おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

改正  (第1378回)

 正しく改めると書く。現憲法にその前例はないが、改めるときは、より正しいものにしなくてはならないし、私たちとしては「誰にとって、正しいのか」を注視しないといけない、ということを自民党改正草案は教えてくれます。さすがは最大与党だ。

 今回はいまの憲法と、この改正草案の相違点をはっきりさせるところから始める。今日は総論的なもので、次回が各論。それでは、いつものように併記します。第2項もある。なお、緊急事態条項がはさまったため、ここから章の番号が一つ違いになっている。


【現行憲法

第九章 改正

第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

二 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。


【改正草案】

第十章 改正

第百条 この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票過半数の賛成を必要とする。

二 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、直ちに憲法改正を公布する。


 すでに、各所で指摘されているように、大きな違いは、次の三つだろう(上記において青や赤の太字の部分)。これが「改正」だと仰っています。
1) 両院の総議員の「三分の二」を、「過半数」に変えようとしている。
2) 国民投票において、「有効投票」を追記しようとしている。
3) 第2項から、「国民の名で」を削ろうとしている。


 また、ご参考まで、大日本帝国憲法は、「補則」という名の章に改正条項がある。両議院総員の「三分の二以上の出席」かつ「三分の二以上の賛成」が必要。さすが明治男は硬派だ。

 加えて、「補則」扱いといい、付議は「勅命をもって」といい、むやみに改正するなというメッセージが出ている。もっとも明治憲法では、天皇神聖にして侵すべからず(第三条)だから、勅命が出れば改正になるだろう。こういう仕組みにすると権力が何を欲しがるか。

第七章 補則
第七十三条 将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
二 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス




(つづく)




9月というのに拙宅バルコニーは南国風。
(2017年9月12日撮影)































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