが、今の時点ではケチです。

予算には大企業への支援があって話題になりました。高価な兵器も買い続けている。それらにも相応の必要性があるとしても、そんなに急ぎの出資・買い物なのか。また、本予算の成立時点では(3月27日)、COVID-19 対策の予算がまだ計上されておらず、補正予算で対応となったのも記憶に新しい。日数不足の故だと思いますが、われら素人には印象が悪かった。


さて、庶民の生活が圧迫され始め、最初に政界で声を挙げたのは、私の理解ですと野党統一会派です。これに限らず、このブログは私の記録力と検索能力に頼るという、頼りない方法で運営しておりますので、間違っておりましたら、随時、加筆修正します。4月2日の朝日新聞の記事にある。

すなわち野党の主張は、「すべての国民に対する1人あたり10万円以上の現金給付のほか、政府のイベント自粛要請などに伴う中小事業者の減収補塡(ほてん)などを柱にしている」ものだったようで、ご存じのように、結局はこの線で落ち着きました。


一方で自民党は当初、収入減の世帯に対する30万円の給付を選びました。福井新聞によると、野党案の翌日、4月3日のことです。しばらくしてからの4月15日のNHKの報道によると、まだ30万円は制度設計中です。

そのページはリンク切れになっていますが、「新型コロナウイルスの影響で、収入が減少した世帯への30万円の現金給付について、菅官房長官は、公明党から世帯主だけでなく世帯全体の合算した収入が減少した世帯も対象とするよう要請を受け『実態に合わせて検討する』と述べました」とある。


この制度設計の結果は、あまり評判が宜しくなく、ます対象が「住民税非課税世帯」であり、収入が半減した世帯とする。住民税は東京都でいうと、区によって計算方法が違いますから、住所地によって不公平が出ます。

収入半減というのも、証明しにくいし、4割減では外されてしまいそうだった。しかも、世帯という概念が古いし、構成員が別々の仕事をしていると計算しずらい世帯もある。拙宅がそうで、個人事業主と会社員が混在していて混乱します。世帯分離はどうなる。アベノマスクも世帯ごとと言っていたが、いつのまにか住所ごとに変更になりました。

これでは、実際に収入が減っていても対象外になりそうで、しかもこれからもっと減りそうだという人達が不安になったのも当然だと思います。このころすでに香港では、ひとり一律で十数万円相当の支給が決まっていたという覚えがあります。


これがひっくり返ったのが、先回の緊急事態宣言を全国区に拡大した日の午後。日経新聞朝日新聞の記事を並べます。補正予算案の内容に対し、公明党が強硬に反対し、「所得制限を設けずに国民全員に一律10万円を支給」となった。

これにより、4月20日に提出する予定だった第一次補正の「予算案を提出前に大幅に組み替える異例の対応」という結果になりました。日蓮宗といえば町衆。今でいえば、さしずめ商店街。中小零細が票田です。さて、なぜ10万円なのでしょう。きりが良い数字だし、一万では少ない、百万では多すぎる。お肉券や、対象者限定よりは良い。そんなところですか。


ものは試しで、考えてみます。ここに総務省統計局の人口・世帯に関する統計があります。すでに概要はご存じだと思いますが、このうち「2-12 都道府県,世帯人員別一般世帯数と世帯の種類別世帯人員」によると、平成27年(2015年の国勢調査でしょう)の時点で、一世帯の平均構成員人数は2.33人です。

独居や高齢夫婦のみの世帯が増えているようです。想像ですがおそらく現在は、2名前後になっているのではありますまいか。次に、高齢等で働けなくなった場合、2名の世帯では、どれくらいの生活費がいるのか。財務省は手回し良く、「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 高齢社会における資産形成・管理」を作っています。


これが史上名高い「老後資産2000万円報告書」などと呼ばれて大反響、財務大臣麻生太郎君が受け取りを拒否するという演出まであり、ともあれ、同報告書によると高齢夫婦二名の平均的な家計は、収入が年金を含め月に約20万円、生活費が約25万円なので、差額の5万円は自分らで何とかしてね、というものでした。

この報告書の第10ページに、当該の図があります。平均して一人あたり衣食住で10万円あまり。若い人たちでも、働けないし、外出できないなら、高齢者の生活と比べて、大して出費は変わりありますまい。


以上によれば、一人10万円の補償という数字も意味を持ちます。ただし、「月10万円」です。最初の緊急事態宣言は、4月7日から5月6日までの一か月間でしたから、一人10万円で私は文句ないです。他方、東京ではその後、緊急事態が延長されましたが、延長分はどうなりますか? 

それに昨夜(5月25日)、緊急事態宣言が全国で解除されましたが、解除後も経済的に困り続ける多くの人たちは、どうなりますか? そもそも、最初の10万円は担当のみなさんが忙しそうなので言いにくいが、まだ案内さえ届いていないというのはどういうことか。日本モデルですか。



(おわり)




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拙宅のテッセン  (2020年4月16日撮影)




























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