おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

3月25日 文化とメディア  (第1242回)

今日の本題に入る前に、同じ2020年3月25日に行われた、東京都の小池知事による会見の記録を見ます。「緊急記者会見」と報じているマスメディアもあります。2日前の「ロックダウン発言」の影響もありましたし、このころ東京では感染者数が増加しつつあった。

特に屋形船の乗船客ほか、COVID-19 の検査、外来、入院を引き受けていた台東区の永寿総合病院において、院内感染と推測される感染者が見つかったと会見の冒頭にあります。永寿総合病院は私の家族も、大変お世話になったことがある立派な病院です。


このころからだと思いますが、特措法において責任と権限を任されている都道府県知事がニュースに出てくる機会が多くなりました。それぞれ感染の状況も、補償を念頭に置いたときの財政状況も異なりますから、違い・特色が出てきます。ご参考まで都と国とのやりとりについて、4月に入ってからのものですがNHKのサイト記事があります。

各業種とも、ずいぶん不安があったでしょうし、これからも変更があるでしょうから落ち着きません。ちなみにリンクを貼った両方に、ライブハウスが出てくる。キャバレーと同じ業態に分類されている。ライブハウスの業種変更を命じた者は、この両者に行ったことがあるのだろうか。職業に貴賤はないが、歴然とした違いはある。


ともあれこの時点では自粛先行であり、補償はこれから考えるという時期でした。この春、途中で気温が下がり、東京はあの三連休のみならず、次の週末も桜が満開で、とうとう上野の花見がバリケードで遮られてしまった。3月28日の早朝撮影。

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同じ3月25日、欧州で積極的な動きを見せていたドイツは、政府案の総額7500億ユーロ(約90兆円相当)の財政パッケージを連邦議会が承認した。この補正予算は全額を新規国債の発行による資金調達する。ニュースウィーク誌の記事があります。補償の対象者に、フリーランスや芸術家が含まれております。返済不要。

私は最初にこの出来事を、山中伸弥博士のサイトで読んだ。先日、専門家より智者を選ぶと申しましたが、そのお一人です。この文章は、上記のニューズウィーク日本語版ではもう少し長い(2ページ目にあります)。転載します。


「非常に多くの人が今や文化の重要性を理解している」とするグリュッタースは「私たちの民主主義社会は、少し前までは想像も及ばなかったこの歴史的な状況の中で、独特で多様な文化的およびメディア媒体を必要としている。クリエイティブな人々のクリエイティブな勇気は危機を克服するのに役立つ。私たちは未来のために良いものを創造するあらゆる機会をつかむべきだ。そのため、次のことが言える。アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ。特に今は」と述べ、文化機関や文化施設を維持し、芸術や文化から生計を立てる人々の存在を確保することは、現在ドイツ政府の文化的政治的最優先事項であるとした。


なぜか私はこの2ページ目が最初に検索で出てきたため先に読み、グリュッタースって誰だと思った。ドイツだからゲーテやカントのような歴史上の人物かと思いきや現役でした。ご本人のサイトがある。議員であり閣僚でもある。

「文化相」という肩書で翻訳されているものが多いが、第二外国語で選んで単位をもらったドイツ語がなぜか読めず、それでも「für Kultur und Medien」なら見当がつく。文化とメディアのご担当です。しかし、この両者、どれほど関連するのだろうか。日本ほか他国でも、閣僚の肩書などで、よく文化とコンビになるのはスポーツです。


これは私が、メディアと聞いてマスメディアしか思い浮かばなかったための混乱です。要はマスコミ、大手報道機関だと勘違いしてしまうと、すぐに文化とは結び付かなくなってしまう。全国紙にライブハウスが載るとしたら、たぶん広告欄か火事でも出したときぐらいで、記事本文に大々的に報じられることはまず無い。

メディアは情報媒体のことだから、CDも動画サイトも葉書も、お若い人は知るまいが、糸電話もメディアです。上記の都知事会見の議事録を読むと、小池知事もSNSはメディアだと語っている。COVID-19 に関する限り、私見ながらマスコミよりも、ネット情報のほうが豊富で早くて正確だと感じることのほうが、ずっと多い。酷いのも多いですが。


うちの近くの上野恩賜公園には、国立や都立の博物館・美術館・文化会館などがあり、いま残念なことに閉まっているが、あれらがあってこそ芸術と接することができるのだから、一種のメディアです。歩いて北斎ゴッホ縄文土器を観に行けます。グリュッタースの言うとおり、文化とメディアは多様性を体現している。

手話は指や腕の動きだけではなく、手話者の口の動きなど表情と併せて読むのだと先日のドキュメンタリーで観た。だからだろう、演者の後ろで手話をする方々は、マスクをしていない。いまや透明なマスクやガードを開発中だそうです。その国ならではの独特な表現があるので、外国同士で通用しない。手話は文化にしてメディアです。


もうずいぶん前になるが、橋下大阪府知事財政再建のため、文化関係の予算を大幅に削った時、山崎正和が激怒して新聞に長い長い弾劾文を書いた。大阪の財政は大変な危機的状況にあったと記憶しているので他も削ったのかもしれないが、読んで山崎さんの言う通りだなと思ったのをよく覚えている。保存しておけばよかった。

マスメディアではあまり取り扱わないようだが、オリンピックは私が子供のころから、運動の競技だけではなくて、美術の展覧会や音楽会も同時開催している。来年、東京大会が実現すれば、担当は文化庁、頑張ってください。金になるようなことばかりやっていると、ひとの生命の維持に無関心になる。



(おわり)




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上野恩賜公園にて  (2020年3月24日撮影)





















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