おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

燃える町にあとわずか (20世紀少年 第531回)

 第17集の第1話「地球防衛軍」には、その最初と最後に地球防衛軍とやらが登場する。軍服はどうみても科学特捜隊のマネ。軍事演習中に見えるが、「正義という名の虹かかるー♬」などという変な歌が流れている。まさか唄いながら訓練しているのではないと思うが、近代国家の軍隊で音楽を流しながら実戦の演習をしているところは他にあるまい。

 各戦闘員の携帯する兵器はお得意のレーザー銃だが、実際にレーザーを発射しないのは練習だから仕方ないとしても(実は、まったく使いものにならないことが後で判明する)、口頭で「ビビビ」と言っているのは余りに情けない。ねずみ男か。

 これでは、サナエに子供扱いされるのもやむを得ない。「無反動クラスター砲」という名のみ立派な兵器も出てくるが、たぶん張子だろう。こちらも人の声で「ドーン」と言っている。


 今年もニュースになっていた覚えがあるが、ウルトラセブンは今も大人気で、ウルトラ警備隊を演じた俳優さんたちが参加する催し物も開かれているらしい。それはそれで大いに結構な話だが、セブンよりウルトラマンの方が好きな私としては少しさみしい。

 いちいち調べて細かく書くのも煩わしいので、記憶のまま大雑把にいえば「ウルトラマン」のテレビ放映は私が小学校1年生のとき、「ウルトラセブン」は3年生で「仮面ライダー」は5年生。これでも少しずつ成長していたはずなので、この順に「手に汗握る」度合いが薄くなっていったのは已むを得まい(とはいえ、後年「帰って来た」ときは嬉しかった)。


 だが、これは私個人の話であって、世間でウルトラセブンのほうに人気が集まることの説明にはならない。ごく大まかな印象でいうと、ウルトラマンは怪獣が出て来て暴れて退治されるという、良くも悪くも単純な子供向け番組であった。

 他方、ウルトラセブンは何とか星人が出てくることが多く、その悪い宇宙人が怪獣を操って悪さを始めると、セブンに撃退されてしまうというパターンが得意であったように思う。

 極論するとウルトラマンを格闘劇とすれば、セブンは陰謀劇ともいえるもので、それだけドラマ性、ストーリー性が高く、また宇宙船や怪獣操縦用の器材などが出て来てSF度も高い。このあたりが今も大人の鑑賞に耐えるだけの中身を備えた番組づくりとなったのであろうか。


 放映当時はウルトラマンウルトラセブンは赤の他人だったはずで、後年、なぜか一緒にウルトラ兄弟の一員にされてしまったが、それではセブンにカラータイマーがないのが不自然である。ウルトラマンの楽しさの一つは3分間で片づけないといけないという時限爆弾的なハラハラドキドキにあったのだが、記憶の限りではウルトラセブンにそれはなかった。

 こんな風に書くと、私がウルトラセブンを好きではないような印象を与えてしまうかもしれないが、それは違う。おそらく全部毎回、観たはずだ。彼はその主題歌にあるように、真のファイターである。ウルトラマンより動きも良かった。

 あれだけよく働いた正義の味方も、ちょっと他に例がないのではないか。何か欲しいものが一つだけ手に入るなら何が欲しいかという質問に、若い世代の多くは「どこでもドア」と答えるらしいが、私なら断然、カプセル怪獣だ。やりたい放題できる。


 私がウルトラマンを第一とする理由の一つは、怪獣の造形の見事さである。それはベムラーから始まった。次が人類最大の敵、バルタン星人。レッドキングアントラーピグモン、ダダ、ジャミラ(可哀そうだったな)、にせウルトラマン、そしてゼットン

 ともあれ、ウルトラ何とかは長期にわたりシリーズ化された。それぞれの世代にそれぞれのウルトラ舎弟がいるというのは、初代に立ち会い、これを支持してやまなかった小僧共の一人として嬉しくも誇らしいことである。

 ウルトラマンは海外進出も果たしたらしい。先日、1969年公開のアメリカ映画、「真夜中のカウボーイ」を観ていたら、ジョン・ボイトが不純異性交遊をしている場面で劇中のテレビが映って、ウルトラマンの主題歌イントロのファンファーレが聞こえてきたのには驚いた。怪獣もちょこっと顔を出していたが、たぶんネロンガだろう。


 ウェブ情報によると、「地球防衛軍」はウルトラセブンにも出ていたらしいのだが、まことに恥ずかしながら全く覚えていない。組織名をウルトラセブンから借り、軍服をウルトラマンから借り、レーザー銃はケンヂから借りるとは、およそオリジナリティに欠ける連中である。

 ともあれ、こちらの地球防衛軍は襲来する宇宙人を光線銃で撃退するという名目で設置されているらしいが、間もなく出てくるように、実際は政治犯をインベーダーと決めつけて殺す政府公認の暗殺部隊であった。こんなこというとファンに叱られそうだが、新撰組みたいなものだな。





(この稿おわり)




子規は鶏頭が好きで、それを知っている鴎外が種を届けてくれたことがある。
(2012年10月21日撮影)
























































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