おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

いま忙しい  (第1254回)

 今回で「第四章 国会」の第一次独学を終わります。章の終わりに近いとはいえ、三権分立の支えとして重要な条項だと思います。

【現行憲法

第六十三条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。

【改正草案】

内閣総理大臣等の議院出席の権利及び義務)
第六十三条 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、議案について発言するため両議院に出席することができる。
2 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、出席しなければならない。ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。

弾劾裁判所
第六十四条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律で定める。

(政党)
第六十四条の二 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。
2 政党の政治活動の自由は、保障する。
3 前二項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。


 章の最後まで、よくわからない改正草案である。都合で逆順に進む。最後の第64条の2という改正草案の新設条項は、やや意味不明である上に、必要とも思えない。第1項と第2項は、すでに集会、結社、思想の自由が保障されている以上、ここで繰り返す必要はない。存在できない政党とは、公の福祉に反するものだけだ...。

 ここで言いたいのは、たぶん第3項で、きっと集合離散を繰り返し、雨後の筍のように増殖する政党を、法律で束縛したいのでしょう。明日は我が身。過去も振り返ろう。すべての法律の明確な拠り所を、憲法に書いていたら切りがないだろう。そういえば、自衛隊の根拠規定は?


 第64条の「弾劾裁判」について、改めて条文を読むと「両議院」と書いてある。やっぱり、衆議院は解散・お留守ばかりしていてはダメだ。弾劾とは、他では聞かないおどろおどろしい言葉である。糺して裁くという意味らしい。

 海外では議員や大臣も弾劾される制度があるらしいのだが、なぜか日本では裁判官のみ。ここでいう法律とは、「裁判官弾劾法」というらしい。なお、詳しい説明や、過去の実例などは、次の政府サイトに詳しい。
http://www.dangai.go.jp/lib/lib3/danhou.html


 最後に残った第63条。現行規定は項目一つだが、改正草案は二つに分けた。二つ目にだけ追記したいことがあるからだ。前半は、国会において国務大臣が、意見を述べる権利。後半は、質問に回答する義務。いまの憲法は明快です。

 これに対し改正草案は、権利のほうは温存しつつ、後者の義務に「ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。」という適用除外(守らなくても良いという例外)を設けた。


 日本語がおかしくないか。主語はたぶん国務大臣なのだろう。そのあとの「職務の遂行上特に必要がある場合」というのは、職務の遂行上、何の必要がある場合なのだろう。必要がある場合ではなくて、「履行できないとき」ではなかろうか。

 ここで求められているのは、必須の義務としてまずは「出席」であり、次に出席してから国会に求められるのが、「答弁又は説明」です。このうち何を例外にしたいのだろうか。


 現実問題として、「答弁又は説明」は、いくらでも、はぐらかしたり、先延ばしにしたり、間違ったり、議事録から削除したりと、われわれ下々も国会答弁を参考にさせていただきつつ日々の仕事に活かしているから、いまさら憲法を改正することもあるまい。最近は倒錯的ながら失敗例も参考になる。

 要するに、出席したくないときは、国務に多忙ということになるのだろう。この例外の追加は、まず間違いないと思うのだが、後出の緊急事態条項に出てくる、閣議決定の国会による事後承諾に関わる。なんせ緊急事態だ。いくらでも、「いま忙しい」が通る。やれやれ。





(おわり)






夕暮れのテニアン島
(2017年1月11日長男撮影)





































.