おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

人権派   (第1237回)

 国民の権利及び義務の規定集のうち、残りはあと四か条。私が読んだ範囲では、改正草案とは字句の手直しぐらいの違いだと思うので、気づいた点を挙げる程度にします。今回は第37条および第38条。改正草案は省略して、今の憲法の条文のみ。

第三十七条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
2 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
3 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。


 下世話なことから始めると、長年、刑事ドラマや推理小説などを楽しんできているので、民事の用語より刑事の用語のほうが、何となく馴染みがございます。昔は探偵がヒーローだったのだが、今や刑事さんこそ正義の味方が必要なときに欠かせまい。でも憲法は厳しい。

 第37条は、被告人の人権と呼んで差し支えあるまい。凶悪犯の裁判が始まると、われらの世間話やネットでは、ときに「人権派弁護士」に対する故なき批判が飛び交う。確かに、変な人もいた。でも弁護士法の第一条には、こう書いてある。基本的人権の擁護と社会正義の味方を使命とする。

 (弁護士の使命)
第一条  弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2  弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。


 第38条は、ときどき疑惑の種になって報道や言論の対象になる。私は静岡の生まれ育ちなので、小さいころから街角にたくさん貼ってあったポスターや横断幕により、「袴田事件」の名を知っていた。いまだに、袴田さんは外を出歩く死刑囚なのだ。ご年齢からして、残された時間は少ない。

 第三項は、正直申し上げて知りませんでした。「自分に不利な自白だけ」では、検察も裁判に勝てないのか。言われてみればその通りだ。特に冤罪が文字通り致命的な結果を招く刑罰に至る場合は、証拠も証人も動機もそろっていないと危なくて仕方がない。今回は簡潔に終わります。




(おわり)




うちのマリモとヌマエビ (2017年2月26日撮影)