おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

8月3日 ワクチン  (第1280回)

しばらく更新が滞りました。理由は二つ。短期的に仕事が忙しかったこと。もう一つはまだ続きそうですが、政治にしても医学にしても、COVIC-19 関連の情報が、ここ東京の陽性報告数と同じように急増しており、ただでさえ暑さで不調な頭の中が混乱しています。

先日、WHOのおなじみテドロス事務局長が、新型コロナウイルス感染症の「特効薬存在し得ない可能性」なるニュースが流れ、私は以下に申し上げる理由により今さら何をという程度の印象だったのですが、家族や世間はそうでもなかったらしい。


記事は現在、例えばヤフーニュースで見られるので、名高きヤフコメと併せてご覧ください。親類で先輩のSARSやMARSのワクチンが、まだ無いのです。テドロスさんの評判のせいで、悪い方に出たか。

では実際に事務局長はどんな文脈で、この話題を出したのか、WHOのウェブサイトに公式記録がある。8月3日の記者会見の発言内容です。このサイトは、アラビア語版や中国語版があるのに、日本語版がないのが気に入らない。人口か。


さて、冒頭はデータを挙げつつ、引き続き世界中で緊急事態であると述べています。その次に、ワクチン開発の現状と見通し等についての箇所があります。英語のまま一部、転載します。

A number of vaccines are now in phase three clinical trials and we all hope to have a number of effective vaccines that can help prevent people from infection.

However, there’s no silver bullet at the moment and there might never be.For now, stopping outbreaks comes down to the basics of public health and disease control.


多くの開発中のワクチンが、「phase three clinical trials」にあります。医学薬学の用語らしいので、米国政府の保健当局のサイトを拝見します。なお、クリニカル・トライアルは、辞書に出てきます。臨床試験

すなわち臨床試験の第三段階にあるそうで、日本語のサイトによっては「第三相」と訳してある(日本薬学会さん)。薬事法令に厳密な規定がある。そう簡単に世の中には出せません。

aidsinfo.nih.gov


WHOとしては、その成り行きに期待しつつ、ハウエヴァ―、現時点では「銀の弾丸」(米語で特効薬)は無く、これからも出来ないかもしれない。当面は爆発的な感染を防ぐには、公衆衛生と疾病対策の基礎に拠ることとなる(私訳です)。例えば手洗いやマスク着用。

お得意の断定的な表現ではなく、ここではまっとうだと思う。しかし一方で、ここ日本だけではなく、きっと世界中でワクチンの開発を待っている人たちが大勢いるのは間違いないと思います。高齢者、基礎疾患患者、妊婦等々、命に直結する課題です。

しかもCOVIC-19 は、世界的に差別や攻撃、隔離や自粛(すなわち社会経済活動の制限)を招いています。したがって、冷静で専門的な議論・情報だけでは、人心は落ち着かない。だからといって、イソジンか...。


医学者や政治家が根拠のない楽観論ばかりまき散らす訳にはいきません。私は医療職ではありませんが、衛生管理者と社会保険労務士の資格で安全衛生関連の仕事をしています。安全衛生の基本中の基本は、安全策。人体実験は相成らん。

さて、私が最初にワクチン関係の記事を真面目に呼んだのは、前掲山中博士のサイト、「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」にある7月6日付の「ワクチンに求められる4条件」


ここでは学術論文を参照しつつ、安全性と有効性の確認が強調されています。ワクチンには、一般向けのサイトにも出てきますが、病毒性を思い切り薄めたもの(生ワクチン)と、病毒性を取り除いて(不活化)かつ効果のあるものがあります。

いずれも、原材料は病毒(COVIC-19 の場合は、新型コロナウイルス)ですから、本当に接種しても大丈夫なのか、何段階もの慎重な手続きを経て確認作業が行われます。さらに上記文中にあるように、人によっては副作用的に体調悪化をもたらすおそれもある。


もう一つの有効性も、よく話題に出ます。ワクチンが安全であっても、有効な抗体が殆んど出来なければ意味がない。個人差があるから、本件でいうと高齢者や基礎疾患の持ち主に、効くのかどうかも重要です。

私の補足ですが、子供のころ、一生その病気には罹らないと言われて痛い注射を我慢していた結核や麻疹(はしか)や破傷風なども、どうやら十数年か二十数年くらいの有効期限しかないらしい。これは、やってみないと分からないのですが、早々に失敗となるおそれはあります。


さらに追加で、もうひと方、強力な論者がいなさる。こちらもニュースになりました。本庶佑京都大学特別教授です(さっきからなぜか京大ばかり)。がん治療の権威です。

さて、いくらノーベル賞受賞者でも山中氏や本庶氏は、ウイルスの専門家ではないという根強い反論というか、もう嫌悪と言ってもよいほどの毒素を吐き続ける現政権信者がいます。五月蠅いな。私に言わせれば、両氏は人体の専門家です。


本庶特別教授の論考としては、本年の文芸春秋8月号に載った記事を、同社がネットで紹介したものがあります。総理大臣の楽観論に対し、「現実離れした話」と手厳しい。印象に強く残った理由は、2ページ目の冒頭にある次の箇所です。

「インフルエンザのワクチンを打っても効かないことが多いのは、流行している間に、ウイルスの遺伝子が変異していくからです。遺伝子が変異してしまうと、ワクチンが効きにくくなったり、まったく効かなくなったりするのです」


ウイルスの変異については、多くの研究者から一般論としても、新型コロナウイルスの話題としても、良く出てきますし、ここでも記事に致しました。増殖する際の複製ミスが多いらしい。実際、いまの欧米のCOVIC-19 は別の病気であるかのような被害を出しています。

想像の枠を拡げて考えれば、「遺伝子配列が異なる」等の背景事情があるならば、仮に欧米でよく効くワクチンが開発され、安全性も認められて売りに出されたとしても、日本人に有効だという確実な保証はないはずです。


WHOお墨付きの銀の弾丸が出たとしても、私は当分、様子を見ます。人を押しのけてでも注射を打ちたがる人が、近所の永田町や霞が関トップには大勢いそうなので、まずは臨床試験の続き(第四相)をしていただく。

それでも大丈夫となったら、供給が需要に追いつくまで、ハイリスクの高齢者や病人にお譲りします。別に恰好つけているわけではなくて、そういう教育を受けてきた世代だから、何度タイタニックが沈んでも順番を譲ります。そうしないと酒が不味い。


最後に、これまで読んだ中では初心者でも大変わかりやすいワクチンの説明があるサイトをご案内して終わります。「ワクチン・アジュバント研究センター(CVAR)」という、当方はじめて知りましたが国立の機関です。

www.nibiohn.go.jp



(おわり)



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善福寺川アオサギ  (2020年7月24日撮影)













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