おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

第三章は一難去ってまた一難  (第1331回)

 
 先ずは今の知識だけで憲法を読んでみようと始めたものの、ずいぶん時間と労力をかけたのに、まだ二章九条。早くも弱音が出ております。想像以上に長引いているのは、外的な要因もある。第1章を終えた途端に、天皇陛下の譲位のお話しが出た。

 そして第2章はちょうど8月になっていたので、どうしても戦争関係の報道などが増えるから、影響を受けている。政治の議論は避けたいと書いたものの、国防軍については、かなり批判的な論調になったと思う。しかし、第1章と第2章は、皇室や軍事のことは秘密も多いし、良く分かりませんという端折り方が出来た。


 ところが、第3章は「国民の権利及び義務」である。つまり私や家族や子孫の日常生活に直接かかわっている。良く分からないでは済まない。分からないところがあったら、早めに勉強しないといけない。変わるなら、どう変わりそうなのかを正確につかんでおかなければならない。

 しかも、長い。第2章は三十一箇条もあって、章別では条の数が一番多いのだ。これはまた時間がかかりそう。では、さっそく第10条からです。これは、改正草案でも仮名遣いが変わっただけで、内容の変更は無い。現行の憲法では、こうなっている。
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。


 前文が「日本国民」で始まる割に、要件は出番が遅いですな。ともあれ、これを定める法律とは、「国籍法」で間違いない。その冒頭にそう書いてある。
国籍法 (この法律の目的)
第一条  日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。

 補足すると、国籍法は戸籍法にも言及しているので、この両者で規定されているという理解で宜しかろう。日本国民になるタイミングは、出生・認知・帰化・再取得とある。なるほど。ところで、若いころ皇室には戸籍がないと聞いて驚いたものである。もっとも、皇室典範の第26条に、皇族は「皇統譜」に登録するとあるから、ちゃんとリストはある。でも、なぜわしら平民と一緒にならないのか。


 かつて遠い田舎の村で、確か江戸時代の人別帳を見せてもらったことがある。これが戸籍のご先祖なのだろうが、面白いことに戸主の名前だけで、それ以外の家族は男○人、女△名と書いてあるだけだった。人頭税だけの時代は、これで十分だったわけだ。

 今は世帯別に所得見合いで税額や社会保険料が決まるし、年齢にも左右されるので、むしろ戸籍より住民台帳のほうが実用されているはずだ。でも何となく戸籍は好きだな。古いものは住所の変遷などもあって歴史も楽しめる。

 戸籍に登録してあるのは漢字だけなので、住民票などの用事で届け出るに際して、氏名は何と発音しても構わないはずだ、本当は。そして、皇室は歴史的には、税金を納めるほうではなくて集金するほうの側にいたから、戸籍は要らない。


 第3章の筆頭である第10条で日本国民の定義を明確にしているのは、そのあとに続く各条項において、個々に定める権利が誰に保障され、義務が誰に課されているか、範囲を明確にする必要があるからに相違ない。ここが憲法と法律の相違点の一つでもある。

 一般に国内法は、国籍には関係なく居住地により適用の対象者が決まる。日本だけではなくて、外国も同様。日本に住む外国人は日本の刑法を守らないといけないし、その代り労災や失業手当も条件を満たせば給付を受けることができる。郷に入っては郷に従う。


 外交官特権を除けば、外国人なのに国内法を守る必要が無いという決まりがあったら、治外法権です。沖縄を始めとする米軍基地は、正式にか実態上か知らないが、ややこしい決まりがあるようで、よくこの治外法権でもめている。これで更にTPPで関税自主権を失ったら、安政の大獄時代に逆戻り。

 さて、他方で憲法は現状、日本国民が定めているだけあって、権利・義務も日本国民を対象とするものが多い。ただし、全てではないので個々にみていく必要がある。例えば刑法違反で捕まった外国人であっても、憲法の定めにより拷問は厳禁である。
 

 ところで現在の改憲議論は、余りに第9条に集中しすぎているように思うのだが、いかがだろうか。後にまた触れるが、憲法の改正案が国会を通過したとして、国民投票は改正内容のすべてに賛否の票を一枚投じるのではない。

 関係する「かたまり」(例えば、第9条シリーズとか)ごとに問われる。だから、第9条だけ真剣に考えて、あとは適当に流してしまうと、自分の権利義務が何時の間にか変質してしまうかもしれない。何度でも書くが、憲法は国家権力に私たちが制限を課すものだ。彼らは権利と義務に当然、敏感である。また疲れそうである。






(おわり)






虹。わずか数分で消えました。
(2016年8月19日、夕方撮影)











































.