おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

身分保障  (第1360回)

 今回と次回は司法の条項のうち、第77上および第78条。まずは、いまの憲法と改正草案の比較からです。


【現行憲法

第七十七条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

第七十八条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。


【改正草案】

最高裁判所の規則制定権)
第七十七条 最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

(裁判官の身分保障
第七十八条 裁判官は、次条第三項に規定する場合及び心身の故障のために職務を執ることができないと裁判により決定された場合を除いては、第六十四条第一項の規定による裁判によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒処分を行うことができない。


 赤字にした部分が、表記上の相違点です。第77条のうち、第1項は同じで、内容は司法府におけるルールや事務手順を、最高裁が定めるという規定になっている。

 つまり最高裁は、われわれに直接関係することとして「これで最後の裁判を行う」というだけではなく、司法組織の内部統制も行うという強力な権限と責任を有する。

 
 そして、第1項に弁護士(民間)、第2項に検察官(行政)が出てくるが、いすれも、裁判沙汰の場合は、最高裁の決め事に従わなければならない。検察官の説明は、検察庁が私や子供向けにサイトを準備してくれているのでご参考まで。
http://www.kensatsu.go.jp/child/child2.htm

 改正草案では、第77条第2項において、この「検察官」に加え、「弁護士その他の裁判に関わる者」が加筆されている。私には意味不明。例えば、原告・被告・証人のような当事者のことなのだろうか。これは草案起草者に訊かないと分からないので宿題にします。


 改正草案の第78条に付け加えられている二か所のうち、「次条第三項に規定する場合」というのは、国民審査のことで次回の話題にします。もう一か所の「第六十四条第一項の規定による裁判によらなければ」とは、既出の弾劾裁判所のことです。

 そういえば弾劾裁判所は、前回の第76条に出てきた「特別裁判所は、これを設置することができない。」には該当しないらしい。また、今回と次回にわたる裁判官の人事(任命や罷免に関すること)は、けっこうややこしいので次回に整理します。


 とはいえ、次回は長い条項なので、少し先だって予習をします。「分限」という言葉が、改正草案の追加事項として出てくる。人事院のサイトに、分限制度の概要説明がありました。民間で言えば、降格、休職、解雇にあたります。ただし制裁の処分ではなく、能力や勤怠に関するもの。
http://www.jinji.go.jp/saiyo/jinji_top/ninmen/2-bungen.pdf


 つまり、裁判官に限らず国家公務員は、身分保障という羨ましい法制度があり、人事院の決まりに引っ掛からなければ、降任・休職・免職はない。こういう身分の変更(出世以外)を分限というらしいが、懲戒とは異なると明記されている。

 すなわち、悪事を働かない限り、左遷もクビもない。第78条は、裁判官に限っての身分保障ということになるという理解です。





(おわり)




 



梅雨空と撫子

(いずれも拙宅のバルコニーより、2017年6月6日撮影)





































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