おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

みんなのいちばん長い日 (20世紀少年 第668回)

 第20集はユキジの道場から始まり、そのころ東村山に向かったマルオが間もなくキリコに会って、それから24時間経過するまで劇的な一泊二日の物語だ。第12集から第13集までの長さと内容に匹敵する。人体実験室の内外で会話が始まったころ、カンナとユキジとオッチョは、ともだち府の前に立った。
 
 宇宙人と戦うはずの地球防衛軍が厳重な警戒に当たっており「止まれ」と彼らに銃を向けた。私がワシントンD.C.やニュー・ヨークを一人旅したのは9.11のテロの前だから今はどうだか知らないが、当時は切符さえ買えばホワイト・ハウスも国会議事堂もFBI本部も国連ビルも中に入れて、かなり自由に歩けた。ヨーロッパ人に言わせると、アメリカの警備は手ぬるいそうだ。さすがは欧州、何百年もクーデターだの暗殺だの繰り返してきただけある。


 オッチョは本当に入れてもらえると信じている様子で、「”ともだち”に会いにきた」と無造作に用件を伝えている。地球防衛軍にボディ・チェックを行うと言われて、顔を見合わせる三人であった。身体検査を受けると、注目を浴びそうな品々がいろいろ出てくるだろう。しかしそもそもボディ・チェックで何もなかったら、中に入れるのだろうか。

 そこへ親衛隊の幹部らしき男が現れて、自分たちが取り調べをすると言い出した。防衛軍は気に入らないらしいが、親衛隊の幹部は「”ともだち”にアポイントメントがある方達だ、失礼のないように」と一蹴している。

 「世界大統領」とお呼びしなくてもよろしいのでしょうか。ともあれ続いてオッチョにこっそりと、万丈目幹事長から話は伺っていますと言った。万丈目の依頼を受けたのはカンナだが、オッチョが一番偉そうにしているのでリーダーだと思われたのであろう。


 娘だから、幼なじみだから入れると真面目に言っていたのだから、この展開はカンナやオッチョにとっても意外だったはずだが、万丈目の手引きがあれば話が早そうだ。親衛隊いわく、元々このビルは親衛隊が警備を行っていた由。それはそうだろう、”ともだち”の警備担当だから親衛隊なのだ。

 ところが親衛隊によれば、その後、地球防衛軍が「宇宙人襲来に備えて」どっと入ってきたという。ここで再確認すれば地球防衛軍は万丈目の指揮下にない。”ともだち”直轄か、別の誰かの支配下か、とにかくこれまで見てきたとおり地球防衛軍のほうがずっと凶暴で、人殺しを物ともしない。


 これに対し万丈目は近衛兵たる親衛隊を率いて、クーデターを決行しようとしているのだ。ちょうど「日本のいちばん長い日」の宮城事件における近衛師団と同じように。しかし目的が反対で、これからトップを殺そうというのである。ビルの中でもう一度、ボディ・チェックがあるのだが、親衛隊はここでもチェックは済んだと通り抜けようとした。

 ここでカンナが不思議なことを言い出している。もう一度この人たち、チェックしたほうが良い。武器を持っているから。これには流石のオッチョも驚愕しているが、あっさり機関銃が見つかってしまい、ユキジの拳銃も没収された。大変、都合の良いことに、ここでは地球防衛軍が二人しかおらず、オッチョとユキジの身柄を拘束するだけで精いっぱい。


 カンナはそのまま親衛隊と共に、かつてキリコが歩いたであろう階段を昇っていく。オッチョは突然「手榴弾!」と叫んでカンナを止めようとしたが、地球防衛軍に制止されてしまった。ユキジはオッチョの行動を不審そうに見ているけれども、厳しく言えばオッチョと比べ実戦経験に乏しく、よく言えばまともな人だから訳が分からなかったのだ。

 だがオッチョはカンナの魂胆を、手榴弾で”ともだち”もろとも爆死するつもりだと見抜いている。ちなみに、これはカンナのオリジナル企画ではなく、2015年の正月にマルオがやろうとしたことと同じだ。火薬がダイナマイトではなく、パイナップルに代わっただけである。あの日、マルオは大事なことを思い出して思いとどまり、その夜、”ともだち”は死んだ。


 とはいえマルオの作戦は間違いなく自爆テロだが、カンナの場合は手榴弾を遠くから投げるという手もあるか。沢村投手の投げた手榴弾は誰よりも遥か遠く、80メートルぐらい飛んだという話を子供のころ読んだ。そんなことのために、球界の至宝を徴兵したのか...。

 ちょうどそのころ。カエル帝国の人体実験室でキリコは独り言のように、「確かに”ともだち”は悪魔よ」と言っている。「でもひとつだけ確信があった。自分の娘には手を出さない。」とも言っている。しかしそれに続けて、キリコは「だけど...」と言いよどんだ。また伝えないといけないことがあるらしい。まさか娘も人体事件をやっているとは思っていなかったろうが。




(この稿おわり)





エキスポ70のマーク。実際は青色です。今はなき東海銀行の広告。かつて同行のニューヨーク支店はワールド・トレード・センターにあって、私はそのオフィスを訪問したことがある。



質問: この万博マークとカップヌードルの共通点は?
解答: 次回のお楽しみ。







































.