おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

進化型 (20世紀少年 第665回)

 寄り道もほどほどにして「20世紀少年」に戻ります。第20集の94ページ目。ケロヨンとマルオの目前で、キリコは防御服を脱いだ。ヘルメットを外すだけでも十分ではないかとも思うが、Tシャツ姿になったのは多分、締切った部屋が暑いのでしょう。ソバの花は夏から秋にかけて咲く。

 外の二人に「あなた方は、脱いじゃだめよ」とキリコは釘をさす。この絵とこの台詞は私に、かつての加藤茶による「あんたも好きねえ」を思い出させるのだが、ここでは不謹慎であろうか。あの「タブー」のイントロの入り方は毎回、手を変え品を変えながら絶妙というほかなく、まさに至芸であった。

 ロサンゼルスで接待係だったとき何度かストリップ劇場に行ったが(客は二次会で悪い遊びをしたがるのだが、彼の地ではストリップ劇場が一番安全なのだ)、音楽はレッド・ツェッペリンやダイア―・ストレイツなどで、この世界にもお国柄というものがあるらしい。うちの近所の浅草では、ストリップ劇場が多くの文士・芸人を育てたことで有名だが、今はどうなっているだろうか。


 また話がそれた。キリコによると2002年ごろ「ドクター山根が生み出したウィルスの進化型が次の兵器になることは確実」であるという。これが私には少し読みづらくて、山根が生み出したのが「ウィルスの進化型」なのか、「山根が生み出したウィルス」の進化型があるのか。前者であれば西暦を終わらせたウィルスはまだ旧型であり、次が山根の最終作品であるが、後者だとすると西暦の終わりは山根のウィルスであって、次がその進化型である。

 後者の場合、キリコは進化型を入手しなければワクチンの開発はできないはずだ。しかし、彼女は続けて「遺伝子レベルで徹底的に研究したわ」とだけ言っているのみで私の悩みはついに氷解しないまま。まあ、いい。山根ウィルスは山根の死後、勝手に進化したのかもしれない。そもそも進化は、生物が勝手にやってきているのだから。ウィルスは生物ではないと多くの科学者は言うようだが、顕微鏡写真を見るとなー。


 キリコは噴霧器のようなものにスイッチを入れた。「シュー」という音を立てて、何かが噴出している。彼女はそれを”最終ウィルス”と呼んだ。驚き怒る二人の男であったが、キリコは平然として、新しく自分が作ったワクチンを、もう自分に投与してあると語り続ける。マルオが「人体実験!?」と叫んだ。キリコの顔に浮かぶ水滴は、汗かそれとも最終ウィルスを含む液体か。

 24時間以内に私に何かあれば私の敗けとキリコは言う。そして私に何もなければ「人類の勝ち」と言った。長髪が聞いたら喜びそうなスケールの大きな話である。負けたら自分の責任で、勝ったらその功績は人類に譲るというのだから、これはとても謙虚な態度である。

 
 ここで第5話が終わり、次のページから第6話「”ともだち”は誰!?」という第20集の見せ場が始まる。第12集では”ともだち”の正体をケンヂの仲間一同が突き止めていったが、このたびは遠藤母子がそれぞれの立場で、この謎に迫る。まず登場するのが機関銃と拳銃に弾薬を装填するオッチョとユキジ。

 ユキジはピストルを見やりながら2000年を思い出して、「何度持っても嫌なものね」と不快感を表している。オッチョも「ああ」と調子を合わせてはいるものの、確かにこの男は殺人こそしないけれど、銃を手にしたくらいで動揺するような人物とは思えないのだが...。それより彼はカンナのことが心配そうである。


 カンナ嬢が選んだのは手榴弾であった。彼女は丸い爆発物を見つめながら何やら考え込んでいる。その計画は後にオッチョが説明してくれる。それにしてもヨシツネはこんな物騒な武器をどこで調達してきたのだろう。氷の女王一派も銃器をたくさん持っていたが、あるいはタイと中国のマフィアのお下がりではなかろうか。

 カンナが見上げる空に「ともだち府」の巨大な塔が立ち、その先端には後ろにいるオッチョおじさんから盗んだ俺達のマークが乗っかっている。娘だから、幼なじみだからという理由で入れるものかどうか、ぜひ試してもらいたかったのだが、検問では意外な展開が待っていたのだった。



(この稿おわり)




菜の花  (2013年3月19日撮影)










































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