おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

I, Robot   (第1023回)

 第8集において大みそかのケンヂは「こんなもの俺は、ロボットとは呼ばない」と、巨大物体の正体を見て叫んでいる。3年前には「こんなものは俺は、ロックとは呼ばない」とも言っていた。今般は趣味嗜好の問題どころではないのにレトリックが同じである。奴は不細工でも動く機械であることに変わり無いのだが、なぜロボットとは呼ばないのだろう。

 さらに言えば、「21世紀少年」に出てくる二代目はロボットなのか違うのか。ロボットの概念論は、いずれサダキヨ先生の登場を待つとして、私見ではケンヂの描いた絵も、そのモデルになった鉄人28号も、一目瞭然でこの巨大ロボットとの違いとくれば、腕があることだ。とても全体が人型とは言えない工作機械の産業用ロボットも、アームがあって手作業の代行をしてくれるからロボットなのだ。

 
 それ程ひどい見当はずれでもあるまい。代表格は文字どおり、鉄腕アトム。「火の鳥」のロビタにも、R2D2にも腕がちゃんとある。きっと、みんな気になるのだ。この伝で行けば、ドローン機はロボットではない。そもそも殺人兵器は、アシモフの三原則にも反する。

 もっともアメリカ映画は、この三原則に興味が無いようで、エイリアンやターミネーターのシリーズを観ていると、スマホのソフトに名前を奪われる前のアンドロイドは、善玉悪役ひっくるめて、みんなロボットと呼んでいる。


 さて、お金持ちでも頭が不調な悪党は、大みそかまでに腕付きのモノマネ巨大ロボットを作れなかった。あの本体に手足が付いたら、ハンプティ・ダンプティみたいになってしまうな。ただし、操縦席は作っている。ウィルスの噴射口のすぐそばという危険な場所だが、モンちゃん曰く「何も考えないで突然動き出す」ケンヂはそこに乗り込んだ。

 映画ではこのシーンで唐沢ケンヂが拳銃を構えているから、運転手がいることを前提に攻め入ったのだろう。しかし、席に乗っかっていたのはマネキン人形で、顔にケンヂと書いてあったから、さあ、本人は怒った。最後の手段、ダイナマイトと時限装置を使う決意をする。でも移動に手間暇がかかり、世紀末まであと3分しかない。持ち時間はウルトラマンと同じ。第15ラウンドの矢吹丈と同じ。


 雑談です。もう三十年くらい前、イギリスのBBC放送が毎年恒例のエイプリル・フールのニセ報道において、ロンドンの顔「ビッグ・ベン」がデジタル時計に変わるとやらかした。これにはBBCではなく持ち主の政府に苦情が殺到したそうで、今年もどこかの会社が謝罪していたが、BBCもお詫びのうえ翌年は4月のおバカでも分かる嘘にした。

 すなわち、日本の自動車会社の工場において、朝礼で社歌を歌えと命じられたが歌えなかったロボットが、責任をとって切腹したというニュースである。いまだにハラキリのイメージがあったようだ。本邦を代表して言い返す。イギリス人は自動車づくりのセンスが無い。ボンドカーを見ればわかる。自動車とくれば、偶然だろうが、日独伊だろう。


 BBC騒動の何年かあとに流行ったのが、スティックスの「ミスター・ロボット」で、歌手のロボットもやっぱり部品はメイド・イン・ジャパンである。劈頭、「どうもありがとう」とロボット氏に感謝している点は評価する。なお、このバンドの曲では「ボート・オン・ザ・リバー」が好きだった。短調マンドリン演奏が良い。

 意味不明だが、その歌詞に「すべての道は静かの基地に通ず」という箇所がある。「静かの基地」とは、アポロ11号が着地した「静かの海」の着陸地点周辺のことで、あの星条旗を立てたところだ。遠いが、そこに行くと歌い手は機嫌が良くなるそうだ。なお、全ての道がローマに通じるのであれば、自動的に、全ての道は我が家にも通じている。


 映画のケンヂが大みそかの夜、”ともだち”に向かって叫ぶセリフは、ほとんどが漫画と同じなのだが、とても残念なことに私の好きなケンヂの一言だけが漏れている。「そのお面も、その塔も、俺たちの子供の頃の思い出だ。おまえみたいな、クズに使われたくない。」と彼は言っている。お面そのものに、彼は何の悪意も持っていない。その逆だったのだな。

 そして彼がロボット好きなのは、言うまでもない。第7集に大阪万博の話題が出てきて、みんなで行きたいパビリオンを五つずつ出して決めようというオッチョの提案が通る。みなさん、希望先が違っていて、調整が大変だったのだ。ケンヂは結局、彼のみ行けなかったのだが、この場面では彼だけが「フジパン・ロボット館」だけは外せないと頑張っている。


 しばらく前、大阪に仕事と私用の両方で行ってきました。今回は時間が無く、痛風も不安で万博跡地には行けなかった。そのかわりというのも変だが、新大阪の駅の上を飛行機がブンブン飛んでいるのを初めて見た。大阪府民の大先輩に訊いたら何を今さらという感じで、何でも伊丹の空港がすぐそばらしい。なるほど地図で見ると、元万博会場と大阪国際空港は同駅から同じくらいの距離にある。

 千里も今は「その塔」しか残っていない。永遠にやっている万博なんかないのだ。もっとも、大阪では2025年に再び万博を招致しようとなさっているらしい。このタイミングで、来る東京オリンピックがらみの間違った「おもてなし」が国際問題になってしまっている。本当ならば責任重大だ。私と同じような仕事をしている方は、またあの会社かと思っていなさることだろう。最高裁までいった事件の当事者である。代りにオリンピックをやらせろと言っているロンドンもはしたない。


 それはさておき、フジパン・ロボット館は、なぜ国内屈指のパン屋さんがロボットに注力したのか謎であるが、高度経済成長の締めくくりのような時期となった大阪万博にふさわしい未来都市の一面をとらえた。さすがは大阪、人材豊富で、プロデューサーは手塚治虫が担当している。我が家の古い万博の本には、「鉄腕アトムでおなじみの手塚治虫氏」と紹介されている。同パビリオンのテーマは「子供の夢」。

 オッチョ少年が指摘しているように、大阪万博アポロ11号の月着陸船は模型だったが、先日の話題に選んだアポロ8号の司令船は、太平洋から拾い上げた本物のカプセルが展示された。また、上記「静かの基地」も再現されていたと書いてある。がんばろう、大阪。あと9年なら何とかして長生きする。今度こそ行きます。おじさんの夢。




(この稿おわり)






間もなく当機は伊丹空港に着陸いたします。
(2016年5月21日、新大阪駅前にて撮影)







睡蓮鉢にメダカの仔、誕生。まだ影のほうが目立つ。
(2016年5月13日撮影)






 You are wondering who I am.
 Machine or mannequin ?

    ”Mr. Roboto”  Styx




















































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