おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

5月4日 新しい生活様式  (第1264回)

5月4日は、全国一斉で宣言されていた金事態措置が、全国一斉で5月7日から31日まで延長された日です。人それぞれの受け止め方があったと思います。ここ東京では感染者数がなかなか減らず、我が家でも延長はするだろうと言い合っておりましたし、どうせ私の仕事は止まったままだったので、「やむなし」という判断でした。

まだ大型連休の後半を残していましたが、結果からすると後半には再び、感染者数増加の小さな山があったし、死亡者数は5月中旬も減る気配がありませんでしたので、経済問題とそれに対する行政の対処の遅れという点を除けば(つまり健康問題としては)、延長でよかったのだろうと現時点では思います。


この決定がなされたプロセスも確認します。当日は再び、専門家会議の開催と、総理の記者会見が行われました。専門家会議については、これを書いている6月上旬、きちんとした議事録が作られていなかったことが判明して、新たな騒ぎになっています。

相応な規模の職場にお勤めの方々にとって、公開するか否かはともかく、経営陣会議クラスの検討状況が文書で残っていないというのは信じがたいことだと思います。専門家会議は従来も今回も、直接、政府の判断内容に影響を及ぼしています。


議事録無しという問題は、個々の委員の責任追及に使えるというような程度の低い問題ではありません。廃案になった意見も、資料に残せば将来、活かせるかもしれません。専門家会議の提案のうち、内閣が取捨選択したものがあるのが普通だと思いますから、行政独自の判断がどのように加わったのかもわかる。

それがない以上、今の段階では公表されているものだけ見るほかありません。長文の「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(5月4日)」という全会議の資料もありますが、ここではその「概要」というPDFファイルだけ見ながら整理します。あくまで、私の解釈です。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627559.pdf


3ページ目に「現在の枠組みの長期化によって、必要以上の犠牲を強いることのないようにする」および「このため、1~2週間程度の経過した時期に、出口戦略について検討を行う」という基本方針のような文言があります。

延長することが前提になっていて、その間の手当てと、そのあとの解除も含めた出口戦略の見当を提言しています。次ページには、長丁場に備え「新しい生活様式」に移行とあります。この昔からあるらしい学術用語の「行動変容」という言葉がなじめないのです。


一般論ですが、日常の行動を変えるというのはそう簡単なものではなくではなく、変える以上は、これからずっと変えたままというほどの重いものだと思っておりましたが、ここであっさり、長丁場になるので「行動変容」を「新しい生活様式」に変えるべしと言われてしまった。もう、行動変容とは何かと悩まなくて済みますが。

ただし、この「概要」には、「新しい生活様式」の具体例が記されていません。これは上掲の長文記録のほうに「実践例」がありますので、添付します。この日のニュースで、これを定着するようにとアナウンサーに言われ、こんな「たくさん覚えきれるもんか」を私はテレビジョンに怒りました。それはともかく。
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これは「感染しない」ためだけではなく、「感染させない」も含めたものです。したがって私が覚えきるかどうかより、全体がチェックリスト形式になっているように、これから会社や学校や催事での活動を始めるにあたり、大丈夫かどうかを確かめるためのものでございましょう。

全部読みましたが、全部は書けないので、冒頭の「感染防止の三つの基本」にだけ触れます。①身体的距離の確保、②マスクの着用、③手洗い。このうち、①は「Social Distancing」という使い慣れない英語を改め、まともな日本語に改めていただきました。


①については、下の六つのチェックボックスのうち、上の三つが該当します。まず人と人との間隔は、理想2メートル、最低1メートル。狭い日本、常に2メートルでは神経がくたびれるし、この2メートルという国際標準的なものは、ほとんどマスクをするという習慣がない国々に向けたものという説があります。

すなわち個人的には、次の②マスクの着用と組み合わせれば、まずは1メートルで合格点と読みました。これに続く「遊びに行くなら屋内より屋外を選ぶ」という、いきなり遊び方の訓示が来ました。これだけなら、三密と同じかと思う。


でも次の「話すときは真正面を避けよう」という件は、最近になって、このウイルスは普通の風邪の病原菌のように鼻と喉に拡散しているというよりも、唾液の中にぎっしり詰まっているという指摘をどこかで読みましたので、つまり単発の咳やクシャミより、むしろ長続きしやすいお喋りの方が危ない。そう読みました。

次のマスク着用は、外出時、屋内、会話するときのいずれの場合も含んでおり、風呂と就寝の間はどうするのか不明ですが、「症状が無くても」には注意が必要です。これまでの事例の蓄積により、どうやら症状が出る前でも、かなりの感染性があることが分かってきたと報道されています。


これがまた出所がWHOとあって、どこまで信用するのかはお任せしますが、どうやら世界の趨勢としては、マスク重視の傾向にあるらしい。当初はマスクの素材、形状、サイズなどの議論が多かったと思いますが、医療や検疫の第一線ではともかく、一般人相手のここではどうやら、「あまりしゃべるな」という意味をこめた口封じの小道具的な役割の期待もありそうです。

③は手洗いですが、下の欄も読むと、顔を洗い、服を着替え、シャワーも浴びようということで、花粉症の持ち主には慣れた作業でありましょう。私が励行しているのは、帰宅食後の両掌の消毒とうがい、帰宅時と食事前の石鹸による手洗い。着替えとシャワーは、外出が終わった夕方に一回。これくらいで勘弁してほしい。


これ以下の諸事項は、みなさん既に履行中か、少なくとも見たり聞いたりで知識は持っているものと思います。さて、この「概要」には後半に、「日本においてPCR等検査能力が早期に拡充されなかった理由(考察)」ならびに「今後求められる対応について」という重要な事柄が示されております。

しかし、数が多過ぎて重要度・緊急度が、私のレベルでは見当が付きません。内容も専門的なことばかりだし、予算措置が不可欠ですから、医療と行政プロにお任せするしかない。頼んだぞ。


専門家会議の結果を受けて、同日の5月4日、新型コロナウイルス感染症対策本部(第33回)が開催され、総理の発言記録が、首相官邸のサイトにあります。一部、転載します。

このような専門家の皆様の見解を踏まえまして、本日、諮問委員会からも御賛同いただき、4月7日に宣言いたしました緊急事態措置の実施期間を、5月の31日まで延長することといたします。実施区域は、全都道府県であり、現在の枠組みに変更はありません。ただし、今から10日後の5月14日を目途に、専門家の皆様に、その時点での状況を改めて評価をしていただきたいと考えています。


なぜ、延長期限を5月31日に定めたのか知りません。まさかカレンダーの区切りが良いからということではないと信じたいですが、翌月初6月1日が月曜日ですので、ここから社会経済活動の大快適再開という発想なのかもしれません。

後半の「今から10日後の5月14日」に再検討という旨の計画は、上記「概要」にある「2週間程度の経過した時期に、出口戦略について検討を行う」というのと日程が合っています。感染状況の様子見の期間は、医学の領域である専門家会議(正式には、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」)に任せました。


一方、緊急事態宣言に関する(つまり経済問題も含む)諮問会議(正式には「新型インフルエンザ等対策有識者会議 基本的対処方針等諮問委員会」)に、複数の経済の専門家を加えると発表されたのは5月12日ですから、そろそろ出口戦略に本腰を入れた観があります。

念のため、こちらの「諮問会議」はあくまで特措法に基づく諸政策を諮問する会議であって、我が国全体のマクロ経済対策は既存の「経済財政諮問会議」がありますので、ややこしいですが別物です。



(おわり)


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不忍池コサギ (2020年5月3日撮影)
















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