おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

白山通り   (20世紀少年 第153回)

 これから何回かかけて、血の大みそかの夜に巨大ロボットが残した足跡をたどる。物語の本質と何の関係もない。ただ単に、私が東京の地理や歴史に関心があるからだけです。

 巨大ロボットが地上に出現したのは白山通りである。第5巻95ページ目では彼(彼女か?)が小学館の前に立っているが、小学館の本社ビルは白山通りに面している。また、第3話の冒頭、「白山通りから靖国通りに入り...」という現場報告が出てくる。

 
 この通りの名称には由緒がある。今でも白山通り沿いには、白山神社があり、白山という地番もある。白山神社は、現在の石川県と岐阜県の県境、律令制度下では加賀・越前・美濃の三国にまたがる白山の神様。千年以上の歴史がある山岳信仰である。ちなみに、曹洞宗の総本山、永平寺の鎮守の神様でもある。


 文京区のサイトより。「創開は古く、天暦年間(947〜957)に加賀一宮白山神社を現在の本郷一丁目の地に勧請したと伝えられる。後に元和年間(1615〜1624)に2代将軍秀忠の命で、巣鴨原(現在の小石川植物園内)に移ったが、その後五代将軍職につく前の館林候綱吉の屋敷の造営のため、明暦元年(1655)現在地に再度移った。この縁で綱吉と生母桂昌院の厚い帰依を受けた。」

 神社庁のサイトによると御祭神は、「菊理姫命(くくりひめのみこと)伊弉諾命(いざなぎのみこと)伊弉冊命(いざなみのみこと)」。御由緒は、「当社は天暦二年(948年)に加賀一の宮白山神社武蔵国豊島郡本郷元町に奉勧請したのが始まりで、将軍家の信仰が厚く、明治期には准勅祭社に命ぜられました。縁結びの神として崇められた神様でもあります。境内は六月に紫陽花が咲きみだれます。」

 一の宮とは、延喜式に定められたその国一番の神社のことであるから、加賀国では白山神社がリストのトップであったのだ。そこから国々に勧請(営業店進出みたいなものか)されたものの一つが、お江戸のこの白山神社である訳だ。白山神社は全国に多数あり、例えば岐阜県揖斐川町の旧春日村川合のような山深い村落にもある。


 さて、白山通りは南端が内堀の平川門。そこからほぼ北に伸びて、巣鴨を抜け、板橋、赤羽、大宮、浦和そして高崎と進む。すなわち、古来の中山道であり、白山神社もそれに面していたのであろう。山手線内では、白山通りの下を都営三田線が走り、白山という駅もある。小学館三田線神保町駅の上あたりにある。

 起点の平川門は、江戸城の内堀に今も残る門の名。江戸時代の地図にも、たいてい載っている(ときどき省かれている理由は、大手門や半蔵門のような主要な門ではなかったからだろう)。竹橋の東隣。平川の名の謂われは、先ず間違いなく江戸時代まで、神田川が平川あるいは江戸川と呼ばれていたことによるものだと思う。この点については次回。


(この稿おわり)



平川門 (2011年10月30日撮影)






おまけ。神田の秋の空とメタセコイアの木。(同日撮影)