おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

4月30日 補正予算  (第1260回)

2020年4月30日、令和二年度の補正予算が成立しました。これを書いている5月下旬には、もう第二次補正の編成に入っていますので(閣議決定済み)、今日の話題は「第一次補正予算」と書き添えた方が誤解せずに済む。もっとも、以下の資料には第一次とは書いてなくて「補正予算」です。第一次世界大戦の当時、第一次とは呼んではいなかったはずです。

そのころ大流行したスペイン風邪が、このたびすっかり有名になりました。でも私は子供のころから、少年誌などで読んで知っていました。当時の流行の恐ろしさを知っている人たちが、まだ大勢、生きていたからです。今の子は将来、コロナを語るのだろう。


この一次補正において、生計の補償・消費促進の目玉だった一律十万円の給付が正式なものとなりました。政策も、予算の裏付けができるまでは、いわば政権公約のままです。これで固定資産税が払える、と私は安堵しました。今となっては、その十万円と固定資産税の請求書のどちらが先に駆け着くか。両方揃うまで払いません(追記:税金の督促が先に着いたところです)。

こうして4月3日に開催された記者会見においても、総理の会見では補正予算の成立と一律10万円の給付が、対で公表されました。中小企業・小規模事業者への支援も含まれています。また、ご褒美に加えて、そつなく緊急事態宣言の延長も公表されました。首相官邸のサイトに会見の記録があります。


この延長については、多くの人が既に「やむなし」と覚悟していたのではないかと思います。4月下旬は、首都圏や関西、福岡や北海道でも、まだ新規の感染者報告が減少の気配を殆んど見せていませんでした。それに、どっちみち連休中で家にいるだけとなると、しばらくは軟禁状態のままです。

むしろ会社や個人は7日以降の対策(在宅勤務など)が気になり始めたころでしょうか。それに、この会見の席上では、どの時期まで延長するかどうか明言されていませんので、業種や学校や健康状態など、立場によって人それぞれの心配があったはずです。


補正予算に戻ります。冒頭、「先ほど、事業規模117兆円、過去最大の補正予算が成立いたしました」とあります。これまでも(多分これからも)国家予算には直接の関わりがない私ですが、この機を措いて他に勉強の機会はございません。まず、事業規模とは何だ。

日本経済新聞の用語解説によると、「事業規模 政府が国費などから直接出す財政支出(真水)に対し、予算措置に伴って動く民間資金などの金額も加えて算出したもの。経済対策がどれほどのインパクトを与えるかを示す目安となる。たとえば政府が民間金融機関の融資について利子分を負担した場合は、融資の総額が事業規模に加わる」。


つまり国家予算に加えて、それに連動して動くであろう民間の資金など、広義の経済活動の規模的拡大効果も含めた推定値、期待値ということのようです。文中の「真水」という言葉もよく聞きます。これについては野村證券さんのサイトに説明があったので拝借します。「GDP(付加価値)を直接増やす効果のある対策」。

勿論この事業規模という概念、数字は重要です。されど、民間のどの分野が活性化するかを見通すためには、真水の中身すなわちどのセクターでどのように幾ら使われるのかを知りたい。この先、人それぞれ自分や勤務先に、どういう影響を及ぼすのか。では概観します。


まずは担当省庁の財務省のウェブサイトにある「令和2年度予算」のページです。関係者以外立ち入り禁止の様相を呈しています。負けずにスクロールすると、下のほうに「補正予算」があり、4月30日に政府案どおり可決したとあります。

この「政府案」をクリックして、さらに「令和2年度一般会計補正予算(第1号)フレーム」を拝見します。これから税金が追加で使われる、その予算額は256,914(億円)。約24兆7千万円です。


上掲の説明では、これがそのまま「真水」かどうか分かりませんが、ともあれ、国庫が負担する純増の財源です。もう少し分かりやすい解説を、東京新聞の記事で読みます。総額が財務省の表と同じです。事業規模117兆円の計算方法は分かりませんが、そのうちの四分の一弱です。この資金は先ほどの財務省の資料によれば、全額、国債で賄われる。

後輩、子孫に借金のツケを先送りいたします。あまり気分の良いものではないと思う一方、このまま、その子孫さえ満足に残せないような衛生上、経済上のカオスを招いてはいけない。だから、使い途が極めて重要です。この東京新聞の記事と似たものは、財務省も一般向けの資料をネットに載せています。
https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2020/sy020407/hosei020420b.pdf



財務省東京新聞の両者を並べると分かりやすく、まず、総額256,914億円は全額がCOVID-19 対策ではなく、一部は「国債整理基金特別会計へ繰入」であり(詳細不明です)、本体の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関係経費」は、255,655億円であり、内訳が(1)から(5)予備費まであります。

金額的に大きいのは、一律10万円(全国全ての人々への新たな給付金)の128,803億円です。おおむね日本の人口(一定期間居住する外国籍の方も含む)を1億2千万人とすれば、たしかに一人10万円の勘定になります。


ここで記憶に新しいのは、この時点で本来もっとも重視されるべきであるのは医療関連と今なお私は思いますが、それに該当するはずの「(1)感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」は、18,097億円であり、総額の一割にも満たないため、ずいぶん話題になった(追記:減額の予定との追報がありました)。

それ以外は端的にいうと経済政策です。この経済産業省の資料を見れば明らかです。経産省は経済官庁ですから、マクロ経済に責任があります。特に中小・小規模事業者等への様々な支援策は、当時も今もこれからも喫緊の課題です。これは6月に入って、またしても疑惑を招き、いずれ話題にするかもしれません。


この時点で注目されたのは、そのネーミングの妙と、少なからずの金額で目立った「Go To キャンペーン事業(仮称)【1兆6,794億円】」でした。小項目で四つ、観光、飲食、イベント、商店街は、もっとも困っている業態です。しかし批判者からは、緊急事態が続く中で、これはもっと先のことだろうという当然の指摘が出ました。


f:id:TeramotoM:20200527152101p:plain


この点は、この第一次補正予算で強化すべきものかどうか、私には分かりかねており、むしろ、これに続く第二次補正予算を含め本年度予算全体における規模という問題だと思います。苦しんでいる業界へのPRや応急手当だって、政府がなすべき事柄の一つですから、やめろとは申しません。

ただし必要条件として、保健医療分野の資金手当てが、先行し且つ十分になされていればでありましょう。さらにいえば、教育や保育なども混乱や人手不足で大変な状況だというではありませんか。国家予算なのですから、全体のバランスというのは不可欠です。このご時世に、マクロ経済の成長が最優先という発想はないだろう。


アメリカの経済紙に「フォーブス」という雑誌があります。長者番付で名高い。日本語版もありますが、ここでは英語版のサイトから引用します。和訳のアプリで確認すれば十分です。日本の写真が多い。それも観光地。

タイトルでほのめかしているように、どうやら日本国は国費で、外国人が観光で来日する際、もしかしたら国費で半額を負担してくれるかもしれないと期待しているようです。経済産業省の上記資料では、該当期間中の旅行商品や、飲食・宿泊などが支援対象になっています。先般、話題にした鴎外荘などは遅かった。


フォーブスも、これが外国人に適用されるか等の詳細は分からないと書いています。私も各資料の文面上では分かりませんが、日本は昨年まで、ここ東京も、北海道のスキー場も、京の祇園も外国人であふれていました。観光業や一部の小売・サービス業が、インバウンド抜きでは殆んど維持できないであろう構造になっているのは周知のことです。

「Go To キャンペーン事業(仮称)」の対象になっている業界への支援とは、すなわち外国人旅行者に対する「おもてなし」予算になるであろうことを覚悟しておいたほうがよい。私などには一文の得にもならないかもしれませんが、これは長い目と広い視野でみないといけないことですから、今の段階でどうこう言いません。というか、もう十分言いました。



(おわり)


f:id:TeramotoM:20200430070934j:plain

芍薬  (2020年4月30日撮影)









.