おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

7月15日 感染経路  (第1277回)

本年7月15日、菅官房長官は午前中の記者会見の席上、「市中感染が大幅に広がっているという状況にはないという認識だ」などと述べたと、ニューズウィーク紙日本語版ほかにおいて報道がありました。違和感を覚えたのは私だけではなかったようで、我が家の会話でも、ネット上でも、認識が甘いのではないかという論調でした。

私の周囲(家族親戚や仕事の関係者で直接知っている人)の中で、今のところ陽性反応が出た人はおらず、検査を受けていないが高熱などで寝込んでいるという人も、一人もいない。知り合いの知り合いに何人かいる程度ということもあって、コロナウイルスにおびえている人は聞く限りいない。でも単に度重なる出来事を通じて、国際・都政に不信感を抱いています。


このあと東京は200人を遙かに超える感染報告数を出し、とうとう我ら都民は「go to トラベル」キャンペーンの参加資格を剥奪され、同時にキャンペーンの立ち入り禁止区域内になった。東京駅で乗り換えない方が良いですよ。しかし、それは15日の段階では確実には分からない未来のことなので、14日までの数値を確かめてみようと思う。

東京都の公式サイトから、スクリーンショットを貼ります。丸数字と太字は私が付けたタイトルです。①新規陽性者数、①新規陽性者数、③検査の陽性率、以上三点。15日午前中の記者会見前日にあたる7月14日の数値は、見ていて楽観できるものとは思えない。菅官房長官も、話の続きでは感染経路不明者や中高年の感染者が増えていることに注意を促している。


①新規陽性者数
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②新規陽性者数における接触者等
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③検査の陽性率
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今回は政治の話題ではなくて、医学の用語の基礎的な勉強です。前回も触れた、この「市中感染」と、もう一つ、更に聞きなれない「エアロゾル感染」とは一体何ぞや。これから登場回数が増えそうな気もするので、このあたりで確かめておきます。

市中感染という言葉は、COVID-19の感染拡大前にも聞いたことがあるはずだと想像するのだが、記憶に残っていない。むしろ、自分には今のところ縁が無い「院内感染」のほうが、はるかによく聞いてきた用語という印象がある。こちらは新たに聞いた病原菌の名前と一緒に覚えた。記憶ではノロウイルスO-157 でした。


専門用語の提議や解説を専門家に求めると、話が分かりづらくなる一方なのは十分経験済みなので、ここは一般向けの語義を辞書で調べます。いつも愛用しているコトバンクデジタル大辞泉)のお世話になります。冒頭に「(英語表記)Community-acquired infection」とあるから、国際的な学術用語です。

病院内で体内に摂取された微生物によって引き起こされる感染症である「院内感染」と対をなす言葉で、病院外で摂取された微生物によって発症した感染症を指す用語。社会生活をしている健康人に起こる感染症で、多くは体外から侵入した病原体により発症する「外因性感染症」である。厚生労働省は2020年2月17日、新型コロナウイルスに関して「市中感染」を防ぎ、感染拡大を食い止めるため、医療機関受診の目安を公表した。(2020-2-18)


すなわち大雑把な理解で充分な私にとっては、市中感染とは院内感染と対比して使われる用語であり、病院外で、平凡な社会生活をしている我ら普通の人が感染する。屋形船で市中感染が起き、院内感染を招きました。

病院は物理的に閉鎖的な環境ですから、ほとんど患者か医療関係者の間で伝染が起きる。これと比べて市中感染は、あくまで確率が高いというレベルで、家庭内とか職場・学校、夜の街と推定しているに過ぎない(それはそれで予防には重要です)。

そういう観点からすると、上図②において、接触歴不明等不明者数(図では緑色の破線)の一週間移動平均が上がり続けていた時期とは、すなわち院内感染以外の割合が増えているという意味ではないのか。夜の街も市中です。


いまさら菅君の言語表現を槍玉に挙げても時間の無駄なので、次の難題「エアロゾル感染」に移ります。多くの医学系のサイトを斜め読みしていくと、感染経路の代表格としては、もうすっかり耳に慣れてきたが、「空気感染」、「飛沫感染」、「接触感染」があり、COVID-19の場合、「飛沫感染」と「接触感染」が主であると聞いて参りました。

これに対して最初に「おや」と思ったのは、ときどき話題にしている「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」において、トップページの新着情報にある7月6日付の「古川俊治先生の総説」という論文を拝読したときです。


SARS-CoV-2 の感染性は、エアロゾル状態で3時間、プラスティクやステンレスでは72 時間までは認められた 。[いわゆる「空気感染」を、否定すべきでない]。青字は特に記憶すべきところ、[カッコ]内は個人的意見との注釈がある。今回の新型コロナウイルスは、環境の変化にけっこう強いらしい。ダーウィンの意見を聴きたいな。

当方にとってエアロゾルというのは、気体中に小さな粒子として液体・固体が漂っているというイメージです。衛生管理者の資格を持っておりますので、有機溶剤や金属などがエアロゾルの状態で職場の空気中にあるときは、粉じんなどと呼ばれる。タバコの煙もそうで、どうも印象が良くないものが頭に浮かびます。


気象現象に例えると、飛沫が雨なら、エアロゾルは霧。さらに、空気感染となると、もう唾液の水分もなしで威力を失わないということであれば、まるで花粉症みたいなものです。そして、7月10日、これもニューズウィークですが、WHOが前日9日の新たなガイドラインにおいて、エアロゾル感染があると認めたと報じました。

これは私たちの日常生活において、どのような注意、警報となり得るのだろうか。私の生活範囲でいうと、スーパー、コンビニ、飲食店、クリーニング店のみなさんは、透明のビニール・カーテンや、アクリル板の仕切りで、またこちらはマスクで、主に飛沫感染を防いでいる。接触感染はアルコール消毒液で、われらの手やドアノブなどを消毒している。


これらは引き続き、重要で不可欠の方策です。一方、煙や霧のようなエアロゾルでも感染が起きるのであれば、シールドや間仕切りだけでは不足です。カーテンがあるからといって、マスク外して、大声を出してはいけないということになります。

シールドなどに加えて、衛生管理者の試験に出て来る強力な換気装置(焼き肉屋や喫煙室のように煙を吸い込んだりするものなど)に類するものが必要で、すでに私が通院している歯医者さんでは、小型の局所排気装置を使い始めています。


医療従事者が当初からほとんど全く通気性のないマスクや防御服を着ていたのは、この可能性を見越してのことだと思います。われら一般人には無理な話なので、ここは基礎に戻って三密のうち「密閉」(換気なし)を避ける習慣を、今まで以上に重視せねばなりますまい。

自宅のエアコンは室内の空気の還流装置であって、換気装置ではない。外は蒸し暑いが、時には窓を開けて風を通さないといけない。正直なところ、密集や密接と比べて軽視していたので、ここに自戒の念をこめて書き残します。特に同居者がいる場合、外出自粛だけでは不足だったというのが、次の波を覚悟している今の私の見解です。



(おわり)



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コゲラが飛んだ日  (2020年7月15日撮影)













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