おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

急ごしらえのシェルター (20世紀少年 第602回)

 第18集の197ページ、仲間を返してと迫るカンナだが、万丈目は動じない。彼の解説によると、「君の仲間を連行したのは我々ではない。地球防衛軍だよ。」であり、「私が統率しているのは親友隊だ。だが安心したまえ、彼らの取り締まりはとちらの管轄だ」そうだ。

 以前も触れたように、地球防衛軍と親友隊の業務所掌や指揮命令の境目が明確ではなく、この説明だけでは解決にならないが、注目すべきは万丈目が地球防衛軍を「我々ではない」と呼んでいることだろう。彼は友民党のトップであったはずだが、彼の手に負えない組織が出来ているらしい。


 しかもどうやら、地球防衛軍と親友隊はあまり相互に友好的ではない雰囲気が漂っている。万丈目の指揮下を離れているのだとしたら、この人殺しの集まり地球防衛軍は、誰が統括しているのか。万丈目がまだ相応の権力を持ったままであるならば、その答えは一つしかあるまい。”ともだち”の直轄部隊である。

 そもそも誰かがこっそりフクベエの遺骸とすり替わった段階で、万丈目や高須の知らない者共が”ともだち”復活の手伝いをしていたに違いないというのが私の出した結論でもあった。ともあれ、この場面ではオッチョがそのようなことは論ずるに値しないと判断し、「いずれにしても脅迫だ」と先ほどからの主張を繰り返している。


 オッチョによれば「何度も死んだふりをしてよみがえるたびに、奴はここまで神格化されてきた」が、万丈目の野心のために今度こそ本当に殺そうというのかと厳しく追及している。ちなみに正確に言うと、血の大みそかの死んだふりは信者にこそ奇跡だったかもしれないが、世間一般が知っている復活劇は万博会場だけである。

 なぜか万丈目の反応が冴えず、「何度も死んだふりか...」とボソボソ言っているだけなので、オッチョは更に言いつのり、「俺も実際に見たからな。うまくやったもんだよ」と言った。ここで彼が話題に出しているのは、2015年元日の理科室の夜の事件だ。「お面を外した遺体の顔は間違いなく服部だった」とオッチョはいう。


 「服部」に付いているルビは「フクベエ」になっている。オッチョはまだ旧友の呼び名を使っているのだ。心中複雑なものがあろう。また、仁谷神父らに俺だって信じられないんだと言っていたが、はやり彼は飴の夜、自分の見たものがフクベエであったことを信ぜざるを得ないまま、この日を迎えている。

 これに対して万丈目は「そう服部だった。あれは服部の遺体だった。」と力なく同意している。こちらのフリガナはもちろん「ハットリ」。ところがオッチョは万丈目の異変に気付いた。吹き出しに「?」とある。見れば万丈目は「カタカタ」と震えているのだ。


 痙攣でも麻痺でもなかった。「ここはどういう施設だと思うね」と万丈目は訊いた。間を措かず「シェルターなんだよ」と言われた二人は、驚いて壁や天井を見ている。見ただけでは分からないだろうなあ。「急ごしらえだがね」と万丈目は補足した。慌てて作らなければならない事情があったのだ。爆発物? 核兵器? ウィルス?

 その事情とは、「3か月ほど前の、定例会議での話だ」と万丈目の回想が続く。第14集、2015年のバーチャル・アトラクションで、万丈目はヨシツネたちとともに、ともだちマスクの男がフクベエ少年の脚を引っ張り、お前はここで死ぬんだと言ったのを見ている。それでも何も疑わなかったらしい。



(この稿おわり)




故郷の山上にある古墳。推定起源4世紀の物件。卑弥呼より少し後だ。 (2013年1月3日撮影)






 A storm is threatening my very life today
 If I don't get some shelter, I'm gonna fade away

    嵐が今日、俺の命を脅かしている
    シェルターがなければお陀仏だ

       ”Gimme Shelter” by The Rolling Stones




















































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