おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

積極的疫学調査  (第1284回)

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久しぶりの更新です。特にこのカテゴリー「COVID-19」(新型コロナウィルス感染症)は、感染拡大当初(ちょうど去年の今ごろ)の日本中、世界中の様子を知りたくて連載していました。あとはブログにわざわざ書くまでもなく、ネットやニュースで追っていました。警戒心や好奇心も落ち着いたし、予防方法も自分なりに身に付けました。

今回は近ごろ、タイトルにある「積極的疫学調査」という言葉が目に新しく映ったので、調べてみました。この「積極的疫学調査」という医学用語そのものは、SARSのときにも、MERSのときにも使われている記録があるので、今回急に始まったことではない。


ただし、この調査を行うにあたっての「実施要領」や、「調査票(案)」が都度、更新されているので、考え方や方法論は状況に応じて変わりゆくものらしい。ウイルスも病状も拡大度合いも異なるでしょうから、それは不思議ではありません。あとは、どう運用されているかです。

今回は一例として、私の自宅も業務範囲も家族親戚の大半も、ここ東京都にあるため、また、これを書いている時点(2021年3月2日)で、都は二回目の緊急事態宣言下にあり、隣県の千葉・埼玉・神奈川とともに、来たる週末の3月7日に解除されるか、それとも延長されるかという微妙な時期にあります。どちらに転んでも、この先が不安です。いつもの議論で、健康か経済か。


まず、積極的疫学調査の関連情報源として、昨年来すっかり有名になった国立感染症研究所のサイトを拝見します。本日時点で、ここにその「実施要領」と「調査票(案)」の最新版があります。簡単に言うと、「クラスター対策」の一環としての調査のようです。

www.niid.go.jp


実施要領に、用語の定義などが載っています。私が今、読んでいるバージョン(令和3年1月8日版)には、このように解説されています。

自治体における新型コロナウイルス感染症に関する積極的疫学調査とは、個々の患者発生をもとにクラスターが発生していることを把握し、原則的には後視的にその感染源を推定するととともに、前方視的に濃厚接触者の行動制限等により封じ込めを図ることである。なお、クラスターとはリンクが追える集団として確認できる感染者の一群という意味であり、クラスターが検出されることは、積極的疫学調査が順調に進んでいることを示しているとも言える。



先ほど運用はどうなっているのかと書きました。この先は感染研のサイトにも、東京都のサイトにも、探したけれど見つからなかったのですが、キー・ワードで検索すると複数の報道機関が、ひっそりと(?)記事にしています。

まず、東京都の感染拡大状況の推移を概観すると、昨年末から今年初めにかけて(2020年12月から2021年1月までのころ)、保健医療の現場がひっ迫し、大変なことになっているという報道や、SNSの投稿などが続きました。第3波のピークと申して宜しいでしょうか。


上記の「実施要領」は推測ですが、この混乱を受けて、1月8日に更新されたのかもしれません。暮れ正月明けの危機的な時期を迎えていた頃です。さて、東京では、同月の1月22日、「積極的疫学調査」を縮小し、対象を重症化リスクが高い施設や、高齢者や基礎疾患者に絞り込むことにしたとのことです。

これは都から保健所に通知されたと、東京新聞時事通信の記事にあります。理由は不明ですが、「医療崩壊」の回避策だったのでしょうか。現場は大変だったろうなあ。
<新型コロナ>東京都の感染経路調査「高リスク」集団優先に 「経路不明」割合の上昇も:東京新聞 TOKYO Web



このため、検査数は必然的に減る。では陽性率はどうでしょうか。クラスターを徹底して追わなければ(屋形船を思い出します)、陽性率は下がるのかもしれない。この辺りは、自分は医療職でも行政官でもないので分かりません。

ただし、実績は東京都が公表しています。ウェブ・サイト名は、「東京都 新型コロナウイルス感染症 対策サイト」。私が一番よくみるサイトの一つです。データが詳しいし、更新もまずまず早い。

stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp



いま眺めているのは、2021年3月1日に更新されたデータです。各種統計のうち、モニタリング項目(4)を貼付します。

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二つの折れ線グラフは一目瞭然で、「検査人数(7日間移動平均)」、「陽性率」ともに、一月から減少傾向にあります。少し詳しめにみると、陽性率は今年に入ってから減りっぱなしであるのに対して、検査人数は1月半ばまで高止まりし、そのあと減り始めました。

きっかけは、横軸の下に日付が入っている通りでしょう。1月22日の「積極的疫学調査」の対象絞り込みが始まった。テレビや新聞で「新規感染者数」などと呼んでいるものは、「検査を行い、結果が陽性と出て、集計され、公表された人数」ですから、実際の新規の陽性者より、当然少ない。


それが減るべくして減っている。さらに追加報道によると、東京都はつい先日の2月26日に、絞り込み前の「積極的疫学調査」の再開を発表したようです。
首都圏「緊急事態宣言」解除に暗雲 都「積極的疫学調査」再開で陽性掘り起こし(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

どういう政治的または医学的な判断により、この土壇場の時機に、この再開がなされたのか、私には不明というより不審です。もちろん、積極的な調査自体は歓迎です。ようやく、それを実施する体力が保健所等に戻ったならば吉報です。ではなぜ、私に黙っているのか。当方が鈍感だったのでしょうか。


国と首都圏の一都三県は、今週中に緊急事態宣言を解除するか否かの重要な判断をしなくてはなりません。どうも私の耳に入ってくる医師や医学者の意見は慎重、ときには反対に近い厳しいものです。実態はそれほど減少していないのではないか。死亡者数がなかなか減りません。

1月から3月上旬まで、そもそも季節性インフルエンザの季節でしたから、みんな用心しましたし、都ではスギ花粉症の季節でもありましたので、温かくなってきても、みなさんマスクをしていました。それが解除になり、春の行楽と人の移動の季節を迎えたとき、何が起きるのでしょう。このまま収束に向かうことを切に願うばかりです。



(おわり)



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河津桜  (2021年2月25日撮影)



























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