おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

5月8日 37.5℃が4日間  (第1266回)

2020年5月8日、厚生労働大臣がCOVIC-19の「相談・受診の目安」に関し、記者会見で見直しに言及しました。この目安とは従来、一般に「37.5℃以上の熱が4日間出たら」という理解が広まっていたものです。以下は、もう廃止された文書ですからご注意ください。本年2月25日時点版の厚生労働省「新画家コロナウイルスに関するQ&A」(労働者の方向け)の一部です。

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以前、これを最後まで読むべきだと書いたは、他の病気の心配がある時には、通常と同様、お医者さんに診てもらってくれと書いてあり、かかりつけ医に相談するのに遠慮は要らないはずだった。

しかし、数値目標的なものに慣れ親しんでいる我々勤め人は、どうしても、この当局の数字ばかりを重く受けとめました。4月23日に亡くなった岡江久美子さんも4日を超えて辛抱なさいました。ここに改めて、ご冥福をお祈り申し上げます。


私は初めから、目安といっても、実質的に受診できる条件と受け止められかねない以上、神経質になるほどでもない無理な話だと思っておりました。熱が出たら、そのときはそのときと放念しておりました。

自分の平熱は36.2くらいですから、37.5℃となると、おそらく心身とも働かなくなりそうです。そうしたら体温を測る前に、日々の暮らしのため、必ずや解熱剤を飲みます。そうすれば熱が下がり、目安に届かないと言われそうだと思った。風邪の症状と解熱剤で下がる程度の熱では仕事を休めませんし。


この「削除」の件は、上記の記者会見により、報道各社が一斉にニュースに流した記録が、今もネットに幾つも残っています。なぜかNHKは削除しているが、ここでは日本経済新聞の記事を引用します。遅かったという批判もありますが、ともあれ方向性としては妥当だと思います。

「風邪の症状」も、必ずしも目安にはならないことが分かってきていました。知見が蓄積されてきましたから、例えば呼吸困難や下痢で始まったとか、すっかり馴染みになった「味覚または嗅覚の消失」も、初期に経験した人の証言が出てきました。

初めての病気ですから、亡くなられた方やご遺族は気の毒なのですが、時間を要しました。では、そもそも当初の目安は、どのようにして設定・公表されたのか。こちらは5月8日の修正とは別問題です。


従来、私は動画サイトを殆んど観ておらず、昔のロックを聴いたり、昔のスポーツの試合を観たりという程度だったのですが、最近は独占国会中継などやって意気軒高です。今年の5月6日には、ニコニコとヤフーの共同企画で、安倍総理大臣と山中伸弥博士のリモート会談もありました。

総理はオリンピックに触れましたが、山中所長は慎重で、研究者にとって一年程度のワクチン開発は大変なプレッシャーであり、有効な治療薬など「よほどの幸運の重なり」に期待すると応じています。この件は朝日新聞の記事もある。さて、そのニコニコのTwitterにもあるように、旧目安が一般にも発表されたのは、2020年2月17日です。


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Twitterの文字数や活字媒体の記事の見出しでは、やはり強調され印象に残るのは数字です。そして、政府内では同日付で、「相談・受診の目安について」の行政通達が、都道府県等に配布されれました。一般人向けのリーフレット「新型コロナウイルスを防ぐには」も同じ日付で出ました。


このことは、翌18日の「新型コロナウイルス感染症対策本部」の議事録にもあり、その前の16日には、公表予定という議事録も残っています(URLは省略します)。では、その前は? 

クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス」は、もう2月初旬には問題になっていました。医師のどなたかが、「家の前で車が燃えているようだった」と仰っていた出来事です。もちろん、WHOや中国の情報はその前から入ってきています。クリニックが敬遠され、保健所がパンクすると報道されたのもこのころからだと思います。


少し前の時点から今一度、振り返ります。1月31日。WHOは新型コロナウイルス感染症に対し、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言」しました。これと同じ日、武漢からのチャーター機が到着。今にして思うと風雲急を告げた感じです。

翌1月31日の「新型コロナウイルス感染症対策本部」の議事録とプレスリリースも、早速これに触れていますが、まだこの時点では「目安」は明確でありません。


感染拡大の防止が急務になり、翌2月1日には検査体制や入国管理の強化を行う必要が生じ、議事録にも、これが強調されています。これら議事録には2月1日付で、後にCOVID-19と名付けられた感染症が、「感染症法上の指定感染症に指定する」ことも決まったとあります。

長くなるのでここでは詳細に触れませんが、感染症法令上で「発熱」というのは、37.5℃以上の熱が出たときのことだそうです。おそらく、目安はこの数値に従ったのではないかと思います。素人向けの目安として適切だったかどうかはともかく、法令上は筋が通っている。しかし、発熱「4日」については、2月1日付の行政通達にも出て来ない。


あとは推測そのものです。2月3日付で感染症法上の届け出基準の改訂に関する通達が出ています。一部、改訂後の文章を転載します。

臨床的な特徴としては、潜伏期間は2~10日であり、その後、発熱、咳、全身倦怠感等の感冒様症状が出現する。一部のものは、主に5~14日間で呼吸困難等の症状を呈し、胸部 X 線写真、胸部 CT などで肺炎像が明らかとなる。高齢者及び基礎疾患を持つものにおいては重症化するリスクが一定程度あると考えられている。


5日目には重症化しそうな表現だと思います。このころのニュースでは、医師だったと思いますが、あの「4日」の目安は、科学的データの蓄積が無い段階で、何らかの区切り程度のものを示さざるを得なかっただろうと言っていました。

実際そんな風に決まったのかもしれません。検査体制の実態は知りませんし、したがって憶測にすぎませんが、まだインフルエンザの季節でした。大勢が一度に来られたら、と思ったのではないか。ずいぶん探しましたが、議事録はありませんでした。見つけたら、教えてください。



【追記】 東京新聞の最新情報があります。読んだばかりですが、まずはご参考まで。

www.tokyo-np.co.jp



(おわり)




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自粛中は早朝の散歩ばかりしていたから上野公園の写真が多い  (2020年5月8日撮影)













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