おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

5月5日 ドクター・アイ・フェン  (第1265回)

今回のタイトルにある5月5日という日付は、歴史的な意味合いは無くて、これから書く内容を載せた雑誌が、ネット書店から拙宅に届いて読んだ日です。まずは、雑誌を買うきっかけになったネット記事のご案内。

執筆者は日本在住の中国人ジャーナリストの劉燕子(リョウ・イエンツ)氏。記事の日付は2020年4月26日。ソースが文藝春秋5月号となっていたので、記事を読み、雑誌を買いました。まず「文春オンライン」にある同ネット記事のタイトルは、「中国当局に拘束されたのか? 新型コロナ告発後に“口封じ”された武漢・女性医師の現在」。


「口封じ」というのは、いきなり消されたというのではなくて、後述するが、病院の幹部に口止めされたことを指す。なお、私が買った雑誌の記事は、文藝春秋の有料記事で、途中まで無料で読める。第1222回で話題にした李文亮医師と同じ病院で働いていた救急科主任の艾芬(アイ・フェン)医師の手記および後日譚からなる。

その手記は本文冒頭にあるように、中国共産党系の月刊誌「人物」に3月10日に掲載された。雑誌は販売と同時に回収・発禁の処分。ネット記事も2時間後に削除された。しかし、同国のネット・ユーザーもさるもので、甲骨文字、点字、絵文字、数字の暗号、モールス信号、QRコード、外国語等に翻訳し、インターネットで広めた。

甲骨文字とは、流石お見事。その概要は、本社がアメリカにある多言語メディア「大紀元」が、早くも3月12日に報じており、中国という国家の底知れぬ恐ろしさと、中国人の底力を伝えている。


2019年12月16日、彼女の勤め先病院の救急科に高熱の患者が搬送され、同22日、コロナウイルスが検出された。患者は武漢の海鮮市場で働いていた人だった。同様の患者の搬送が続く。12月30日、同僚からの報告で、ウイルスは「一本鎖」のRNAウイルス、多臓器に及ぶ特殊な肺炎「SARS型」と知らされて、「全身に冷や汗」が出た。

第1262回で参照した黒木先生の資料にあった、変異しやすい型のようです。SARS治療の経験者に見せたところ「これは大変だ」となり、カルテの「SARSコロナウイルス緑膿菌、46種口腔・気道常在菌」という箇所を赤い丸で囲み、キャプチャ画像を多方面に流した。李医師が受け取ったのもこれで、確かに赤い丸がある。


この12月30日には、武漢市衛生健康委員会から「勝手に情報を公開するな」との通知が届き、1月2日には病院の幹部から出頭を命じられ、「口封じ」がなされた。「戻ったら、救急科200人以上のスタッフ全員にデマを流すなと言え。ウィーチャットやショートメールじゃだめだ。直接話すか、電話で伝えろ。だが肺炎については絶対に言うな。自分の旦那にも言うな……」。


1月20日、鐘南山博士(国家衛生健康委員会専門家グループ長で感染症研究の第一人者)が、COVID-19の「ヒト―ヒト感染」を発表した。鐘南山博士は、SARSを収束させた功労者だそうです。しかし海鮮市場が封鎖されたのは1月2日なのに、すでに彼女の病院にくる患者は増え続けている。ほとんどが家族感染だった。

1月21日、アイ医師によると「救急科は1523名の患者を診察しました。通常の最も多いときの3倍です。その中で発熱している患者は655名です」。1月23日、武漢市は封鎖された。ウイルスの蔓延で、彼女はお子さんを人に預け、夫と外泊を続ける日々となり、下の子は母を忘れた。


劉燕子氏のネット記事に戻ります。3月29日、アイ・フェン医師が行方不明になったという報道がオーストラリアであった。4月13日、アイ医師はSNSに、自らを写した動画を載せて「私は大丈夫」と述べた。これは今もネットで見ることが出来る。
https://www.weibo.com/u/2662574464?refer_flag=1005050010_&is_all=1#1591846816493

このサイトは6月になっても、更新され続けている。私の下手な翻訳アプリでは、何が書いてあるのか、さっぱり分からない。誰が書いているのかも、もちろん分からない。



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かきつばた  (2020年5月3日撮影)

























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