おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

8月14日 後遺症  (第1281回)

新型コロナウイルス感染症の「後遺症」という言葉が、報道でもインターネットでも、しばしば見受けられるようになったのは、7月になってからだろうかというのが、私の漠然とした印象です。当事者にとっては時間の経過が、また、研究者や行政官には事例の積み重ねが必要です。

季節性のインフルエンザであれば、運悪くお亡くなりにならなければ、何日か後に職場や学校にごく普通に戻って来ます。私も風邪をよく引きますが、治った後は休んで疲れが取れたせいか、前より元気になったような気がするほどです。


しかし、COVID-19の場合、国内でも海外でも、症状が治まり、PCR検査の結果も陰性になって、治った筈の人たちが引き続き、あるいは、しばらく経ってから時を措いて、治療中と同様の症状、または、それとは違う病状も訴えるようになるらしい。

すでに個々人の訴えのレベルを超えて、医学的・統計的な調査研究も進んでいます。8月14日付の東洋経済オンラインの記事によれば、さすが経済誌だけあって、医療費というコストの観点から、この課題について報道しています。


後遺症という言葉が厳密にどう定義さえるのか知りませんが、治った後なのに他に心当たりのない不調が続くという程度の広い意味で考えます。本件は世界中で報告されているということなので、範囲は広くて構わないと思います。

この記事を読むと、肺などに呼吸障害が残り息苦しさが続くというような症状は、元の病気が「新型肺炎」だけに、私などは「リハビリには時間がかかるかな」という感覚で済ましてしまいそうです。


しかし、他にも心臓や腎臓に悪影響が出ると聞くと、これは呼吸器系とは別の生命維持装置(循環器系)ですから、そんなところにまでこのウイルスは影響するのかと驚く。しかも、なかなか終わりが見えず、良くなったり悪くなったりもして、長く続くらしい。

同種の記事としては、FNNの倦怠感や頭痛や息切れが続くという7月27日付の報道があります。これによると、日本でも厚生労働省が8月から後遺症の実態調査を行うというから、看過できない事態になっているようです。


もう一つ、こちらはCNNの8月2日付の記事で、こちらは聴力の低下や耳鳴りなど、聴覚障害の報告です。こうもあちこち調子が悪くなると、精神・神経科の領域も心配になってきます。

さらに、症状が重ければ場合によって再入院ともなると、仕事も出来ず学校にも行けず、経済的にも苦しさが増します。それに、いたずらに不安をあおりたくありませんが、まだ治療薬も予防薬もなく、ガンのように再発する可能性を否定することができません。


後遺症というと、個人的には交通事故のあとの、むち打ち症を想起します。あれも、時間が経った後で出ることが少なくないようです。せっかく事故のショックから立ち直ったのに、というストレスも大きいはずです。

ちなみに、これは後遺症とは言えませんが、私はCOVID-19よりも、交通事故のほうが怖いです。家族の中で一番かわいがってくれた祖父と、最初の職場で公私ともに一番お世話になった先輩、この二人を交通事故で亡くしているのが大きい。外出時は感染より車のほうが恐ろしい。


話が逸れました。COVID-19は、残念ながら国内のみならず、どうやら外国においても、悪質な差別や攻撃の対象になっています。そして感染者だけではなく、どうやら後遺症に苦しむ人たちも含まれている様子です。なぜなら彼らも常に匿名、モザイクですから。

いまネットを使って、ブログやTwitterに流れて来る彼らの訴えを、キーワードなど使って検索しながら、まずは情報を浴びています。どんなことが起きているのか、概要をつかむのが先決という段階です。


この後遺症の件については、またしても横文字の新語ですが、「サイトカイン・ストーム」という用語が、かなり当初の段階から目にしていました。ということは、COVID-19に特有の現象ではなく、感染症で起きるのも珍しくないということだと理解しています。

サイトカイン・ストームは、「免疫の暴走」などという、おどろおどろしい訳し方をされています。この朝日新聞の5月22日付の記事によれば、論点が後遺症ではなく、重症化を招く要因の一つとなっていますが参考になりそうです。



免疫というと、われらの健康を守ってくれるというような柔らかい印象を持ちますが、感染した細胞に立ち向かい、病原を破壊するという意味においては、攻撃的な機能です。普段はこれが「暴走」しないように、われわれの体もセイフティ・ネットで縛っているらしい。

しかし、SARSのときにも報告があったそうですが、感染した箇所のみならず、他の健康な細胞まで損傷してしまう事態が起きると、急速な反応が起きる。例えば、肺の細胞が片端から悪くなると、急激に人工呼吸器が必要な重症になる。


さらにこの絵図でこわいのは、肺だけではなく右のほうに書いてありますが、他の臓器すなわち心臓や腎臓なども、攻撃の対象となってしまうことがある。ガンの転移と似ています。あり得る、と直感的に思います。

ここでのサイトカイン・ストームは劇症化の説明という位置づけですが、慢性化した場合・後遺症という観点からも、無視できない作用だと思います。体内のことですから、ビクビクしていても仕方がないのですが、覚悟はしておかないといけない。

まだまだ分からないことが多い病気なのですから、当面は慎重に、日常の予防と体調管理を怠らないように致しましょう。



(おわり)



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食事中のコサギ  (2020年7月23日撮影)





















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