おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

4月7日 緊急事態宣言  (第1249回)

今回は私自身のため(今後の情報収集や理解の促進のため)、法律用語や行政用語などの整理を試みます。堅苦しい内容になります。まず緊急事態宣言について、本年4月7日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して出されたものは、前にも触れたように現在唯一の法的緊急事態ではなく、その先輩が現役です。

官邸から出ている行政文書名では原子力緊急事態宣言といいます。避難勧告の区域であるとか被災者の支援であるとか、その内容は変わってきているにせよ、現在も宣言は出たままで、カタカナ日本語では「アンダー・コントロール」と言われたこともある事態が続いています。


根拠法は原子力災害対策特別措置法で、東日本大震災における東京電力福島第一原子力発電所原発事故に際し制定されました。あの建屋が吹っ飛んだ映像は、生涯忘れないと思います。

この件では税制も変わり、ちょうど個人事業を始めて数年後ということもあって、確定申告の際の所得税と住民税の税率が上がったのを、よく覚えています。それぞれ復興特別所得税・復興復興住民税という名称で、これも今なお復興中につき継続中。なぜか復興特別法人税は、途中で消えました。やはり政府は生産者の味方です。


さて、今回の緊急事態宣言は、繰り返すと既存の法律を改正したものが根拠になっています。2009年新型インフルエンザの流行を踏まえてできた新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に、COVID-19 を加えた旨、附則第一条の二に明記されています。略称は「特措法」。

緊急事態宣言に関する規定は、特措法の「第四章 新型インフルエンザ等緊急事態措置」にあり、これを宣言することにより、第三十二条以下の条文が適用される(乱暴にいうと、政府が、ここに書いてあることができるようになる)ということです。現在は第四十五条にある都道府県ごとの「協力要請」の真っ最中です。


法律はこれくらいにして、次に行政です。まず、今年に入って新型インフルエンザ等対策閣僚会議が設置されましたが、どうやら二回だけの開催で、設置されたまま、以下述べる別の会議等で対応することにしたらしい。

推測ですが特措法が適用になったため、同法の第十五条にある政府対策会議の設置に移行したのではなかろうか。本年1月30日に閣議決定のうえ設置された新型コロナウイルス感染症対策本部です。閣議決定資料もネットにありますが省略。以下、「対策本部」と呼びますが、これが今回の緊急事態の宣言を決めて、公表しました。


行政組織に関して、ややこしいですが次に「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」、いわゆる「専門家会議」が設置されました。対策本部に対して、「医学的な見地からの助言等を行う」のが目的です。内閣のブレインですか。助言対象は医学全般のようで、範囲が広そうです。

もう一つ、新型インフルエンザ等対策有識者会議のというものがあります。ややこしい。これは、同サイトにも書いてあるように特措法に定めがあり、つまり昔からすでに上記の「閣僚会議」の下に存在しています。内閣が特措法に基づく措置をするときは、この「有識者会議」に諮る。


もっとも、通常、報道等に登場するのは、「有識者会議の下に、基本的対処方針等諮問委員会を開催します」と書かれている「諮問委員会」のほうです。こちらは単に一般的な助言だけという立場ではないようで、3月26日の閣議決定に、以下のとおり記されています。

2 基本的対処方針等諮問委員会
(1) 有識者会議の下に、基本的対処方針等諮問委員会(以下「諮問委員会」という。)を開催する。諮問委員会は、次に掲げる意見を、内閣総理大臣又は法第 16 条第 1 項の新型インフルエンザ等対策本部長に対し述べることとする。
①  法第 18 条第 4 項に基づく意見。
②  ①に掲げるもののほか、新型インフルエンザ等の発生時の対策に関する必要な意見。


上記の①は、政府の「基本的対処方針」の策定時に意見具申をするという法定の責務です。②は具体的には書いてありませんが、特措法の第三十二条に、緊急事態宣言を出したときは①の基本的対処方針を変更すると書いてありますので、緊急事態宣言の発出・変更・延長・解消の際には、不可欠のはずです。

では、4月7日の緊急事態宣言の際における首相官邸の行動を拝見します。新型コロナウイルス感染症対策本部(第27回)が開催されました。冒頭の説明で確かに、午前中に諮問委員会を開催したとあります。


また、宣言内容としては、その期間を、本日、令和2年4月7日から5月6日までの1か月間とし、実施すべき区域は、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府兵庫県、及び福岡県の7都府県とすると議事にあります。周知のように、これはいずれも変更になり、期間が現時点で5月31日まで延長されており、実施区域も全都道府県に拡大されました。

最後にこの情報が、われわれ一般の国民に、どのように届いたのかを同日の記者会見の議事録でみます。私個人にとって印象が強かったのは、何より次の一節です。

専門家の試算では、私たち全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます。


零細の個人事業(特に私のようなフリーランスなど)は、日により月により年により、他の人との接触機会は大きく増減します。それに、うろ覚えですが、確か医学者は8割と言い切っていたと思うのですが、7割でも大丈夫なのか。そして、この8割減というのは、月曜日から金曜日まで働く人たちの発想で、週に一日、出勤すればよい。私は目分量。

また、この議事録には、イタリア記者との責任論の問答もありました。議事に「これは、例えば最悪の事態になった場合、私たちが責任を取ればいいというものではありません」とあります。音声のほうは「私たち」なのかどうか不明瞭ですが。


ともあれ、上の「私たち全員が努力を重ね」からすれば、もし7割か8割かにつき未達があり、ピークアウトしなければ、私たち全員が努力不足の責任を負うとしか読めないのに、そういうものではないという。私は何か勘違いをしているのでしょうか。そもそも最悪の事態とは何か。

日本人全員が病死したら間違いなく最悪だが、まさか、そこまで想定してはみえますまい。続きに海外の状況が出ているし、質問にも他国との比較が出ていますので、ここは世界で一番悪い事態(死者や感染者の数なり、経済的な損失なり)といったあたりですか。延長するときどういう評価・表現だったか、いずれ確かめて再考します。



(おわり)


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満月の夜でございました  (2020年4月7日撮影)














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