おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2月25日 政府の「基本方針」  (第1231回)

前回の題材にした専門家会議の見解(PDF版)を踏まえて、翌2月25日に、「新型コロナウイルス感染症対策本部」(本部長は内閣総理大臣)より、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」が発表されました。

昨日の今日ですから、これがこの先1~2週間の瀬戸際における政府の基本的な方針であることに異論はございますまい。この内容はかなり詳しく報道されて、私のようにゆったり構えていた者でも、以下の出来事などにより、よく覚えています。基本方針の主旨は、その第一段落における現状把握が基礎になっていますので引用します。

新型コロナウイルス感染症については、これまで水際での対策を講じてきているが、ここに来て国内の複数地域で、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生しており、一部地域には小規模患者クラスター(集団)が把握されている状態になった。しかし、現時点では、まだ大規模な感染拡大が認められている地域があるわけではない。


これを受けて、次の段落に「小規模患者クラスター(集団)」への対策重視が強調されています。これは今も影響力を持っており(4月中旬時点)、例えばNHKのニュースでは、かならず感染者数の棒グラフの内数に、感染経路不明の人数が示されている。それらはもう何割という割合に達しており、医学的に意味があるのなら止めてとは申しませんが、人を不安に陥れる効果がある。都知事が使っている「調査中」のほうが良いな。本当に調査しているなら。政治家と報道は言葉を選ばないといけません。

現時点ではすでに、「三密」が今なお意味のある警戒信号であるにしろ、今やもう「どこに行くと危ないか」ではなくて、「誰に近寄るにも覚悟が要る」段階ではないのですか。例えば、初期のころ、手洗いと比べて強調度が低かったマスク着用の要請であるとか、ソーシャル・ディスタンシングとか。この件はおいおい確認します。


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三密 たまには冗談の一つも添えないと、やっていられないこの世界


話を元に戻すと、この2月下旬の時点では集団発生の場に注意というのが、かなり強く宣伝されていた記憶があります。基本方針にも出てくるライブ・イベントが代表ですが、外出全般の自粛、特に人が大勢集まる場は、密室・密閉でなくても警戒するべしという雰囲気が漂い始めていた。

時期的によく覚えているのは、間もなく始まるセンバツ高校野球、大相撲春場所プロ野球Jリーグのレギュラー・シーズンなどをどうするかという議論が始まりました。春場所の「無観客開催」が決まったのは3月1日。

しかし逆の言い方をするなら、センバツと異なり、大相撲は中止や延長にはならなかった。基本方針における「現時点の対策の目的」には、「社会・経済へのインパクトを最小限にとどめる」と明記されている。年齢的にいうと高齢者の重症化が危険ともある。平たく言うと現役の社会人は、社会経済活動を続けてくれということで、テレワークも一例として挙げられています。


この議論が今なお続いています。「経済を回す」という意味不明の言葉が盛んに飛び交っていますが、社会経済活動を重視する人たち(政府中枢を含む)と、保健医療対策を重視する多くの生活者が混在しており、その中間あたりで私はウロウロしています。この両者は二律背反とまでは言わないが、両立させ続けるのは容易なことではありません。このたび増えたボキャブラリーの一つ、ロック・ダウンは期間限定で後者を最優先する方策です。

政府中枢と書いたのは、当てこすりでも何でもなく、どうやら国内外から指摘されているようですが、パンデミックの渦中にあるのに、内閣の主導役が厚生労働大臣ではなくて経済再生担当大臣です。生活費の補償より、生産と消費の助成が優先しています。


私自身は、このころ「社会・経済へのインパクトを最小限にとどめる」ことについて賛成でした。何しろ、2月末には3月に予定していた公私の約束事が次々と中止・無期延期になり、手帳に残った予定は会議一件と、歯科一回だけになりました。結果的にも、その二件だけが約束で日時の決まった外出になりました。

個人事業主ですから、こんな調子では破産です。ついでにいうと、4月5月も似たような状況で、さいわい昔からサービス業の実質テレワークなので、ありがたくも書類仕事を頂戴して糊口をしのいでおりますが、小売や製造のみなさんは、もっともっと大変なはずです。漁業も苦しいとお聞きしました。


一方の社会活動となると、私にとっての代表格は医療と教育です。もちろんその現場で働く方々にとっては経済活動なのですが、サービスを享受する側にとって、病院や学校は社会インフラストラクチャーです。当時は不明にも、医療現場がこのあと大変な苦境に陥るとは想像していませんでした。今はどんな状況なのか。我が国のみならず外国でも、酷烈な環境に置かれているそうです。

そして、教育現場については、上記の基本方針に、特段の具体的な方策は示されておりません。しかし、どういう経緯があったのか未だに知りませんが、いきなり基本方針策定の翌々日、2020年2月27日、私の人生でも初めて、全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで、「臨時休業を行う」という政府の要請が出た。



(おわり)



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上野寛永寺  (2020年2月25日撮影)




















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