おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

2月24日 瀬戸際の1~2週間  (第1230回)

クルーズ船の報道を見ながら、これは皆さん大変だと思っていたころ、すなわち2020年の2月上旬は、中国の武漢で新設の大病院があっという間に建った。強権発動国家はこういうとき、動きが速い。特に人民よりも統治機構を守る必要が高まったときは強いです。

同じころ周辺国では、別のクルーズ船に患者が出たり、国内で感染が広まるなどして、台湾・香港・韓国では早急な手当てが始まっていたようである。そして、ヨーロッパではイタリアに延焼した。これには驚いた。単純に、遠かったからですが。なお、最近(4月下旬)の香港のニュースを観ていると怖い。コロナ・ウイルスは民主化を停めている。


中国国内の本疾病による死者が千人を超えたのを受けて、2020年2月11日、WHOはスイスのジュネーブで緊急会合を開催しました。のちに、3月10日、周国家主席が初めて武漢を視察した直後に、WHOは翌11日はパンデミック宣言をした。息が合っています。

WHOが一体どういう緊急会合を開いたのかよく中身を知らないのだが、ともあれ本会議において、それまで新型コロナ・ウイルス2019などという表記がされていたウイルスに因る病名に、「COVID-19」という正式名が付いた。


この2月中旬あたりから、ここ日本でも、中国からの帰国者だの乗船客だのという範囲での心配事ではなくなってきて、報道でもネットでも膨大な数量の情報が飛び交い、訳が分からなくなってきた。病名も新型肺炎という漠然としたものから、新型コロナ・ウイルス感染症という名で呼ばれるようになりました。

この病名は2月14日、政府が「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」を開催した時点で、これを書いている今日に至るまで使われています(われら下々は、単に「コロナ」と呼んでいる)。この専門家会議が2月24日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解」を出しました。


のちに、この見解およびそれを踏まえた内閣からの情報発信(次回)に振り回されることになる日本国民から、「永遠の1~2週間」とまで言われるようになる本提言の根幹は、文中にある「この1~2週間の動向が、国内で急速に感染が拡大するかどうかの瀬戸際であると考えています。そのため、我々市民がそれぞれできることを実践していかねばなりません」という箇所でした。

結果論でいうと、「急速」かどうかはともかく、感染は国内で拡大し続けて現在に至っています。したがって、この「瀬戸際」の見解は、その始期(2月下旬ころ)や、その期間(1~2週間)が適切ではなかったのか、それとも、時期的には問題なかったが、その対応策に不備があったのか、とにかく理想通りには推移しませんでした。


繰り返すとこのブログは、誰かを断罪するために書いているのではなくて、のど元過ぎると忘れやすい私達が、次にまた似たような事態に巻き込まれたとき、自分はどうすべきか、誰にどうしてほしいかを、忘れないうちに記録に残しておきたいので書いています。時期の問題は、いま私の手に余りますが、現時点で対応策のほうはどうだったか。

これは結構、インパクトがありました。特に翌日の報道あたりから「熱が出ても4日待てというのか」といった調子で受け止められました。このあとアップされた厚生労働省のQ&Aなども含めて、けっして病院には行くなとは書いていないのですが、今の世の中、SNSや個人のブログ等では、短い断片的なメッセージが独り歩きしやすいという情報環境が生んだ典型例だと思います。


政府や専門家会議の「1~2週間」という妙に区切りのはっきりした期間設定も、どのような医学的根拠なり政治的判断があったのか知る由もありませんが、「上手くいかなかったときどうするか」と考えてのことだったか、どうもそういう感じがしません。結局、何回か順延するという形で提言・方針が繰り返し出され、混乱と諦めを招きました。すくなくとも、私には。

緊急時に休日返上で働くときや、病気や金欠で苦しいとき、これがいつまで続くかわからないという状態と、または、だいたいこの頃には落ち着くという目安が立っているときとでは、心身の疲れ方が天と地ほど違います。自粛にしても補償にしても、この点では悪い方のやり方ばかり続けられて、みな強烈なストレスにさらされている。


最近、アメリカでは断続的に2022年まで、対策は緩和と緊縮を繰り返すだろうという予測がでました。治世の処方箋としては、この方が良策だと思います。その間に、気の毒な運命を迎える人を已む無く出しつつ、大半の人が抗体を持ち、免疫を高めるという長期消耗持久戦なのでしょうか。

犠牲や損失を覚悟というのは、為政者にとって言いづらいものだと思いますが、イギリスのジョンソンも、確かアメリカのトランプも、しばらくは悲しいことも待っていると、はっきり公式の会見などで言いました。だから彼らは戦争だと言っているのだろう。国民性の違いかもしれませんが、いずれにしても日本ではもう犠牲覚悟なんて言えないです。


かくて我が国では、感染しないよう、させないよう、我慢の日々を3月の中頃まで続けることになった。そのあとは春休み、花見、卒業や入学、入社や人事異動で、人が動く季節が来ますので、それまでに終息させたいという願望付きの声明だったのでしょうか。

感染拡大が始めったごく初期の記録をみると、感染性は低そうだ、感染力はSARSほどではない、というような予測が残っています。特に昔、インフルエンザの予防接種がそれほど一般的ではなかった時代、急激にインフルエンザが広まって学級閉鎖なんてことがありました。その時代と比べれば、この程度ならと自分も思っていた。甘かったです。



(おわり)






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コゲラ  (2020年2月24日撮影)











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