おじさんの雑記帳 

「20世紀少年」の感想文そのほか 寺本匡俊 1960年生 東京在住

明治百年 昭和百年  (20世紀少年 第910回)

 少し前に雑誌を読んでいたら、明治百周年なるものを取り上げた記事があった。仮にそのまま明治が続いていたら、明治100年は西暦でいうと1968年にあたる。ケンヂたちは小学校3年生、私は2年生。(訂正:1968年は満100周年記念。年号が続いていたと仮定すると、1967年が明治100年です。失礼しました。)

 メキシコ・オリンピックの年だ。ビートルズの歌とは知らずに同級生たちと「へイ・ジュード」の後半のコーラスを詠っていたころ。漫画ではケロヨンたちとケンヂらが銀玉鉄砲で覇を競う戦国時代であった。

 この明治100周年を記念して産経新聞が連載を開始したのが明治時代の大戦争を描いた「坂の上の雲」である。NHKが「竜馬がゆく」を大河ドラマにしたのも、この年のことだ。両方とも意図してやったことらしく、つまり逞しき商魂である。


 これを読んで、もしかしたらと思いましたね。ずっと前に、なぜ「しんよげんの書」は2015年をして、「ばんぱくばんさい」と西暦の終わりの年に選んだのか分からないと書いた。今も分からないが、もしかしたら昭和100年ではないかとの期待が膨らんだ。

 でも違いました。昭和100年は2025年であり、書き間違えたのではない限り、2015年は単なる90周年であり、そこまで待つならあと10年ぐらい我慢すべきだっただろう。


 ちなみに、2015年は来年だから、あと2か月余りで来てしまうが、ともあれ現実の世ではホンモノの万博万歳がイタリア国はミラノで開催される。もうイタリア語で公式のサイトができている。そこから博覧会のロゴをくすねてきました。さすがはイタリア、このデザインの鮮やかさ。”ともだち”の暗さとは比べものにならへん。


 

 では、逆に2015年から100年、さかのぼってみてはどうだろうかと次に考えた。でも空振りでした。今回は冴えない。2015年の100年前は99を差し引くと(100を引いてはだめ)、1916年である。

 この年は何か特別なことがあったわけでもなく、あえていえば第一次世界大戦の最中なのだが、開戦の年でもないし終戦の年でもない。振り出しに戻ってしまったのであった。1000年前の西暦1016年も地味。2025年には長生きしたならフクベエは66歳であり、年金受給開始年齢に達しているのだが、それが目出度い訳でもあるまい。


 アニバーサリーはもう、どうでも良くなったので話題を変えよう。先日、映画「ニューシネマ・パラダイス」を改めて観て、感想を書いていて思ったのだが、漫画は慎重に避けているけれども、あのウィルスは女子供も容赦なく犠牲にしたはずである。次の世代のことなど、何も考えていない。昭和生まれの典型と言ってよい。よくないかな。

 我らの世代の父親たちはエコノミック・アニマルと呼ばれ、母親の世代は教育ママと呼ばれた。つまり乱暴に言えば、家庭で徹底して母親だけに躾けられて育った年代の嚆矢かもしれない。生まれた子に読めもせず、読めても意味の分からない名前を付け始めたのも、私たちの年代からだと思う。晩婚化が進み始めたのは、私が二十代後半だったころからである。収拾がつかなくなってきた...。


 自虐の詩はやめよう。漫画「20世紀少年」の連載時の読者は、多くが「カツマタ君で誰だ?」で終わってしまったのではないか。私も未だに誰だか良く分からないのだが、昔を振り返ってみて、小学校時代に同学年の子に対して、名字に「くん」を付けて呼ぶというのは、山根がオッチョにそうしたように、少しの敬意を見せつつ、あまり親しくない証拠でもある。

 しかもカツマタ君とは、まさか戸籍上の姓が「カツマタ」ではあるまい。漢字のはずだが、基地の仲間は誰も漢字すら知らないことを示すためにカタカナになっているのだろう。でも、呼び捨てでもない。ユキジとかコイズミとか、呼び捨てなら逆に親しみを示すことができるのが日本語の面白いところだが、カツマタ君は名前まで影が薄い。やっぱり、あのあと遊んでもらえなくなったのだろう。


 ところで、どうでも良いといえばどうでも良いのだが、ヴァーチャル・アトラクションはIT技術の結晶であり、そしてこの漫画に出てくるIT企業といえば、万丈目と癒着していたヤン坊マー坊の会社だけである。彼らが作ったのであろうか。道理で当時の再現が良くできている。現実世界に”ともだち”がこしらえた昭和のテーマパークは、ユキジやオッチョに評判が悪かったが。

 そんなことより、この漫画の終幕の良いところは、20世紀の終わりごろに生まれて来た漫画家の角田氏、蝶野刑事、カンナ、コイズミが、それぞれ夢を抱えて、新しい人生を歩み始めるところで終わっていることだ。やりきれない過去は、ケンヂやオッチョたちが背負って海を渡る。ニーチェに逆らって、神様もまだまだ死なない。




(この稿おわり)





20世紀テレビ塔  (2014年9月27日撮影)





 忘れられないの あの人が好きよ
 青いシャツ着てさ 海を見てたわ

        「恋の季節」  ピンキーとキラーズ






































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