おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2月27日 臨時休校  (第1232回)

学校や教育委員会で働く教育関係者や、児童生徒・保護者のみなさんにおかれては、記憶に新しい出来事が今日の題材です。タイトルの「2月27日 臨時休校」で検索すると、各地方自治体などのサイトから、悲鳴が聞こえてくるようです。拙宅は職業も家族も、これに直接かかわらなかったので驚いただけだったですが、当事者はそうはいかない。

聞くところによると、このころ既に台湾では、生徒が1人感染すると学級閉鎖で、2人目が感染すると休校になるという行政措置をとっていた由。これを手本にしたのかもしれませんが、台湾のような段階的処置ではないし、時機が時機だった。政府から「臨時閉校」の要請が出たのは2月27日(木)の声明で、閉校の開始日は3月2日(月)からでした。


これは拙かったのではないかと、あれこれ書きます。他のことも同じく書いてきました。その主体が日本国政府都道府県自治体であることが多いので、どうしても政治批判的になりますが、事の性格上やむなし。ここでは選挙運動を目的とはしていません。

さて、これは単にショート・ノーティスであるばかりか、直接子供たちに伝える日が翌28日(金)しかない。大半の保護者が知ったころには学校は閉まっていたはずです。先生方は、ものすごく大変だったはずだ。では事前にある程度、学校は内定で知っていたのかどうか。


ここに文部科学省の通達で、令和2年2月25日付の「事務連絡」があり、この別紙を読むと一斉臨時休校の要請通告の二日前、教育現場ではケース・バイ・ケースの対応が求められていたと読めます。

個別対応も、それはそれで大変ですが、インフルエンザなどが流行ったときも同じだし、民間企業も官庁も同じです。それが、いきなり日本全国を対象に、閉めてくれと言われたことになります。先ほど時機が時機と申しました。これから学校では3月を迎え、終業式や卒業式、期末テストや入学試験の時期を迎えます。2011年3月11日、あの時もそうでした。


この件について行政府内の意思決定は、令和2年2月27日、総理大臣官邸で行われた第15回新型コロナウイルス感染症対策本部の会議議事録に残っています。発言者は内閣総理大臣

判断根拠は一昨日(2月25日)に決定した政府の基本方針。この政策の目的は、「感染の流行を早期に終息させるため」であり、「患者クラスターが次のクラスターを生み出すことを防止する」ことを目標とし、手段は「徹底した対策を講じる」、すなわち先行した北海道や千葉家に千川市の例を参考とし、「全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請します」。


これを聞いて子供も保護者も教師も地方自治体もたまげただろうが、かれらの立場にない私は、もっと理屈っぽく考えました。教育委員会なら知り合いが何人か勤務中または勤務経験があります。戦前の軍国主義教育の反省から、できるだけ教育当局に独立性を持たせる位置づけで、地方自治体ごとに置かれているはずです。

個別の学校でイジメなどのトラブルがあると、中央や報道に吊るし上げられるのも、逆説的に上記の経緯を証明しているようなものです。それを完全に無視して、しかも小中学校で行われている義務教育の義務と権利を一方的・実質的に剥奪するのは憲法の趣旨に反する。子供を危険から守るのは大人の役目ですから、反対しようがないが不愉快でした。


この強硬措置の反動は、やがて休日の公園や観光地の人出がなかなか減らないという、普通の家族による日常的な行動として出てきてしまう。それは先の話として、ここでは当時の反響について、まずびっくりしたことに、できたばかりの専門家会議から「聞いていない」という抗議が出ました。そもそも、25日付の委員会の「見解」に書いてない。

このことは本稿を書いている時点で、まだ議事録がアップされていないが、2月28日の衆議院予算委員会で議論になった。その場で出た専門家会議の委員の発言の一つ、「全国一律に小中高校の休校を要請するという、国民に大きな負担を強いる対策を、現時点ではとるべきではないと思う」は、他のネット情報にも残っている。


それらに拠ると、要するに科学的根拠があってのことではなく、政治的判断だったと首相も認めている。繰り返しますけれども、その政府が25日に公表した前回の「基本方針」にも明言されていない。手続き的には不適当です。「トランスピアレンシー」とやらに欠けておりましょう。

このあと、専門家会議を攻撃する言動が、主にネットに流れるようになった感じがします。私は反論した委員のお一人を個人的に存じ上げており、そう長い間ではありませんが、一緒に同じプロジェクトにかかわった時の実感からして、人柄は信頼しています(医学的な能力は知りません)。だから単なる無責任な言説には耳を貸さないことにしています。


何が追加の判断根拠になったのか知らないですが、予算委員会の首相答弁も、クラスター発生の防止の一環であることが強調されており、その目標自体はこの時点、学校が真っ先でよいのかどうかは別として、異論はなかったように思う。

となれば野党の質問にあったように、この25日から27日までの間に追加で、さらなる危機に対処しないとならない事態が発生したか、その懸念を生じさせるような情報がもたらされたか。そうでないと急転直下の説明がつきません。それが何なのか分かりませんが、次回はこれに関連するかもしれないことを話題にします。



(おわり)



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サクラソウ  (2020年2月25日撮影)






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